「やめること」を先に考えよう

さあ来年は何を始めようか。そう考えるのではなく「何をやめるか」を先に決めよう。それも自分にとってかなり重要な何かを「やめること」。
それが「来年の抱負」「今年の抱負」を真に意味のあるものにするための最重要ポイントだと思う。新しく始める「何か」を決めるだけでは、できない場合がほとんどだ。
「時間の使い方の優先順位」を変えないと、新しいことを始める時間はなかなか捻出できない。とにかく「やめること」を決めなくちゃいけない。
僕にとってのここ数年は、かなり新しいことへと舵をぐっと切った時期だった。JTPAを始めたこと、たくさん勉強するようになったこと、若い人たちとばかり会うようになったこと、ブログ(CNET Japanから本欄)を始めたこと、はてなに参画したこと・・・。
こうした新しいことのすべては、僕の本業である「MUSE Associatesのコンサルティング事業」で「もう新しい仕事はいっさい取らない」と数年前に決めた(これが僕にとって最も重要な「やめること」についての意思決定だった)結果、実現したことだ。この「やめること」の意思決定がなければ、何も変わらなかったろうと思う。
それ以前の自分にとっての「時間の使い方の優先順位」としてかなり上位に来ていた「新しい顧客の開拓・獲得」「そのための営業活動」「そのための人とのつながりの維持」・・・。そういうことに、自分の貴重な時間を、いっさい使わない決心をしたことが、すべての始まりだった。その「始まり」がなければ、何も「新しいこと」ができなかったろうと思う。
以来、講演依頼や執筆依頼やミーティング依頼は、どんないい場所での講演や執筆であろうが、会う相手がどんなに偉い人であろうが、何も考えずに瞬時に断るようになった。そして「自分より年上の人とは、顧客以外、原則として会わない」と公言できるようになった。
それで生まれた時間を、自分が新しい・楽しい・面白いと自然に思える方向に、本能のおもむくままに振り向けていった結果が、今になったのである。
「さて来年こそは何か新しいことを始めよう」と考えている人は、「やめること」を先に考えよう。そっちのほうがうんと難しいからだ。