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要するに雑記。 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-03-17

[] 自己言及的高階層メタ小説装置

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)読了。


レビューは後でゆっくり書くけど、神林を初めて読んだ日の衝撃と同等のものがあった。

いや、小松か、星か、アジモフか。もしかするとそれ以上かもしれない。


きっと、自分の中の理想の自分であれば、自分が書けていた筈の本。

ちょっぴりそんな気がした。

2009-10-12

[] 砂山がいつ崩れるか誰も知らない


いわゆる複雑系科学の本、と思いきや。

複雑系科学の先端、「べき乗則」に代表される、臨界状態のシステムの振る舞いをもとに、地震から株価、はては戦争まで、「現実世界の」法則性――予測できない、という法則性――について考察した本です。


1987年、三人の物理学者が、ちょっとしたコンピュータシミュレーションを行いました。

それは、テーブルの上に砂粒を1粒ずつ落としていったらどうなるか、というシミュレーションでした。

コンピュータの中の砂山に砂粒を落としていくと、どこかの時点で「なだれ」が起きます。

何千何万というシミュレーションを行い、その「なだれ」の規模、について調べた物理学者は、ある事実に気づきます。

それは、「なだれ」の規模は正規分布に従わない、つまり、「典型的な規模のなだれ」などというものがない、ということでした。


その代わり、「なだれ」の規模はある単純な法則に従っていました。

それは、「べき乗則」と呼ばれる法則で、「なだれの規模が2倍になると、その頻度は(例えば)半分になる」という法則でした。

たとえば、10粒の砂粒が転げ落ちる「なだれ」が1000回起きたとすると、20粒は500回、40粒は250回・・・というように。


やがて科学者たちは、「地震」や「株価の上下」といった、「複雑すぎて予測が困難な」多くの事象について、このべき乗則が成り立つことを発見します。

それは、それらの事象について、「本質的に予測できない」ということを意味しているのです。


なぜなら、1粒の砂粒を落としたときに、どんな規模の「なだれ」が起きるかを予測するためには、山にある「すべての」砂粒がどんな状態か、を把握する必要があります。

そして、山全体が崩れるような「なだれ」も、10粒の砂粒が崩れるだけの「なだれ」も、たった1粒の砂粒が山に落ちた、という「同じ原因」で発生するものです。


同じように、地震の予知のためには、地殻を構成する岩の全ての状態を把握する必要があるのですが、それは現実的に不可能です。

そして、たった1つの岩がずれた、という原因で、微弱地震から大震災まで、どんな規模の地震でも起き得るのです。

株価についても、投資家の全ての考え、市場の全ての情報を把握する必要があり、そして、たった1つの売り買いが、世界恐慌にまで発展し得るし、

たった1つの小さな抗いが世界全体を巻き込む戦争に発展し得るのです!


――筆者の主張をごく簡単に誤解を恐れずまとめたら、こんな感じでしょうか。

この筆者はなかなかに過激なことを書く人で、例えばこの本では、(私の読み方が間違ってなければ)

  • 地震予知などというのは疑似科学である!
  • 世界恐慌や大戦争について、その理由をもっともらしく述べるのは、ただ「起きたこと」をさまざまな観点で叙述してるだけ。
  • その叙述、つまり歴史から学んで「次の戦争」「次の恐慌」を予測することはできない!

等と言うことが主張されています。


筆者の主張の全部が正しいかどうかはさておき。

「特別なイベントには、何か特別な理由があるはず」と考えてしまいがちな思考を覆し、「何の理由も無くても特別なイベントは起きる」ということに気づかせてくれます。

これは、私の中では、「進化論」をはじめてきちんと理解できた時のような、世の中の見方が変わってしまうようなパラダイムシフトでした。


本自体は専門用語も数式も殆ど出てこない、読みやすい本です。

2009-08-08

[] 形而上学式脳味噌攪拌器具

最近、珍しく(?)ハードカバーを続けて読了したので。


アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風
神林 長平
早川書房
売り上げランキング: 80
おすすめ度の平均: 4.5
5 凄い作品
5 ラストシーンの美しさに感動
5 終章ではなく序章
3 雪風じゃなくても語れたテーマか
5 ひたすら思考し、「リアル」に近づく第3部

