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2016-02-09

覚え書:「耕論『介護離職ゼロ』への道 和気美枝さん、西久保浩二さん」、『朝日新聞』2016年1月16日(土)付。

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耕論「介護離職ゼロ」への道 和気美枝さん、西久保浩二さん

2016年1月16日

 大切な人の介護が必要になる局面は、いつ、だれにでもありうる。そのために心ならずも仕事を休んだり、職場を去ったりする人がたえないのが現実だ。介護離職をなくすと政府は重点課題に掲げているが、必要なことは何か。

 ■経験者が評価される制度を 和気美枝さん(一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事

 75歳の母を自宅で介護しながらフルタイムで働いています。母は12年前うつ病になり、入退院を繰り返しました。5年前から認知症も加わり、訪問看護やデイサービスの助けあっての毎日です。

 母が発症した頃、父はすでに亡く姉は嫁いでいて、私しかいません。身内が大病した経験もなく、社会保険と民間の保険の違いも分からないほど無知でした。何が分からないのか分からない、パニック状態です。追い詰められ、当時の記憶は一部途切れています。

 15年間続けたマンション開発の仕事を6年前に辞めました。仕事が体力的にきつくなってきたし、全てが中途半端で、精神が安定しない。介護だけが退職の理由だったわけではありません。

 その後、介護中の娘さんが集う「娘サロン」に出会ったのが転機になりました。思いの丈を吐き出し、同じ思いをしている人を初めて近くで見て、癒やされたし、自分がしてきたことを認めてもらえたと思えた。介護者支援のNPOの主催でしたが、こんなにいい会がなぜ知られてないのかと腹立たしく思ったほどです。

 ■初心者の相談役

 経験から、介護中の離職はお勧めしません。仕事との両立なんてできないと思いがちですが、「介護をやめる」という選択肢があることを覚えておいてほしい。施設に入れることを後ろめたく思う必要はありません。要介護者と24時間向き合う状態は避けるべきです。仕事は収入をもたらしますし、最高の息抜きにもなります。

 介護休業の分割取得など既存制度の改良は必要ですが、離職防止に新規の施策は不要でしょう。企業が用意すべきことも多くはありません。まずは年1回でいいから「介護が始まったらどうするか」の研修を定期的に開く。また、人事担当者が介護中の人介護経験者のネットワークを作っておく。実際にはこれすらできていない企業が多く、歯がゆいばかりです。

 明治安田生命の調査では、介護休業などで職場を離れた人の半数以上が、介護開始後1年以内に辞めています。介護態勢を作り上げる初動の時期に、介護者を途方に暮れさせないことが必要です。その助けになるのが、介護中の人介護経験者が持っている情報であり、介護の先輩が初心者の話し相手や相談役になることでしょう。

 「地域包括支援センターを訪れる際、要介護者の主治医の名前を調べておき、保険証を持参しよう」といった細やかな情報は、経験者だからこそ教えられます。

 企業は介護者の経験値を価値とみなし、制度化してほしい。仕事と介護の両立の様子を毎月リポートで提出させたり、介護初心者の面接役を頼んだりして、報酬の対象にするとか。そういう制度があれば本人も介護中であると周囲に話しやすくなるし、企業の経験値も上がります。勤務先の人事担当に頼まれ初心者の相談に乗っている仲間は、「自分の経験が役立つなんて」と生き生きしています。

 ■仕事を共有する

 もう一つ大事なのは「仕事の見える化」です。「この人脈やノウハウこそ自分の強み」などと仕事を抱え込みがちですが、いざという時に代替できません。仕事の流れや取引先との関係などは共有化しておくべきです。

 いまは介護離職をなくすことを職業にしている私も、母を殺す寸前までいったことがあります。

 昨年6月、母が食事を拒んだとき、反射的に左手で頭を抱え、右手でキウイを口の中に押し込んでいました。「いけない。死んでしまう」と瞬時に思い、自室に駆け込んで号泣しました。母の認知症が進むのが怖く、心が極度に不安定になっていたのだと思います。

 年月をかけてケアスタッフと成長し、介護している自分をほめたくなることもあります。母の失敗を許せるようになり、他人に優しくなれました。介護は人を大人にしてくれます。この年で自分の成長を感じられるのは幸せだと思います。(聞き手・畑川剛毅)

     *

 わきみえ 71年、埼玉県生まれ。マンション開発会社の勤務を経て、14年、「ノーモア介護離職」を掲げワーク&ケアバランス研究所を主宰。1月から現職。

 

     ◇

 

 ■公表できる職場づくり、急げ 西久保浩二さん(山梨大学教授)

