煩悩是道場 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-01-22

[]少子化対策ベビーニューディールと位置付けてはならない


少子化対策が根付くには時間お金企業社会コンセンサスも必要だ。

「少子化対策は、ベビー・ニューディールだ。不況対策となる」という発言が「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム」発足の記者会見で出たのだけれども、新聞報道というのは発現論旨を端折っていたりすることがあるので発言者の発現論旨は不明ではあるものの、少子化対策を景気浮揚の一環であると位置付けた場合、景気が浮揚してきたら少子化対策は縮小もしくは打ち切りの方向に向かうのではないかと邪推してしまう。

日本という国家において国民人口構成をどのようにしていくのかを議論する少子化対策という問題は経済の動向とは切り離して考えるのがベストではないだろうか。


◆「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム」は平成17年度の国民生活白書を読むべきなんじゃね

作業チームは、来月、初会合を開き、若い人たちが結婚しなかったり、結婚が遅かったりする背景となっている恋愛の傾向や、結婚しても出産しない理由などを分析したり、安心して出産できるようにするための支援策を検討し、半年後をめどに提言をまとめることにしています。

NHKニュース “少子化”恋愛傾向など分析

それ、平成17年版国民生活白書に書いてあるから!

html版はhttp://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h17/01_honpen/index.html

pdf版はhttp://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h17/10_pdf/01_honpen/index.html

国民生活白書が作っただけの自己満足だったり税金無駄遣いでもいいよ、というのでないなら、過去の資料は使うべき。


この国民生活白書、白書というより読み物として面白い。

何にせよ教育に関わる人、子供を持つ親、そんな人たちは絶対に読むべきだと思う。願わくばこの白書が多くの人に読まれることとなって、日本人にとっての少子化対策について、これから誰かが何かを語るときの「プラットフォーム」になってほしいと思う<どう読んでも改変です、本当に(ry


改変はともかくとして、これだけの調査をしているのに、調査をしただけ、というか具体的な対策が何故行われてこなかったのか、もう少し言うならば「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム」なるものを立ち上げなければならない程の状況にしてしまったのは何故なのか、という疑問は残る。

チーム名が「ゼロから」という事もあり平成17年度の国民生活白書の調査が生かされるのかどうかも疑問ではある。<「ゼロから」という言葉に引っかかりすぎの感は否めないのだけれども


フランス出生率2.0を超えている

さて、このエントリを書こうと思ったのは

id:yuu665さんが痛いニュース(ノ∀`):「若者、結婚が遅い…どんな恋愛してるのか」「日本はなぜ子供産むのが難しいのか」など、小渕大臣が少子化分析チームブックマークコメント

この人は、フランスでは出生率が劇的に回復しているということを知らないのかな?

http://b.hatena.ne.jp/yuu665/20090122#bookmark-11765043

とお書きになられていたからだ。

先ず最初に辿り着いたのが

フランス、出生率2.005まで上昇 : ニュース : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)という記事。

無断引用するな、とケチくさい事が書かれているので別表になっている部分を文字興し。

画像を単純に掲載しただけだと某ネタ帳の人に強烈にDisられるかもしれないですからね、苦労は惜しんではなりませんw


先ずは家族手当。日本だと第一子、第二子ともに五千円、第三子以降一人につき一万円、小学校修了時までであるのに対しフランスの場合第一子は無し、第二子は117ユーロ(約13500円、1ユーロ116円換算)、第二子が267ユーロ(約30900円)、第三子が417ユーロ(約48300円)以降それぞれ150ユーロ(約17400円)が加算されるばかりではなく子供が11〜16歳の時は33.51ユーロ(約3900円)、16-19歳のときは59.57ユーロ(約6900円)が加算されると非常に手厚い。

出産休暇も日本の場合出産前6週間、出産後8週間であり給与保証ではなく健康保険法に基づいて標準報酬日額の60%が支払われるのに対しフランスの場合第一子、第二子の場合出産前6週間、出産後10週間、第三子以降の場合は出産前8週間、出産後18週間の出産休暇を取得出来る。給与保証も2000ユーロという上限はあるものの、80%が保証されている。

父親の出産休暇も日本では規定がないがフランスでは4ヶ月以内に11日(双子だと12日)あり、給与保証も2000ユーロという上限はあるものの、80%が保証されている。

育児休暇も一人目の子供は半年と日本より短い(日本は産まれた日から一歳になる誕生日の前日まで)のだけれども、働き方によって保証がことなり、全く働かない場合は530.72ユーロ(約61600円)、半分勤務であれば305ユーロ(約35400円)、半分以下なら398ユーロ(約46200円)であり、第二以降だと三年間という期間があるのが特徴だ。

この他にもお手伝いさん雇用補助やフランス国営鉄道の割引など、兎に角「二人以上、子供を産むとオトクですよ」という政策を行ってきている。

これらの事は平成17年版国民生活白書の「社会全体での充実した子育てサポート」でも紹介されている。


さて、こうした政策だけでも凄いな、と思うのだけれど財源はどうすんのよ、というツッコミは横に置いておいたとしても「幾ら税制が優遇されたとしても結婚が『イエとイエ』の結びつきだと考えると面倒だ」とか「姓をどちらかにすることに抵抗感を感じる」あるいは様々な理由で結婚出来ない、例えば同性である、子供は欲しいけれど結婚は考えられないという価値感の人には「恋愛→結婚→妊娠・出産」という一本道的以外の選択肢が存在しなければ出産を決意しにくい、というのもあると思う。

