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2008-12-27

[]「行列マーケティング」は終焉するのか


マクドナルドが新製品を販売する店舗に大量のアルバイトを動員したそうですね。

今回の件について日本マクドナルド朝日新聞に対し

商品の味や店のサービスを調べるのが目的で、行列を作るためや売り上げのためではない。1千人はマーケティング会社が有効なモニター数を得るのに必要と判断した数字で、こちらが頼んだ数字ではない

asahi.com(朝日新聞社):マック行列、バイト千人 新商品発売日、やらせ否定 - 社会

コメントしており、日本マクドナルド社側としては行列を作る為のサクラとしてではなく、モニターである旨の釈明をしているようですが、1000人ものモニターを開店直後に動員する、という行為はたとえ事実であったとしてもモニタというよりは行列を作る演出ではないかという眼差しを向けられても仕方がないのかな、と思います。

今回の騒動を通して、個人的な感想をとりとめもなく書いてみたいと思います。


◆マーケティングは「騙す」ものなのか

行列をプロモーション企業が演出する、というのは昔から採用されてきた手法です。

随分前の話なのですが物凄く暇そうな焼き芋屋さんの前を通りがかったときに「ちょっとお店の前で食べてよ。ただにしてあげるからさ」と言われ、なんだかよく分からなかったんだけどただなら良いか、と思ってお店の前で焼き芋を食べていると、どんどんお客さんが行列を作って、ああ、こういうことだったのか、と納得したことですとか、デパートの地下食料品売り場で試食をして「これ!マジ美味い!」とか絶賛すると、たちまち人だかりになって、お店の人に感謝して貰っておまけをして貰ったこととかもあったわけですが、ああいうのもサクラといえばサクラ。

サクラのお仕事と言うとパチンコ屋などの開店待ち行列打ち子、ちょっとしたイベントでのサクラといった「お仕事」も探そうと思えばあるわけで、古い話でいえば「ホブソンズの行列」もサクラなんじゃないか?という疑惑も半ば都市伝説のように言われたりしていますね。

じゃあ何処からよくて何処から悪いのかという問題はありそうではある。サクラ行為が「駄目!絶対!」と何処から言えるのか、その具体的な線引きというのはどのようにして行えば良いのでしょうか。


smashmedia河野さんが

ちがうって。でもまあそういう認識があるんだろうな。「しょせんマーケティングなんて消費者をダマしてなんぼだろ」みたいな。悲しいけど、こういうのは携わる人全員で変えていかないといけないんだけど、現実的には難しい。

マクドの件でmixiの反応 | smashmedia

と書いておられて、この部分に反応したわけではないと思うのだけれどもid:rafさんが

所詮も糞も「ダマす」のがマーケティングであって誘導であり煽動だ。携わる人間はそれをきちんと認識した上での提案を行っていく必要がある。

http://b.hatena.ne.jp/raf00/20081226#bookmark-11441878

と書いていて。

今回の件に限らず「広告釣り」みたいな言われ方をしているのも散見するのですが、商品にアテンションするきっかけ作りとしての広報告知がマスメディアにどれだけ取り上げられやすいように仕掛けるのかという取り組みが結果的に「釣り」として受け止められている部分はあるのかもしれないな、とは思っています。

以前、私が勤務していたアパレルですとテレビ番組でのタイアップ衣装提供)とか雑誌媒体に於ける記事としての掲出など「広告ではない」見せ方というのが売上として重要な部分を占有していたのも事実。

こうした行為を「やらせ」だと言うわけではないのだけれどもrafさんのように「騙す」行為だと思っている人も一定の割合でいるのも事実なのかな、と。


また、こうしたサクラ行為を容認するような意見も散見します。

こうした眼差しの中には行列があろうとなかろうと(その行列が「仕組まれた」ものであろうとなかろうと)当該商品を購入するかしないかを選択するのは結果として消費者であり、消費者が購買動機の契機として行列をしているということが重要なファクタではない可能性もあるのではないか、と思いました。

「盛り上がっているという演出」は消費者が商品を知るきっかけが創出されているだけに過ぎず、商品を購入する・しないの判断自体は消費者の自己判断に委ねられているとも言えるわけで、行列している、という演出だけで購入を決定する程、消費者の購買動機に対するリテラシは低いと言えるだろうか、という疑問もあったりするかなあ、と思います。


「広告は釣り」という冷笑メソッドの先には「良い釣りも悪い釣りもない(良い広告も悪い広告もない)」という眼差しが存在しているのかもしれません。広告に対してそうした眼差しを持った消費者からみればたとえ自然発生的な行列であっても良い広告であってもステルスマーケティングとなんら変わりなく見えてしまっているのも事実なのかもしれませんし、同時に賢い消費者は商品情報を知るきっかけを得ているに過ぎなくて「仕掛けられた内容」がどのようなものであるのかに拘りはなく、「釣られる」ことなく商品を選択し、購入しているのかもしれません。


◆ステルスマーケティングを要請するクライアントという名のリア王忠告出来るコーディーリアは誰なのか

PR会社や広告代理店、さらにメディア企業の名前がずらずらと並んでるけど(ていうか大半がそうなんだけど)、自社のクライアントがよその代理店を使ってステルスやった場合に止めるのって難しくないか?