 勤勉で優秀な人材が親の介護によって消耗したり、離職したりしてしまう。そのリスクの深刻さを企業や経営層がまだ的確に把握してはいません。その意味でも、「介護離職ゼロ」という目標を政権が掲げたことは評価できます。

 介護離職者の多くはこれまで女性でしたが、直近の動きをみると男性に広がる傾向が出ています。夫婦共にフルタイムで働く世帯や男性単身世帯の増加が背景とみられますが、手を打たなければ介護離職がさらに増大する局面に来ていたのかもしれません。

 ■育児とは異なる

 離職を食い止める介護支援について、多くの企業では現在は「育児支援」を先行例として参考にしているように見受けられ、追加的な休業の支援や短時間勤務などから始めようとしています。ただ、出産・育児と老親介護とでは、仕事との両立を難しくするリスクの特性は大きく異なります。

 介護の終わりは容易に見通せないし、遠距離介護もある。要介護者の状態が悪化すれば介護者の負担は時間が経つごとに増します。おまけに一度に複数の要介護者が生まれることもあります。

 また、大半の介護者は会社でも責任ある立場が多い中高年層ですから、「個人的な事情で仕事の手を抜くことはできない」「成果主義の評価が浸透する中でマイナス評価をつけられたくない」という思いが、自分自身の状況を勤務先に伝えるカミングアウト(告知)を往々にしてためらわせます。

 言わないでいるうちに親の状態が悪化し、介護と仕事との両立がとうとう不可能になって離職を決断する――。これが介護離職の典型例ですが、そんな事態になる前にどう支援するかが問われます。

 ■両立は共通目標

 まずは、とにかくカミングアウトしやすい職場づくりを急ぐことでしょう。そのためには円滑な意思疎通は不可欠で、個人的な事情まで含めて、「話せる場」「話しやすい雰囲気」を職場に整えるだけで事態は随分改善されます。

 ただ、カミングアウト問題の本質的な解決は、親の介護への対処が労使のごく当たり前の共通課題として位置づけられることです。

 カミングアウトの躊躇(ちゅうちょ)には、日本人特有の、「周りに迷惑をかけたくない」という意識も影響しています。その中で、告知の決断を従業員の自発的な行動として求めることは酷な話です。「従業員の心身の健康」という貴重な経営資源を管理する現在の健康診断・予防システムと同様に、介護問題が従業員に起こったらすぐに対応する体制づくりを、企業はめざしていくべきだと思います。

 一例を示せば、介護する立場になった従業員が活用できる公的サービスや、「介護保険申請手続き代行」など福利厚生面で会社が契約する外部サービスを体系的に整えて、その一覧を従業員に示すことです。

 世界に例をみない速度で高齢化が進む日本では、最近入社した新入社員が中高年に達するころに介護リスクは最も深刻になるとみられます。「介護離職ゼロ」という目標は、「介護と仕事とは当然両立できる」という企業や社会の将来像を示す、新たな宣言と捉えるべきでしょう。

 その将来像をどう実現するかという観点から、介護と仕事との両立を難しくしている問題を官民が知恵を出し合ってひとつずつ解決していく必要があります。例えばフレックスタイム、在宅勤務導入など働き方の大幅見直しや、介護施設職員の待遇改善などで、介護人材の海外からの受け入れも不可避ではないかと考えています。

 また介護者となりうる一人ひとりは、国任せ、会社任せでは仕事と介護の両立は困難ということを改めて心しておくべきでしょう。「介護が必要になったらどのように乗り切るか」など、長期的見通しを主体的に立ててほしい。いわば戦略的生活設計が老親介護ではとりわけ重要になります。(聞き手・永持裕紀)

     *

 にしくぼこうじ 58年生まれ。専門は企業福祉研究。大手生命保険会社勤務などを経て06年、山梨大生命環境学部地域社会システム学科教授に。近著「介護クライシス」。

    −−「耕論『介護離職ゼロ』への道 和気美枝さん、西久保浩二さん」、『朝日新聞2016年1月16日(土)付。

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(耕論)「介護離職ゼロ」への道 和気美枝さん、西久保浩二さん:朝日新聞デジタル


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2015-04-10

日記:「キリスト教の人ですか?」「創価学会の人ですか?」ただの普通の人です。

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 「福祉事務所まで行くお金がないのだったら、私がお金を貸してあげましょう」

 気持ちをもう少し引き出すために具体的な提案をしてみました。電車賃は一六〇円です。

 貰うのがいやなら貸してあげることにすれば気持ちの負担は少ないでしょう。この具体的な提案にはすぐに反応してきました。

 「無料パスは持っているんですよ。」

 出して見せてくれました。ついでに運転免許証も見せてくれました。腕のいいタクシーの運転手だったと言います。運転免許証の期限は平成XX年。まだ先です。ということは、このようなぼろくずのような状態になって数年もたっていないのではないか、と推察されました。