神林の雪風シリーズの最新刊。最近出たばっかりです。

まだ読了1回目ですが、現時点での感想は

「神林味がえらい濃いなあ」


神林の得意技、形而上学的/概念的なアクロバットでストーリーに意外性を持たせる、

という手法がこれでもかと詰め込まれています。

はっきり言って哲学書の雪風風味、と言ってしまった方が近いくらい。

戦闘機ものを期待して買った人は多分後悔するでしょう。


神林作品を読んだことが無い人や、SFに慣れてない人などは、「意味不明」で終わって

しまうかもしれません。

逆に、哲学系の本や理論物理学系のノンフィクション本を読むのが好きな人であれば、

「こんなストーリーの組み方があるのか!」と背筋をゾクゾクさせながら読めると思います。


いわゆる古典的な「SF」の王道が、「こんな科学技術があったら世界はどうなるか?」、

であるとするならば、神林小説は、「こんな概念が成立したら世界はどうなるか?」

そういう意味では、神林小説は、philosophictionとでも言うべきものかもしれません。

(そんな単語は多分無いですが)



宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?
セス・ロイド
早川書房
売り上げランキング: 121737
おすすめ度の平均: 3.5
3 視点の面白さは秀逸/翻訳はもっと努力を
4 「タオ自然学」とか「エントロピーの法則」を読んだ人にお勧め
5 ビットとわたしと宇宙。エントロピーと情報とか。あと世界とか。
2 読む人の知識量にすごく左右される内容だと思います。


誤解を恐れずにまとめてしまうなら、

「情報理論で物理学を構築しなおし、大統一理論に王手をかけよう」

という野望を抱いている科学者、セス・ロイドのエッセイです。


「情報」の観点から宇宙を解釈し、「宇宙は巨大な量子コンピュータである」

という結論にたどり着くまでの道筋を、量子力学や量子コンピュータの原理を

交えながら解説しますが、文章自体は平易なもので数式も殆ど出てこないので

頭が痛くなるような本ではありません。


ただ、前提としている知識が多い、というか、説明不足の部分が多々あるため、

出てくる考え方の基礎だけでも押さえていないと、書いてある意味が

分からないかもしれません。


不確定性原理、量子ゆらぎ、カオス、情報工学の基礎、(情報工学で

いうところの)エントロピー、あたりについて、概念でも知っていると、

割とすんなり読めます。


私としては、「万物は情報である」という筆者の概念には共感するところも

多々あり、また、「無知が感染する」など、目から鱗が落ちるような考え方に

気づかせてくれるような部分もあり、なかなかの良書でした。

2007-09-04 蒸し暑い 略してむい

[] ゴーストがささやくのよ

これもメモ。

フィロソフィア・ロボティカ ~人間に近づくロボットに近づく人間~
櫻井 圭記
毎日コミュニケーションズ (2007/07/07)
売り上げランキング: 61008


攻殻機動隊の脚本だかの人、「ゴースト」がキーワードらしい

2007-04-02 ぬん

[] 進化しすぎた脳

少し前まで、論理哲学論考や数学基礎論あたりの分野の本を

つまみ読みしていたのですが、最近は脳科学の分野に流れてきました。


これらの分野は一見全然関係なさそうですが、たまに繋がっていたりして

面白いです。脳科学の本に哲学の用語が出てきたり、哲学の本に書いてある

ことが、数学基礎論の本に書いてあることとそっくりだったり。


つまみ読みしてると、哲学は言葉の使い方がちょっと異質ですね。

既存の言葉に新しい意味を定義したり、新しい言葉を発明したりして、

使っちゃうことが多いように感じます。

要するに読みにくい本が多い。


脳科学で、最近の「当たり」の本はこれです。


進化しすぎた脳
進化しすぎた脳
posted with amazlet on 07.04.02
池谷 裕二
講談社 (2007/01/19)
売り上げランキング: 294


若手の脳科学者である著者が、8人の高校生を前に講義をした内容を、

喋り口調のままに本にしてあります。

おそろしく読みやすく、すらすらと読めてしまうのですが、書いてあることは

先端的かつ衝撃的な内容ばかり。

著者が若いせいか、テンポ良く勢いがあって、講義の内容は、いわゆる

「科学」ではタブーとなるような領域にも勇敢に踏み込んでいきます。


例えば、第二章では、

『人間の目は100万画素、ケータイのカメラにすら負けるような解像度なのに、何故世界がギザギザに見えないのか。』

というような、「え?」と思うような話題、身近な題材から話が始まって、最終的には、

『私たちが「意識」だと思ってることの大半は「無意識」で、人間は脳の解釈から逃れられないのだ』

というような、哲学の領域にはみだすようなところまで話が進みます。


体系的に脳科学を学ぶ、といった内容ではないのですが、だからこそとても面白いです。

読んだあとに、ちょっと世界の見方が変わってしまうような力を持つ本です。


ハードカバーで出た時に本屋で見つけて、ちょっと気を引かれはしていたのですが、

最近文庫(ブルーバックス)になって値段も安くなり、加筆もされています。