ぼくはそれを非難したいわけじゃなくて、言えなくなる心理はわかるんです。でも本当にそれでいいのと思ってます。

KYなやつか、子どもみたいな非利害関係者にしか王様に「裸ですよ」とは言えないわけです。ぼくがどっちかはさておき、言いたいことを言えるようにするためには、フリーにならなきゃ無理なんじゃないかなあ。少なくともぼくは無理だと思ったけど、もしサラリーマンのまま言える人がいたら尊敬します。

王様に「裸だよ」って言えますか? | smashmedia

ちょっと前に某PR関係の方と話をする機会があったのですが、そのときに「担当したイベントの運営のことを悪く言われて凄く凹んだ」という趣旨のことを仰られて、散々運営のことを言ってきた私としては大変申し訳ないことをしたなあ、と思っていまして。

ウエブログという場所は、私のような書き手であってもその影響力は強く、特定の企業名やイベント名を掲出しながら運営方針について表立って書いた結果として「そんなことを言われるくらいなら、もうやらない」とスポンサーさんが「降りて」しまったり、あるいは新規に獲得するときに「ほら、こんなにネガティブなことを書かれるじゃないか!」と指摘される可能性だってある。運営に対して不適切なことがあったなら、それを是正すれば良いのに、何故かスポンサーや運営者が非難された、と思うことがあるのは残念なことですが、掲出した情報をどのように受け止めるかは受け取る側に依存しなければならないのも事実ですね。

参加ブロガーであれ、企業であれ「裸だよ!」と書く事がブログマーケティングという市場の可能性自体を潰してしまう可能性が存在している。

「裸だよ!」と言った企業やブロガーにはクライアントからの依頼が廻らず、結果として「裸だよ!」と言わない企業やブロガーにだけクライアントからの依頼が廻る可能性もあります。

そうした状況に於いて警鐘を鳴らすことが、河野さんが言うところの「KYな態度」として受け取られ、警告自体が無視される可能性もある。

警告をしたところで、ステルスマーケティングを要請してくる企業はある。

今回の日本マクドナルド社が行った行為は非常に残念だ、と思うと同時に「あの」日本マクドナルドですらやるのだったらどんな企業だって仕掛けてくる可能性がある。

マーケティングという世界に於いてステルスマーケティングを要請してくるクライアントという名のリア王に忠告をすることの出来るコーディーリアは誰なのか、という問題を抱えているように思えます。


そうした中、マクドナルド株が急落、というニュースが入ってきた。

マクドナルド(2702)が続急落し、25日移動平均線を割り込んでの引けとなった。もともと、10月10日の上場安値1291円から12月8日に2170円の05年8月以来3年4カ月ぶりとなる高値に急騰したことから利益確定売りが出やすくなっていた。そこに、読売新聞が「23日の大阪で行列ができたのは、やらせ?マックが試食の短期バイト動員」と報じたことから、嫌気売りがなどが膨らんだようだ。24カ月線は突破しているものの、このままでは、戻り高値圏で上ひげの長い月足となり、新年の調整局面入りを示唆することになる

個人投資家にプロフェッショナルな情報を!アナリストレポート <魁 - SAKIGAKE ->

とのことであるが、年末年始を挟む格好になるので、株価下落は一過性のものに過ぎない、という見方も出来なくもないが、「やらせ」疑惑が購買意欲を減退させた場合は問題が大きくなる可能性もあり、クライアントという名のリア王に忠告出来るコーディーリアは、消費者そして株主である、と言えるのではないだろうか。


また、WOMマーケティング協議会設立準備会http://womj.jp/なるものが発足したとのことですが、こうした協議会が今後こうしたステルスマーケティングに対して機能しうる組織なのかが注目されます。

