何でもオープンにすることについて(つづき)

一昨日の「何でもオープンにすることについて」
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050609/p2
を受けて、id:naoyaが「隠さなくていいものは隠したってしょうがない」
http://d.hatena.ne.jp/naoya/20050610/1118379135
を、id:kawasakiが「情報を隠す意味は「あまり」ない」
http://d.hatena.ne.jp/kawasaki/20050611/p2
を書いた。一方、id:jkondoは合宿で開発した新機能「はてなアイデアの市場化」
http://hatena.g.hatena.ne.jp/hatenaidea/20050609/1118308022
に対して「わかりにくい」という声が多かったので、早速ヘルプを書き直し
http://i.hatena.ne.jp/help
また自身のダイアリーで「予測市場で要望を吸い上げる」
http://d.hatena.ne.jp/jkondo/20050611/1118446875
を書いている。これがはてなのオープンネスである。もともと、はてなアイデアというのは、「サービスだか何だかよくわからん」というコメントがネット上で散見されるように、はてなのサービスへの要望とそれへの対応をすべて可視化してしまおうというオープンな考え方に端を発して発展中のものであるから、ここ数日の僕も含めて四人の取締役によってネット上で行われたやり取り全体が、今のはてなを象徴していると言って間違いない。特に、id:naoya

知られてしまったら競争優位性が失われてしまうなんてものは、もともと競争優位性としては脆すぎるのであり、それを企業の中に隠し持っていたって、あっという間に突き崩されてしまうんでしょう。そんなものを内に秘めておくよりは、自分たちなりのやり方をオープンにして世の中に還元したり、知ってもらったりして、その上で自分たちに興味を持ってもらえるほうが、遥かに価値がある行動だと思います。

は全くその通りだと思うし、id:kawasaki

  • 自分が優れていると思っているアイデアは、おそらく世界中で何千人もが思いついている。
  • ただアイデアを思いついてそれを発表しようと思う人間となると急に少なくなる。
  • 更にそのアイデアを実現しようと思う人間はもっともっと少ない。
  • だから、とりあえず自分が持ってるものは情熱と速さ。それに加えてインターネットを通じた情報発信だ。

というわけで、自分の考えが現時点で未熟であっても、批判覚悟でどんどんインターネットで発表していく方が得と思ったので、私はアイデアを隠すことを止めました。

もよくわかる。ただこういう考え方を「会社のあり方に直結して迷いがない」という事例はまだほとんど見られない。既に大きくなってしまった企業ではかなりやりにくい部類のことだし、たとえばシリコンバレーのごく普通のベンチャーでは、こうした「オープンネスへの希求」を仮にそのベンチャーが持っていたとしても、出資したベンチャーキャピタルの大半が「企業なんだからね、そういうわけにはいかないんだよ」と制止することであろう。僕が前エントリーで、

「近藤のこの世界観は誤っている」が現代の常識である。ただ「そのときどきの常識が未来永劫正しいとは限らない」は歴史が証明するところでもある。でも常識にただ挑戦すればいいってもんでもない。そこがベンチャー創造の面白くも難しいところなのである。

と書いたのはそういう意味である。面白そうだからこのまま走ってみるか。「迷い」が僕自身に全くないといえば嘘になるが、今はそんな気分でいる。

次の10年はどういう時代か(5)

昨日届いた英エコノミスト誌と米ビジネスウィーク誌は、両方とも表紙がIT関係という久しぶりの出来事。ともになかなか充実している。いますぐ全記事がネット上で無償で読めるわけではないが、6月11日付けのブックマーク
http://b.hatena.ne.jp/umedamochio/20050611
に、ビジネスウィークから10本、エコノミストから6本、記事をブックマークしておいた。
ビジネスウィークは、「The Future of Technology: The Big Trends Ahead and Our Ranking of the Top 100 Info Tech Companies」
http://www.businessweek.com/magazine/toc/05_25/B393805it100.htm
という、全体目次と「IT100」企業一覧を並べたサイトから個々の記事にいくとよい。
「たかが雑誌」ではあるが「されど雑誌」で、一流誌がそれなりにカバーストーリーを組む場合にはかなりのコストを使って取材が行われ、構成もそれなりに考え抜かれる。
カバーストーリーの目玉は、ビジネスウィークが「Power of Us」。エコノミストがeBayの10周年にちなんで「eBay: Meg and the power of many」。かたや「Power of Us」でかたや「Power of Many」。同じことである。特に「Power of Us」
http://www.businessweek.com/magazine/content/05_25/b3938601.htm
は、最近の重要な流れをとてもよくまとめている記事だと思う。
「次の10年」のほとんどの芽はもう出ている。そこから成長する芽と死んでいく芽を見極めることが「次の10年はどういう時代か」を考えることなのだ。
同じ6月11日のブックマークから、Burnham's Beatの「For the Love of God People, Enterprise Software Is Not Dead」
http://billburnham.blogs.com/burnhamsbeat/2005/06/for_the_love_of.html
も、同じ観点から勉強になる記事だと思う。