 会話を交わすほどに垢と酒のにおいは強烈です。垢の匂いは私が我慢すればいいのですが、こんなに酒のにおいをさせて福祉事務所に行って、どう対応されるか不安になります。酒の失敗を繰り返して様々な関係性を崩壊させつつ転落し、ただ今現在の状態になった。このきっかけはなんであれ、今回は防波堤になるものをすべて失ってまっしぐらに落ち込んで、ここに行き倒れていたのではないでしょうか。髪やひげの状態から、既に半年くらいはあてもなくさまよい続けているように思われました。

 「アル中なんですよ、アル中アル中でさんざん失敗をしてきてこんななんですよ。酒をやめるしかない」

 つぶやくように言います。

 問われたわけでもないのに、男性本人の口から直接アルコール依存のことが語られて、さらに核心に飛び込めたと思いました。私は話しかけてすぐに、この人はアルコール依存症でこうなっているのでは、と疑いを持っていました。でもそのことは私が問いただうことではありません。きちんとした人間関係も成立していない私から、「あなた、アル中でしょ」などと言われて、その人間関係が深まるなんてことはありませんし、アル中であるか否かを特定したところでこの際何の役にも立たないことです。自分から進んで語ったことで、私に何かを訴えたい、何とかしてもらいたい、何とかしたいというかすかな意思が感じられました。

 「だったらお酒をやめることを考えなきゃあ。ともかく、今のあなたは、体を休めることが必要なんでしょう?」

 力を込めて問い返しました。

 「あなたはどうしてこんなに親切なんですか。誰も声なんかかけてくれなかった。キリスト教の人ですか?」

 突然こんな質問が出てきました。今までの私の呼びかけに受動的に応えるだけだった会話が能動的に私への関心に切り替わった瞬間です。

 キリスト教の人と聞いて、グッド・サマリタンを思い起こしました。聖書の中の逸話です。誰も声をかけなかったのにそのサマリヤ人だけは道に行き倒れている人を見過ごさなかったという逸話を思い浮かべていました。でも、単純に応えました。

 「いいえ」

 「創価学会の人ですか?」

 「いいえ」

 「それじゃあ、ただの普通の人ですか?」

 「まあそういえばそうです」

 「ただの普通の人がどうしてこんなに親切なんですかぁ」

    −−宮本節子『ソーシャルワーカーという仕事』ちくまプリマー新書、2013年、62―65頁。

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2015-04-03

覚え書:「あの人に迫る:六車由実 介護民俗学者 人生の豊かさを聞き書きで知る」、『東京新聞』2015年03月22日(日)付。


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あの人に迫る

介護民俗学者 六車由実さん

人生の豊かさを聞き書きで知る

[あなたに伝えたい]その人の人生を知ることで、絶対にケアの仕方が変わります。互いに互いを認め合えるようになります。

 民俗学者であり、デイサービス「すまいるほーむ」(静岡県沼津市)の職員でもある六車由実さん。大学職員を辞して飛び込んだ介護現場を「民俗学の宝庫」と称し、施設の利用者の人生を聞き書きする。利用者が生きてきた軌跡に目を向けることで、介護する側、される側の意識も変わると説く。(橋詰美幸)

−−準教授を辞め、なぜ介護の世界に飛び込んだのですか。

 大学では、常に研究をして論文を出してと、成果を出さなきゃいけなかった。競争社会で、気持ちも体もついていかなかったんですね。実家に戻って三カ月くらい静養をしていたのですが、しばらくして次に何の仕事をしようかと考えたときに、ハローワークでホームヘルパーの資格を取る講習があることを知りました。資格を取ったら現場で働いてみたいなと思って飛び込んでみました。

−−実際に飛び込んでみて、感じたことは。

 介護する側、される側という関係にとても違和感を持ちました。以前の職場は特別養護老人ホームで重度者が多かったせいもあってか特に強く感じました。やることがいっぱいあって、利用者の人生に耳を傾ける時間も取れなくて、「してあげる」という立場でしか関わることができずにいました。利用者の方にとっても常に介護されている状況では、生きている意味や役割がわからなくなってしまうのではないかと感じました。不自然な場所だなと。

 スタッフが少ない上に、時間内に終わらせなくてはいけない仕事がありすぎて消耗してしまう。いかに安全かつ時間内に利用者に食事を取らせるかや、気持ちよく排便を処理できるかなど、介護が作業になって、人と関わっているという感覚がまひしてしまう。