発起賛同人の中に、マクドナルドが東京で仕掛けたブロガーを使ってのステルスマーケティングを行った企業の名前も含まれていますしね。


◆「行列マーケティング」は終焉するのか

nakakzsさんが

さて、今回の件で一番……と思ったのは、今の日本マクドナルド社長があの原田氏だということ。というのは、氏は近年まで日本アップルの社長で(マクドナルド移籍当時「マック」をかけたITジョークが局地的に流行ったような)、ネットに対してもそれなりの知識があってもおかしくないはずです。それだったらネットが普及している今、このようなリスクを見抜けなかったのかなあと。この広報戦略が独自に行われ、耳に届いていなかったという可能性もありますが。

マクドナルドの例の行列はどこにミスがあったのか - 空気を読まない中杜カズサ

とお書きになられているのですが、今回の一件には東京での「前哨戦」的なことがありました。

smashmedia河野さんがお書きになられているように

聞いた話では東京の販売開始時にも某社の登録ユーザーには8000円の報酬で店に行ってブログに書くように依頼(案内)があったそうです。ステルスでやれという条件つきで

王様に「裸だよ」って言えますか? | smashmedia

ということが行われていました。

個人的には東京に於いて行われたステルスマーケティングが全くと言って良い程にネット上で問題視されなかったこともあり、大阪という食の街でさらなるバイラルを仕掛けても問題にならない、と踏んだのではないかと考えています。


id:b4-ttさんが河野さんのエントリへのブックマークコメントとして

バレないようにうまくやるのなら結果として誰も気分を害しない

http://b.hatena.ne.jp/b4-tt/20081226#bookmark-11441878

とお書きになられているのですが、今まではバレなかったというか、噂はあっても噂どまりでマクドナルドもフルキャストも、そして今回の企画を作ったどこかの代理店-その名前は複数出ていますが信憑性は無いので此処では掲出しませんが-まさか短期バイトの広告が元でサクラがバレる、とまでは考えていなかった、もしくは問題になってもネットだけでマスメディアまで取り上げるとまでは思っていなかったのではないか、と推察しています。


今回のマクドナルドのサクラは、ネットの求人広告が契機となり、大問題にまで発展しました。

くり返しになりますが、東京に於けるブロガーを使ってのステルスマーケティングは今回ほどの問題にまで発展していません。

今回はたまたまメディアでも取り上げられ、株価も急落するなどして「行列マーケティング」が消費者や株主から歓迎されていないということがはっきりとした形で示されました。

ですが、東京のブロガーを使ったステルスマーケティング程度では「炎上」にもならなかったことも示され、今回の大阪の例だって、いつまで「薬」として作用するのかはわかりかねます。


今回のような大規模な「行列マーケティング」というのは仕掛けにくくなるだろうな、と思う反面、東京程度の規模だと見逃される可能性や、気づかれても業界内部や関係者には注意しにくいという問題もあります。

タイトルではブックマークを少し意識(笑)して「行列マーケティング」としましたが、何も今回のような行列を作らせるだけが所謂ヤラセの手法ではなく、そうした行為を何処まで防げるのか、あるいは逆に行列だけを見て「はいはい、ヤラセヤラセ」と思ってしまうことに対してどのように向き合えば良いのか。

今回のマクドナルドの一件は、広告主、PR関連会社、そして消費者に至るまで様々な角度から「広告とは、広報とはどのようにあるべきなのか」を考えさせる良い機会になったのではないか、と思います。


河野河野 2008/12/27 00:48 どうもです。

> 行列だけを見て「はいはい、ヤラセセ」と思ってしまう

はてブのコメントを見てる限り、こういうリテラシーが高いというか、斜に構えているというか、とにかく慎重な人がある程度いることはわかりました。
ただ大多数はそうじゃないし、それを是とすることには首を振り続けたいと思います。

ululunululun 2008/12/27 01:35 コメント有り難うございます。typoの部分に突っ込まれてしまった(修正しました)

massy2412massy2412 2008/12/27 03:47 金をはらってブログ書きは事実。

ekieki 2008/12/27 08:23 気が向いたら韓流やオリコンをからめた補足エントリにも期待しています。

ululunululun 2008/12/27 11:38 massy2412さん>確かに記事広告がウエブおよびウエブログにも存在しますね。私もお金を頂いて商品やサービスに関する記事を書いている事はあります。ですがそうした記事を書くときに「広告ですよ」と明記する・しないで受け取られ方は違う筈で、私は広告である旨を記載するよう、しています(書き方が曖昧な時もあるかとは思いますが)。
勿論、所謂嫌儲的視座に立つならば喩え広告であると書いてあっても適切性に欠けるという意見も散見されるのは十分に認識しているところではありますが、それはもう価値観の違いであると考える以外に打開策はないだろうとも思います。

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