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2014-04-20

アニメにおける間取りの工夫〜オープンキッチンの魅力に迫る〜

私たちは日々の生活の中で、

意識的にも無意識的にも自宅の間取りというのを気にしながら生きている。


アニメ(や映画、漫画)の世界ではどうだろう。

間取りが良い家。そこでゆったりとくつろぐ登場人物の姿を見て、

視聴者も自然と居心地の良さを感じるようになる。

家というのは基本的には頻繁に登場する空間である。

その際、間取りの良し悪しが視聴者に与える影響はきっと大きい。


家はある時は、家庭環境を反映する場所となる。

特に食事のシーンは頻繁に登場する家族だんらんの場だ。

ここでのコミュニケーションをどう演出するかは作品にとってデリケートな問題となる。

そこで、会話の内容や献立の内容に拘るのはもちろんとして、

食卓周辺の間取りをどう設定するかという問題も忘れがちだが、重要である。


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つまり、ダイニング周りをどうすべきかということである。

この問題への回答はだいたい2つに分類することができる。

すなわち、「オープンキッチン」にするか、「クローズキッチン」にするか、である。

些細な違いだと思われるかもしれないが、これが意外と大きな違いなのである。

どちらにするかで、食事風景がビジュアル的に変化するのはもちろん、

演出や会話の形態も空間的な制約を受けるようになる。


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例えば、オープンキッチンであれば、

このように炊事をしながら、食卓につく人物と会話することが出来る。

クローズキッチンではそれが出来ない。

ダイニングとキッチンが隔たれているため、演出・会話的に制約が生じるのだ。

間取りひとつでこのような違いが生まれるのは面白いことであり、

であるが故に、間取りを慎重に選択する必要がある。


この記事では、以降オープンキッチンが登場するアニメに焦点をあてながら、

その魅力に迫っていくことになるわけであるが、

ひとつ注意したいのは、クローズキッチンだからといって、

コミュニケーションが困難になるわけではないということである。


ちなみに、クローズキッチンを採用した例としては『みなみけ』などがある。

キッチンを隔離することで、リビング・ダイニングで起こる会話・物語にのみ集中させる。

あるいはキッチンで起こる会話・物語にのみ集中させることができる。

オープン・クローズの差異から感じられるニュアンスは

こういった諸作品を比較していくことで浮き彫りになっていくものと思われる。



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オープンキッチンであることの醍醐味のひとつは

やはり、こういったキッチン・ダイニング間のやりとりが出来る事にある。

距離を詰めることで、移動等の空間的な制限を受けなくなる。この点は重要である。

その一方で、画面の情報量はどうしても多くなる。


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レイアウト的には、オープンキッチンにすることで、奥に抜ける絵が撮れるようになる。

画面の情報量を上手く整理できれば、凝ったレイアウトに仕上げる事も出来そうだ。


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何気ないカットでも、奥に抜けるので良い絵が撮れる。


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キッチン越しから人物を撮ることだって出来てしまうわけである。

これは楽しい。レイアウトファンには堪らない。

放浪息子』は家具の配置がどの家庭もよくつくり込まれていた印象がある。


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ぱっと見たときの印象も重要である。

オープンキッチンとそこに寄り添う主夫(あるいは主婦)の組み合わせは

それだけで家庭が円満であるかのように思わせる不思議な効果がある。


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こちらもまた家庭円満。CCさくら型家族である。

一枚絵で誰が炊事係であるかが分かってしまうのも良い。

エプロンをつけて、キッチンに立たせておけば良いというわけである。

ちなみにこのキッチン

数あるオープンキッチンの中でもかなり場所をとるタイプのアイランドキッチンである。

MOCO’Sキッチンと同じやつである。)

鹿目家はダイニングに限らず敷地を贅沢に使った間取りをしている。

この過剰さが広い家であるという印象以上に、デザインの非現実性を主張してくる。

これはシャフトの常套手段でもあるわけだが。


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プリティーリズム レインボーライブ』であるが、

1話のこのカット1枚で主人公・綾瀬なるが良い家に住んでいることが分かる。

その際に、オープンキッチンが果たす役割は大きいように思う。

少ないカットで主人公の境遇をそれとなく伝える業はストーリーテラーの腕の見せ所である。


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オープンキッチンはオープンキッチンでも

このような壁向きキッチンというのもある。

この場合、炊事しながら会話できる点は同じであるが、

空間的な奥行き・広がりが出しづらいという問題が出てくる。

しかし、そこを逆手にとって、狭さを強調することができるわけである。

ごちゃごちゃした感じ、所帯感、生活感が出てくる。


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惡の華』はこの壁向きダイニングキッチンしかあり得ないと思うわけである。

