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2007-05-22

[]著作権法の非親告罪化は同人誌を殺すのか

実際に法が整備されて運用されてみないとわからない。

後述するが著作権法の非親告罪化には竹熊氏とは別の根拠から反対だ。


●ここまでの流れ(今北産業用)

竹熊健太郎氏が自身のブログに『【著作権】とんでもない法案が審議されている』というエントリを掲載。

それが「非親告罪」ということになると、警察司法が独自の判断で著作権侵害とみなした行為者を逮捕することができることになり、商業的な出版・放送・上演・演奏のみならず、コミケ二次創作パロディ同人誌などにも深刻なダメージが加わる可能性があります。

なんて書いたものだから多数のウエブログが一斉にエントリを書いた。

以下、反応別に分類。

読んだ印象で判断しているので「違うよ」という意見があるかもしれない。

ちなみに貼ってあるのは何らかの意見が書かれているor2ちゃんねるコピペブログではないと判断したエントリのみ。あと、途中で飽きたので全部じゃないですww


1.「これは非道い」系

これは審議のうちにつぶさなアカンよ

メモ(著作権)とツッコミ

著作権法の非親告罪化

とんでもない法案が審議されている

著作権法の非親告罪化

あらゆる創作は模倣の土台のうえに成立している

とんでもない法案が審議されている

チョサッケーン

今後が不安

ニュースから

死へのカウントダウン始まったでこれ

とんでもない法案が審議されている

さすが竹熊先生

著作権の非親告罪化が検討されているらしい

これはひどい

憂鬱な時代

いやぁ、油断も隙もないっていうか、ホントやりたいほうだいですなぁ。

著作権法非親告罪化で同人死滅?

「著作権法の非親告罪化」

とんでもない法案が審議されている (たけくまメモ)

統制国家(マタ)ハジマタ

【著作権】とんでもない法案が審議されている

著作権侵害の非親告罪化

たけくまメモ : 【著作権】とんでもない法案が審議されている

著作権は誰のために

「著作権法の非親告罪化」

とんでもない法案。

これはやりすぎ。

「とんでも法案」


2.冷静なエントリ系

著作権法の非親告罪化

同人誌・パロディは海賊行為?

音楽と著作権/指針

海賊版取り締まりはパロディの危機か?

電脳コイルはトトロのパロディ?オマージュ?模倣?


3.賛成系

著作権侵害の非親告罪化の話

著作権の非親告罪化

著作権侵害は非親告罪にした方がよい


4.纏め系

著作権法の非親告罪化について


個人的に興味深かったのは

あと、よく知らんのだけど、今までって露天の海賊業者ひっぱるのに、事前に売ってる商品の著作権者に連絡とってから引っ張ってたの?

万来堂日記2nd

これ。どうなんでしょう。教えてエロい人。


で。「おまえら釣られ杉。冷静になって関連情報を嫁」というエントリが現れる。

「著作権法の非親告罪化」に騒ぎすぎなんじゃないですか

「著作権法の非親告化」法案の議論がややこしい方向に

著作権法の非親告罪化って話で釣られる人達


●著作権法の非親告罪化に賛成出来ない理由(1)日弁連が反対を表明している

個人的にはInternetWatchの『海賊版対策の強化に向け、著作権法における「親告罪」の見直しを』で知っていた。

同調査会は2005年11月に第1回会合を開催し、以降、知的財産の「創造」「保護」「活用」という3つの分野についての課題を検討してきた。この中の保護分野において、海賊版対策の強化について言及している。

具体的には、まず、著作権法における「親告罪」を見直すことを挙げている。海賊版の販売行為は現在、公訴を提起するにあたっては被害を受けた権利者からの告訴が必要な親告罪とされているが、これについて「非親告罪の範囲拡大を含め見直しを行ない、必要に応じ法制度を整備する」としている。

海賊版対策の強化に向け、著作権法における「親告罪」の見直しを

この記事から竹熊先生が仰るような事を読み取るのは困難だ。

それは『知的創造サイクルに関する今後の課題』16ページの

著作権等侵害のうち、一定の場合について、非親告罪化する。

「一定の場合」として、例えば、海賊行為の典型的パターンである営利目的又は商業的規模の著作権等侵害行為が考えられる。

営利目的の侵害行為は、その様態から侵害の認定が比較的容易であるとともに、他人に損害を与えてまで金銭を獲得するという動機は悪質である。また、営利目的ではなくても、例えば愉快犯が商業的規模で侵害を行った場合には、権利者の収益機会を奪い、文化的創造活動のインセンティブを削ぐなど、経済的・社会的な悪影響が大きい。

を読んでも「ああ、海賊版を取り締まろうとしているのね」と読める。というか読みたい。


ところが、だ。

日本弁護士連合会2007年2月9日に『著作権罰則の非親告罪化に関する意見書』を出している。

恐らく誰も気付いていないっぽいんで此処に書いておく。

著作権侵害等の罰則は、ほとんどが親告罪とされていますが、その理由としては、著作権侵害等の犯罪は数が多く、それを発見するためには、もっとも権利侵害されていることに敏感な著作権者などの権利者の告訴によるのが効率的であること、その権利としての性質上、権利者の意思に反してまで刑罰権を行使するのは適切ではないことなどによります。

