2010-05-18
■[雑感]カヤックイラスト買い叩き事件に関する私的見解
面白法人カヤックの学生絵描き買い叩き問題のまとめについて何か書いて、とフジイユウジさんからリクエストを頂きました*1ので簡単に<と言いながら例によって無駄に長い
◆安く描いたらチャンスになると発注側が言うのはイクナイ
また、開発工数の問題だけでなく、開発コストも価格破壊が起きています。例えば、その人の実績に必ずしもこだわらない場合には、企業側が人力を使ってイラストの上手な人を検索や投稿サイトから探し出し、ゲーム制作のコストを下げることもあるようです。それは逆にイラストを描く彼らからすれば、チャンスにもなります。
敢えて修正後の文章を使いました。
この文章、あまり問題視されていませんけれど適切ではないですよね。
此処ではイラストというプロダクトを発注する企業側が「開発コスト」の「価格破壊」の事例としてイラストの発注を挙げているわけですけれども「その人の実績に必ずしもこだわらな」ければ「ゲーム制作のコストを下げる」事が可能であると書いています。
「ゲーム制作のコストを下げる」為に「その人の実績に必ずしもこだわらな」いのなら「それは逆にイラストを描く彼らからすれば、チャンスにもなります」は言ってはいけないですよね。
何故なら「その人の実績に必ずしもこだわらな」い人を捜しているのですからキャラデザという実績を作ったら、その企業ではもう二度と仕事が出来ないか、仮に仕事を依頼されたとしても「前回同様」の条件での仕事しか出来ないわけですから「チャンス」になりようがないからです。「チャンス」というのは無料であったり「驚く程安い」金額で「仕事」をした事を実績として、次回以降は良い条件-少なくとも無料とか「驚く程安い金額」ではない-で仕事が受注出来るという前提条件がなければならないからです。ずっと「驚く程安い」金額だったり無料だったりするような条件しか提示するつもりがないのならそれは「チャンス」とは言わないでしょう。
これが例えば「原田治先生に依頼するのと自称売れない絵描きのid:ululunに依頼するのではid:ululunに依頼するほうが安いよ!」という話なのなら「うん、まあそうねえ」と言わざるを得ないですし、もしかしかたらそういうような事を言いたかったのかもしれないのですけれど、どちらかというと短期間で安くどんどんゲームを作って稼ぐというコンテクストの中に立ち現れていますので無名もしくは無名に近い人を使って「開発コスト」の低減を図っている、と考えるのが妥当なのかなあ、と。
◆イラスト発注をする企業に検討して欲しい事
個人的には「この仕事を引き受けたら制作実績にも繋がるし、仕事を受注するチャンスを掴める」という趣旨の発言をするのは、それ自体がもう胡散臭いと思っているわけなのですけれど、無名だったり新人だったりするイラストレイターさんが制作実績を積み上げたり制作実績としてアピールする機会と場は必要だとも思いますので、ソーシャルゲームのみならずイラストをアウトソーシングする全ての企業様には是非以下の項目について検討をしてくだされば、と思っています。
可能であるならばゲームの何処かにイラストレイターさんの名前を入れるのが好ましのですけれど、それが無理なようなら自社サイトの制作実績の項目を作ったときに「誰にイラストを発注したのか」を明示するよう契約の段階で契約書に締結もしくは自社サイトにて名言されている事が望ましいです。
イラストレイターとして著名ならプロダクトアウトした「作品そのもの」がその作家さんの制作実績として眼差される事もあるかもしれませんが、それは誰もが知っているレベルのイラストレイターさんであって、少なくとも新人さんやセミプロレベルの人では難しい。
ゲームをやっていて「このイラスト良いな」と思っても「そのイラストが誰の手になるものか」の情報を得る事が出来なければ、発注する事は出来ません。イラストというのは「類似した画像」での検索が困難であったりそもそも「画像」をキーフレーズにして検索を試みる事の少ないものですから「このゲームのキャラデザは、●●さんがしたものです。ウェブサイトはこちら」のような文章がソーシャルゲームを作った企業様の制作実績の中に書かれていると良いな、と思います。
2.所謂「買取」をやめて貰う
私と相方は商業漫画で活動していて、ソーシャルゲームのキャラデザをする仕事を受注した経験がありませんので認識に乖離があるかもしれませんけれども、ソーシャルゲームのような受注に対して制作されたイラストの多くは「買取」だと思うんですね。
この「買取」というのはどういう状態かと言いますと、自分で作った作品なのに、作品を別の用途で使う事が出来ないという事です。
「てゆーか、ソーシャルゲームのキャラなんだから、それが当たり前でしょ」と言われるかもしれないのですけれど、安かったり無料だったりするのに自分で使えないって変じゃないですか?キャラデザを安く交渉するなら、それこそ物凄くヒットしたゲームだったらそのキャラクターをフィギュアやトレカとかに出来るくらいの権利があっても良いと思う。逆にそれが嫌ならきちんとした金額を支払うべきでしょう。