ダイニングに調理音がうるさく響き、背中を向けた状態で母が息子に何かを言う。

機能不全ではないものの、どこか冷めた家庭というのを印象付ける。

家族同士が近くにいて会話できる状態にあるにも関わらず

楽しげな会話がなかなか起こらないというのが重要である。

クローズキッチンではこのニュアンスはなかなか出せないのではないかと思う。


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はたらく魔王さま!』も壁向きキッチン

というか6畳1間なので、それ以外に選択の余地がなかったわけであるが。

狭さを強調しつつも、炊事シーンも映し、とりあえずワイワイガヤガヤさせたいという

我儘な要望に答えるのであれば、これほどのベストアンサーもないだろう。



アニメにおける家の間取りは

「デザイン性」と「機能性」の2点が重要であるように感じる。

(現実世界だと、これらに加えて耐震性などが考慮されるわけだが。)

デザイン性はその名の通りで、レイアウトや配色などに依存するものである。

対する機能性はこの場合、物語(や会話、コミュニティ)の形態に即して

間取りが設計されているかを見る指標である。

オープンキッチンにすれば、どういった物語が可能/不可能になるか、

クローズキッチンにすれば、どういった物語が可能/不可能になるか。

物語に対して適切に機能し得るかどうかを見るわけである。


部屋のデザイン性ばかりに注視してしまいそうなところだが、

機能性にも注目してアニメを見てみることで、より深い読解が可能になるように思う。

アニメにおける家の間取りにはきっと作り手の拘り、意図があるはずだ。

クリエイター寄りな見方にはなるが、そういった視点を持ってみるのも面白いのではなかろうか。

taidataida 2014/04/24 22:32 壁向きキッチンが演出上活きていた作品ですと「氷菓」なんかはどうでしょうか。四話の料理している千反田を奉太郎がチラ見するところです。もし壁向きでなかったら千反田と目が合うことを恐れて、奉太郎はポニテエプロン姿の千反田を見ることが出来なかったのではないかと。
あと具体的な作品名が思い浮かばないのですが、壁向きキッチンの料理している人物の表情が見えないことを利用した演出もありますよね。一見料理しながら楽しそうに会話していても表情が見えないので、相手が何を考えているか分からず視聴者の不安を煽る。サスペンスやホラーにおいて使われていると思うのですが如何でしょうか。

ukkahukkah 2014/04/25 06:49 >>taidaさん
コメントしていただきありがとうございます。

『氷菓』4話のキッチンはえるたそのうなじが印象的だったので良く覚えています。
そうですね。確かにこの状況は壁向きのダイニングキッチンでないと作り出せない。
部屋のレイアウトによってシチュエーションが限定される一例だったと思います。

炊事係の後ろ姿を映す演出ということでしたら、『DTB 流星の双子』6話のワンシーンが私はお気に入りですね。
蘇芳が炊事をする黒の背後に向かって話し続けるというシチュエーションで、『氷菓』4話とは状況は異なるのですが、二人の微妙な距離感を上手く演出していたように思います。

キッチンで2人横並びのバックショットを長々と映す演出であれば『Candy☆Boy』3話。
被写体の表情をなかなか見せないのが意図的なものに思えます。

壁向きキッチンを使ったホラー演出でしたら『電波的な彼女』OVAの2巻などはご覧になられたでしょうか。
事件の首謀者が後ろを向いた(キッチンの方を向いた)状態で独白を始める。
ダイニングキッチン特有の薄暗さ、小汚さも相まって、緊張感のあるシーンに仕上がっていました。

ちょっと状況は異なるかもしれませんが、『SHUFFLE!』19話(空鍋の回)や『こどものじかん』11話でもキッチンにおいて、ホラーな演出が見られましたね。

こうして考えてみると、キッチンとサスペンス・ホラーの相性は意外と良いのかもしれません。
『ひぐらしのなく頃に』や『未来日記』ではキッチンという本来であれば安堵できるはずのパーソナルスペースに、部外者(ストーカー)の脅威を介入させることで、主人公の日常を恐怖のどん底へと陥れていましたし。

…演出に話を戻しまして、
「壁に視線を逃がす」という芝居は演出的に色々と応用が利くもののように思います。
その際、壁にキッチンなどが配置されていると、それが視線を壁へ逃がす理由になる。
視線の向き一つで絵の印象は本当に様変わりするんですよね。
その際に部屋のレイアウト次第で視線をコントロールしやすくも、しにくくもなるというのは、着眼点として非常に面白いものだと思います。

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