−−どう抜け出したのですか。

 ある時、女性が突然、歌を歌い始めたんです。しかも踊りつきで。初めて聴いた歌だったので、忙しいにもかかわらず、思わず「なにそれ」「どこで覚えたの」と聞いてました。救ってくれたのは利用者さんでしたね。

−−「介護民俗学」を実践する中で、どんなことを感じますか。

 介護を受ける人たちがこんなにも昔の記憶が確かで話ができることに驚きました。研究者時代の調査では会う機会のなかった大正一桁生まれの人もいる。

 関東大震災の話を聞いたときには、知っている人がいることが衝撃で、沼津周辺もすごく揺れて大変だったという話から始まって、おばあさんたちが狩野川の方に向かって念仏を唱えていたとか。そんなことを言われたら、民俗学者としてメモを取らないわけにはいきませんよね。デイルームの片隅でメモを片手に熱心に話を聞いている姿は、他の職員には奇異に映ったみたいですが。

 介護する立場で利用者の話に身を任せていると、自分が全然想定していなかった話しが飛び出してくるんです。農耕が機械化されていなくて牛馬が家畜として飼われていた時代に、牛馬の鑑定や仲買をした「馬喰(ばくろう)」という商売人がいたことや、発電所から電線を引くために定住地を持たずに村々を渡り歩いた高度経済成長期の「漂泊民」など。人の人生はこんなにも豊かなものなのだと感じます。

−−聞いた話は、記録として形に残すのですか。

 以前いた施設では、利用者に聞かせてもらった話を文章に起こして、「思い出の記」として本因や家族に渡していました。

 ある男性から太平洋戦争中にガダルカナルで戦った体験を聞いて、思い出の記を作ったことがありました。その方のお婿さんは大学を出て役所に勤めていたのですが、男性はずっと農業をやっていて「自分は学がない」と、お婿さんに対して引け目を感じていました。でも、お婿さんが思い出の記を読んだらすごく感動してくれたらしく、「自分のことを見直してくれた」と喜んでいました。

 家族でも親の若い頃の話って、実はあまり知らないんですよね。思い出の記は親の人生を受け止め、認める一つのきっかけになったのかなと思います。

−−話を聞くことで利用者の気持ちや体調も上向きになるのでしょうか。

 聞き書きをしているときに、常に相手が気持ちよく話しているかといえば、そうではありません。語ることによって、苦い思い出も含めていろいろなことを思い出します。介護やカウンセリングの世界では、危険なことと言われかねません。ですから、話を聞くのはお互いに真剣勝負です。

 私たちの日常の中で、怒ったり泣いたり不愉快に思ったりと、いろいろな感情が湧き起こるのは普通のことですよね。それが介護現場では感情の変化に乏しくなりがち。認知症に人が泣きだしたり、笑いだしたりすると「感情失禁」と言われる。そもそも感情に失禁という言葉をくっつけるな、と思うのですが。私は聞き書きをしているときに利用者さんが急に涙が出てしまったりするというのは、人と人の普通の関係の中で日常性が回復しているのだと考えています。

 それに私たちよりも倍、人生を生きてきた人たちですよ。多少何があっても強いです。確かに注意しなくてはいけないことはあるかもしれませんが、真剣に話を聞くのが礼儀ではないでしょうか。

−−聞き書きをする上で必要なことは。

 大切なのは、知らないことを知る喜びを感じること。知らないことは武器というか、意味があることだと思います。例えば、私はあまり料理が得意でなくて、知らないことばかりなんですね。思い出の味を再現するときには、利用者の方が「そんなこともわからないの」と言いながら一生懸命教えてくれるんです。

 「すまいるほーむ」には、親戚が浅草の置き屋にいて踊りをよく見ていたという女性がいて、他の利用者さんや職員に踊りを教えてくれました。常に介護されるだけでなく、あるときは教える立場になって、私たちが学ばせてもらう。常に関係が入れ替わることで、対等な関係を築くことができたのも、利用者さんの人生に目を向けて、聞き書きを続けてきた結果だと思っています。

−−聞き書きを通して、介護する側、される側の関係性が変わってくるのですね。

 多くの介護職員は、利用者さんの日常生活で必要な動作の自立度や病歴は知っていても、どんな人生を歩んできたかは知りません。その人の人生を知ることで、絶対にケアの仕方が変わります。介護する側、される側という関係性が変化して、互いに互いを認め合えるようになります。