この手の話としてみなさんが良くご存知なのは「ひこにゃん」騒動だと思うんですね。
「ひこにゃん」は彦根城築城400年記念のキャラクターとして公募され、賞金が支払われたわけですけれども、その後の思いがけないヒットによってキャラクターグッズや絵本などをプロダクトアウトする権利が作家と賞金を支払った側のどちらにあるのかで揉めた、というものですけれど、支払われた金額の多寡はともかくとして「イラストレイターさんの権利は此処までですよ」という提示があるべきだと思うんですね。
個人的には「このゲームのキャラデザは私がやりました」と自分のウェブサイトやお絵かきサイトなどで公表する権利は喩え買取であったとしても認めるべきだと思っています。これは「チャンス」云々ですとか金額の多寡とは無関係に認めるべきだと思います。
3.キャラデザは公募形式が良いかも
上記の話を書いていてふと思った事なのですけれど、キャラデザを公募するって面白そうですよね。
「戦国時代のゲームのキャラデザを募集します。信長と秀吉を描いて応募してくだしい。賞金は30まそだお」みたいな感じに公表してしまえば幾らでその企業がアウトソーシングしているのかですとか権利の範囲とかも明確になると思うんですよ。
ソーシャルメディアマーケティング(笑)的には作品の公募や公表を専用ブログに展開し、結果や質疑応答をハッシュタグ込みでツイートするというのもアリなのかもしれない。
此処で大切なのは「弊社はイラストレイターの新人発掘に尽力しています」という姿勢を「見せる」事であって、間違っても「(アウトソーシングの)価格破壊」ではありません。
「新人発掘」が上手くいけば「あの企業さんの公募を通過する事がイラストレイターの登竜門」みたいな認識が出来るかもしれないですね<これはちょっと言い過ぎw
◆Win-Winの関係作りを
「驚く程安い価格で悪いんだけど、ソーシャルゲームのキャラデザやんない?」ですとか「無料で本にイラスト載っけない?」という「お誘い」を無料もしくは「驚く程安い」金額で引き受けてしまうのは、そこに「ももももももしかしたら有名になれるかも」という「欲」があるからですけれど、そうした話に乗っかっただけでは中々仕事の依頼は増えません。
個人的には、こうした「欲」を利用しているにも拘わらず「価格破壊」とか言ってしまえるのは非道いなあ、と思うのですけれど、それはそれとしても無名の人がプロダクトに携わる事によって「チャンス」を掴み取る可能性を企業は示す必要がある、と今回の件を通じて思いました。
無名の人程「安く」なるのは一種の自明だと思うんですね。
だから人によっては実績作りの為に無償で作品を描きます、という人がいても少しも不思議ではない。
不思議ではないのですけれど、無料ですとか「驚く程安」く作品を提供するのなら、それに見合った「対価」として「見込み客」が自分のところに来る道筋をつけるべきだと思うのです。
今回のエントリでカヤックの柳澤大輔さんは
そうなると、どこが一番市場として有望かを見極めていかけなければならない。これは非常に難しい問題です。でも、ほかにないコンテンツを作るという点は、カヤックの望むところであり、挑戦しがいがあります。「どこも出してないゲームを考えよう」。そんな気概がある人間がワガ社のソーシャルアプリチームにはいます。
とお書きになられています。
「かなりかっこよく誇張」したとお書きになられていますが誇張かどうかはともかくとして「どこも出してないゲームを考えよう」という「気概」を持っておられるのならイラストをアウトソーシングするにあたってその金額を「開発コスト」の「価格破壊」するような事を視野にいれず「我が社でお願いするイラストレイターさんは皆さんクオリティも高く気概のある方ばかりです」と言うような方向になると良いのかもしれないですね。
柳澤大輔さんは、今回の件に対し
イラストレータの価値を下げるのは本意ではもちろんありません。むしろ自分達の仕事の領域のためにも高めたい立場です。ですので、これをきっかけにどのような伝わり方になるかはわかりませんが、その立場として、今後も挽回すべくできるだけのことをしていきたいと思います。
とツイートしておられます。
面白法人カヤックさんが今回の件をきっかけに、ソーシャルゲームに関するイラストをアウトソーシングするに於いてどのような行動を示すのかについては注目が集まっているところだと思いますので、Win-Winの関係を築く事が出来ると良いなあ、と思います。
関連エントリ:『原稿料って著作者が決めにくい』こちらは以前書いたエントリですが、どちらかというとクリエイター側の考えとして書いています。
宜しければ併せてお読みください。
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