このことは立法当時から現在まで、特に変化はありません。

したがって、いま、著作権侵害を非親告罪にする理由はありません。

悪質な著作権侵害に対処するために非親告罪化が必要ということもありません。権利者の告訴と、それに対する適切な対応があれば充分です。

日弁連 - 著作権罰則の非親告罪化に関する意見書

詳細についてはpdfもあるので閲覧して欲しいけれど、日弁連が反対している以上、おいそれと「良いんじゃね?」と片付けにくいように思います。


特許権等、著作権以外の産業財産権は非親告罪だよって言うけど、著作権以外はみんな方式審査あるじゃん。権利の内容がしっかり定義できてるから非親告罪なのであって、著作権みたいなあやふやなものを非親告罪にするのは、正直無理があるよ。

当事者同士の話し合いではなく、警察のような第三者が関与してくる場合、かえって文化の発展を阻害すると思わないかな。今コンテンツを持っていて、それを業としてどうこうしよう、という立場の人はこういうのを歓迎するんだろうけど、今からコンテンツを作るという立場からすれば、下手に動けばやられるという状態になるわけだから、それは文化の発展の阻害でしょ。

・それに海賊行為のような、いわば分かりやすい権利侵害について、侵害の立証が困難だなんて理由で非親告罪にしようっていうのはおかしくない?

mahmemo - まうめも - 今日も暑い日ですなぁ

こんな書き込みも見かけました。これ重要なポイントだと思う。


●著作権法の非親告罪化に賛成出来ない理由(2)言葉の援用の曖昧

ほら、「商業的規模」のって言っているじゃない。収益機会を奪うことが問題にされているじゃない。表現の自由に抵触する話なんてしてないじゃない。

novtan別館 - 著作権というワードだけで釣られる人多すぎ

確かにそう。

でもじゃあ「商業的規模」「海賊行為」って具体的にどういうのなのよ、という話が欠落している、というか、法を整備しようとしている人たちと私たちの認識に乖離があった場合にどのように担保するのか、というあたりが懸念されるわけで。

例えばessaさんは

これも、真の目的は、2ちゃんねるつぶし、ネットつぶしではないかと私は疑っていますが、右も左も民意を吸い上げて真面目に政治をしようという気はないんでしょうか?

アンカテ(Uncategorizable Blog) - この国で政権が取れない左翼政党って何?

と仰られていますが「商業的規模」という事で言うならばGoogleはてななど「他人のウエブコンテンツ等を検索し、表示した結果で企業が運営しているのだから違法」となりはしないか、という疑問もありますよね。


ちなみに僕はこの件については、拡大解釈されたら敵わないけど、

胸糞が悪い露店の外国人DVD売りが駆逐されるのは歓迎。

ニセモノの良心 : 著作権法の非親告罪化って話で釣られる人達

秋葉原の露天で違法コピーを売るのと、コミックマーケットの壁サークルとどっちが「商業規模」的にデカいんだろうか、と思ったりします。

もう少しいえば対象は何であるのか、どのくらいの収益規模をもってして商業規模と見なすのか、何をもってして海賊行為と見なすのかの具体的な線引きが現時点では見えていない。

『例えば、海賊行為の典型的パターンである営利目的又は商業的規模の著作権等侵害行為』という例示は例示でしかなく、それ以外のものが取り締まりの対象とならないという保証があるわけではない。


所謂海賊行為というのは例えば映画館ビデオを回したのを売るだとかそんな雰囲気がありますけれど、GoogleやYOUTUBEやはてなにコンテンツが掲載されるのは海賊行為とどう違うのかの明確性を示す必要があると思う。


●同人誌が殺されそうに感じるのは「商業的規模」「海賊行為」の部分じゃない?

今回、数多くのエントリを読みましたが知的創造サイクルに関する今後の課題の以下の部分に言及しているエントリを見つける事は出来ませんでした。

また、営利目的ではなくても、例えば愉快犯が商業的規模で侵害を行った場合には、権利者の収益機会を奪い、文化的創造活動のインセンティブを削ぐなど、経済的・社会的な悪影響が大きい。

営利目的ではない愉快犯ってなんだよ。

営利目的じゃないのに商業的規模で侵害が起きるケースって具体的にどういう事例を指し示すのかを教えてエロい人、らへんが懸念材料になっているのは事実なんじゃないですかね。


どうも「おまえら釣られ杉」と書いている人は上手い事そのあたりの話をスルーしてエントリを起こしているように思えてならないのですが気のせいですかそうですか。


●取り敢えずの結論

著作権罰則の非親告罪化には反対。

何故なら適用される範囲が曖昧すぎる。

オリジナルの商品をコピーしただけの物にしか今回の法律が適用されないのなら、そう明記して欲しい。「海賊行為が巧妙化」とか書かれると海賊行為という範囲を拡大解釈しようとしているのでは、という疑惑に繋がりかねなくて、今回の竹熊先生のような懸念も出たりするのではないでしょうか。


個人的には、ある一定規模以上の収益を上げた制作物に対しては著作権者に利益還元するなどのルール作りはする必要があるのかもしれないと思いつつも、いきなり司直の手が及びますよ、という法改正は違うのではないか、と思う。

また『愉快犯が商業的規模で侵害を行った場合』という一文があるんだけど、此処がパロディとか二次創作の部分にひっかかって来るおそれが大きいのではないだろうか。


所謂海賊行為が氾濫し、著作者が本来得られるべき収益を収奪する行為は厳しく取り締まって欲しいとは思うが、何をもってして海賊行為というのか、どのような状況を商業的規模というのか、同人誌やウエブなどは取り締まりの対象となるのかが現時点では見えないし、実際に法が施行されてみないとわからないのだけれど、日弁連が言うように「何も法を変えなくても対処は出来る」とも思うので反対です。

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