 聞き書きをしていると、人の人生はすごく豊かなものなのだと実感します。だから、たとえ認知症になって自分で自分のことを決めることが難しくなったとしても、人は最期まで人として生きるべきだと強く思います。それがどんなに大切で、どんなに難しいかというのを、私たちは常に意識していかねばなりません。

[インタビューを終えて]取材に訪れた日。「すまいるほーむ」の皆さんが、沼津周辺では昔ながらという「なべやき」を作ってくれた。小麦粉に砂糖と重曹を混ぜて焼く素朴なおやつだ。

 「あんたそれじゃ砂糖が少ないよ。もっと入れて」。利用者のおばあちゃんが遠慮のない物言いで、六車さんに指示を飛ばす。「料理が経たで、いつも怒られるんです」。笑いながら話す六車さんは楽しげだった。

 介護の現場でお年寄りの人生に向き合う大切さを思う。それにはまず、職員が利用者に向き合うことができるだけの余裕がいる。そんな環境を介護現場に広げないといけない。

    −−「あの人に迫る:六車由実 介護民俗学者 人生の豊かさを聞き書きで知る」、『東京新聞2015年03月22日(日)付。

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2014-12-12

覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 本物の『成長戦略』とは 赤穂浪士の考現学=宮武剛」、『毎日新聞』2014年12月10日(水)付。

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くらしの明日

私の社会保障論

本物の「成長戦略」とは

赤穂浪士の考現学

宮武剛 目白大大学院客員教授

 唐突な解散の末、総選挙の投票日は14日に迫った。ちょうど赤穂浪士討ち入りの日に重なる(元禄15年)。単なる偶然だが、あの四十七士は、年齢や経歴で現在に通じる意義がある。

 最年長の堀部弥兵衛の77歳。高田馬場でのあだ討ちで名を上げた「飲んべえ安」こと中山安兵衛にほれ込み、娘の婿にしたガンコじいさんである。

 次いで69歳の間喜兵衛ら60代は5人、50代も4人。「人生50年」の当時を考え、50歳以上線引きをすれば、高齢化率21%強の高齢集団であった。

 指導者の大石内蔵助は45歳の男盛りで40代は6人、30代16人、20代13人、10代2人。

 老年の知恵と経験、壮年・青年の意気と活力がからみ合う構成でもあった(年齢は後述の寺坂を除いて享年、大目付の仙石久尚調査書等から引用)。

 家老の大石を筆頭に奉行や足軽頭もいたが、むしろ身分や禄高の低い同志が目立つ。

 大石の息子・主税をはじめ「部屋住み」が8人もいた。現代風にいえば定職のないフリーターである。足軽の寺坂吉右衛門や5両3人扶持の神埼与五郎らの軽輩も加わった。いわば現在の非正規労働者に似ている。

 あだ討ちを奨励する気は毛頭ないが、年齢や身分を超え、平等に結束した集団から何を学ぶべきなのか。

 もう「人生80年」の時代になって久しい。

 「何歳から老後?」との問いに「70歳から」が最多の32%で「65歳から」の28・6%を上回る。特に65歳以上の回答者では「70歳から」40・4%、「75歳から」20・2%。「何歳まで働きたいか?」も65歳以上では「70歳まで」が最多の21・2%に上る(2012年高齢期における社会保障に関する意識等調査)。

 現在の堀部弥兵衛は無数にいるのだ。その一方で、若者たちはどうか。

 65歳以上のいる世帯のうち3世代同居は1986年の44・8%から13年には13・2%に落ち込んだ。ただし、65歳以上で「配偶者のいない子と同居」は同じ期間に17・6%から26・1%へ逆に増えた。"結婚しない症候群"の広がりである、

 「仕事あり」のうち20代前半では33・2%、20代後半でも17・2%は非正規労働者だ(13年国民生活基礎調査)。年収200万円未満の現代版「部屋住み」では、"結婚できない症候群"も広がる。

 男女を問わず、同じ仕事なら同じ待遇と社会保障の支えを得られる、若いカップルが働きながら子育てができる、意欲があれば年齢に関係なく働ける社会でありたい。

 その地道な社会改造こそ本物の「成長戦略」ではないか。

社会保障に関する意識等調査 老後の生活感や社会保障のあり方を問う厚生労働省の調査(回答約1・1万人)。重要なのは「老後の所得保障(年金)」「高齢者医療介護」「医療保険・医療提供体制」の順(複数回答)。世代別では30−39歳は「子ども・子育て支援」、29歳以下は「雇用の確保や失業対策」が1位だった。

    −−「くらしの明日 私の社会保障論 本物の『成長戦略』とは 赤穂浪士の考現学=宮武剛」、『毎日新聞2014年12月10日(水)付。

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