こうした背景は平成17年版国民生活白書の中にも「事実婚の背後には結婚制度に対する価値観の多様化がある」というレポートにも書かれている。

また、「法律婚を重視する伝統的な意識が「できちゃった婚」に反映されている」にあるように「結婚→妊娠」が「妊娠→結婚」にシフトしたとしても子供を産み、育てる為には結婚している必要がある、と多くの人が考えているのも事実なのではないだろうか。


読売新聞の記事にはユニオン・リーブルなる言葉が出てくるのだけれども、これは緩やかな内縁関係ということだそうだ。こうしたカップルにも婚姻している人同様の支援が受けられるというのも日本では見られない。

フランスではPACS(連帯市民協約)という法律1999年に制定されており、これによると女性同士や男性同士も含む同棲カップルにも夫婦と同じ権利が与えられているという。

ヨーロッパの家族事情というウエブサイトによると

PACSのような法律が制定されたのは、やはりフランスが個人主義の国でひとりひとりが自信を持って自分らしい人生を送り、自立しているからこそであると思う。有名人カップルが籍を入れたとか、入れないだとか、女優が未婚の母になったとか、日本では芸能スキャンダルとなりワイドショーなどで騒がれるような話題も、フランスではまったく社会的関心事項にはならない。もちろん、異性問題で政治家が失脚したりするようなこともない。

ヨーロッパの家族事情

という事なのだそうだ。

こうなるとワイドショーはおまんまの食い上げですねw


◆少子化対策をベビーニューディールと位置付けてはならない

「少子化対策を将来への投資と考え、もっとお金を使うべきだ」と委員の一人が発言しているのだが、ベビーニューディールという発言もだがカネさえ突っ込めば解決するよ、と思っているんじゃないか、と読めてしまう。*1では、少子化対策にカネさえ使えば景気は浮揚するだろうか。


少子化対策は国のみならず、企業や納税者にも少なからずの負担が掛かる。また、どんなに少子化対策に力をいれても継続的に安定した収入を得られるだけの労働市場が存在していなければ「よーし、どんどん子供を作っちゃうぞー」とはなりにくい。というかならないのではないだろうか。

たとえばオランダではワークシェアリングが進んでいるのだけれども『重要な点はパートタイム労働者とフルタイム労働者の均等待遇が法で保証されている』という。勿論、オランダのやり方をそっくり真似すれば良いとは思わないけれど、少子化対策を景気浮揚の一環と考えるなら子育てに関わる費用(被服や住居など)を安心して工面出来る雇用の確保も視野に入れなければならないだろう。子どものいる世帯は子どものいない世帯よりも平均消費性向が高いとはいえ、その消費を下支え出来るだけの十分な給与がなければやはり子供を産んで育てよう、という意識を創出する事は困難であるように思われる。


結婚が「イエとイエの結びつき」であるという考えが未だ支配的である日本においてユニオンリーブルやPACSのような政策が根付くかどうかも疑問である。

日本がフランス同様の子育て支援策を打ち出したとする。現在子供のいる家庭は随分楽になるだろう、と思うし、家庭によっては第二子、第三子を考える家庭もあるとは思うが、「恋愛→結婚→妊娠」もしくは「恋愛→妊娠→結婚」という道筋以外である同棲や事実婚、結婚をしないで子育てをする、同性同士で夫婦となるというような多様なライフスタイルを法律で容認し既存の婚姻と同様の保護をしなければ子供を産んで育てようというようにはならないのではないか。

事実婚や同棲を婚姻と同様に税法上で優遇するということは「イエ」を解体することであり、同時に子育てをするという局面に於いても「自立した個人」であることが選択可能になる、ということである。

今でこそ妊娠してから結婚するという形式、所謂出来ちゃった婚だとか授かり婚などといわれるスタイルはコンセンサスを得つつあるが、それとても長い時間を要してコンセンサスをえるようになってきた。未婚で子供を産んで育てるとか同棲で子供を育てるというような選択がどれだけの人がコンセンサスとして容認出来るのであろうか。

子育てに於いて自立した個人でいる事に社会的なコンセンサスが得られればばユニオンリーブルやPACSのような政策は受け入れられるだろうし根付きもして子供を産み育てる人も増えるだろうけれど、子供を産み育てるという状況になった場合は自立した個人でいるのはどうも、という人が多ければなればどんなに法整備をしたところで出生率が高くはならないようにも思う。

出生率とは別にPACSのような法整備は是非して欲しいとは思うので、少子化対策とは切り離して検討してくれれば、とは思うが…


少子化対策をニューディール政策のような景気浮揚の為の施策として捉えるべきではない。

フランスの少子化対策は素晴らしいと思う反面、狭い国土である日本に於いて出生率が2.0以上となるような施策を長期的に継続する事は正しいと言えるのだろうか。

少子化対策というのは20年後、50年後の日本がどのような姿であるのが望ましかを思索する行為であり、長期的なビジョン立脚した上でどのようにしていくのが良いのかを考える必要があるのではないだろうか。


「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム」は少子化対策をニューディール政策的なものではなく、長期的ビジョンとして国民の誰もが納得出来る提案を文字通りゼロから作りだしてくれる事を期待したい。

*1報道によって切り取られた発言なので発現論旨は別のところにある可能性はある

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