My Life Between Silicon Valley and Japan このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006-06-28

[] YouTubeについて(1)

ウェブ進化論」を脱稿(もう原稿に手を入れない状態に)してから約半年が経過した。半年遅く、ちょうどいま本を書いていたとしたらどう書くか迷うだろうな、と思うのがYouTubeである。別の言い方をするとすれば「ウェブ進化論」に書かれていない「その後の世界」で最も重要会社YouTubeだと言えるだろう。

YouTubeはまさに2006年の現象である。

まず個人的経験をいくつか。

(1) 4月にテレビ出演(WBS)した映像は、CM削除編集がなされ前半と後半に分割された録画映像が、翌日か翌々日、YouTubeにアップされていた。テレビを生で見損なったという友人や、海外在住の友人たちには、そのURLを送るだけで済み、おそろしく便利だった。僕がテレビに出た映像などロングテールの尻尾もいいところだから、この映像は二ヶ月くらいずっとYouTube上に存在していたが、今はもう消えている。

(2) その後、「はてな近藤Mixi笠原」競演の「カンブリア宮殿」を見たいなと思い、日本からビデオを送ってもらう手配をしたところ、数日後に(ビデオが届く前に)YouTubeにアップされているとの情報を得て、YouTubeで見た。でもYouTube上に存在していた期間は三日くらいで、今はもちろんもう消えている。「恐竜の頭」とまではいかずとも話題性の大きいミドルテールくらいの映像は、アップされてもトラブル回避を意識して、存在期間は比較的短いのだろう。

(3) 先日東京で、20代半ばの雑誌編集者と話をしていたら「帰宅するとYouTubeに向かって検索する癖がついてしまい、その日見過ごした映像でも、大抵のものは何とか見られるので(見られなければ見なければいいだけ)、HDDレコーダーは買わないことにした」「YouTubeのおかげで睡眠時間が減って困る」という話を聞いた。

(4) つい最近、大手電機メーカー企画担当の友人(僕と同世代)と飲んでいたら、「YouTubeを知らない」と言うから、「そりゃあ何が何でもまずいんじゃないの」と言った。翌日、彼からメールが来た。「帰宅して、妻は既にYouTube中毒になっていて、小学生の息子までが頻繁にYouTube映像を見ていることを知り、愕然とした」とのこと。

さて、昨日のWall Street Journalに、YouTubeについての詳しい記事が出ている。

「With NBC Pact, YouTube Site Tries to Build a Lasting Business」

http://online.wsj.com/article/SB115137083424491406.html

まずYouTubeシリコンバレーベンチャーで、セコイアがバックについている。従業員35人。行ったことはないが、ピザ屋の二階にオフィスがあるらしい。

Through YouTube Inc.'s Web service, consumers view short videos more than 70 million times a day, ranging from clips of unicycling jugglers and aspiring musicians to vintage Bugs Bunny cartoons and World Cup soccer highlights recorded from TV. Users post more than 60,000 videos daily, with a limit of 10 minutes for most clips.

ユーザが一日にYouTube上のビデオを見る回数は7,000万回。アップされる映像の数は、一日に60,000。ユーザ数は2,000万人以上。

YouTube is a classic Silicon Valley garage-to-glory tale. Two friends, Chad Hurley and Steve Chen, started a company in a garage to tackle an issue they were grappling with personally: how to share home videos online.

創業者二人は友だち同士。CEOのChad Hurleyは29歳。技術のSteve Chenは27歳。Google創業者たちよりもさらに4-6歳くらい若い。記事後半に「"building something for a personal need that winds up being universally useful."」という言葉も出てくるが、個人的課題を解決したいという欲求からサービスや製品を開発したというのは、シリコンバレーでよくあるストーリー。二人は今はeBayの一部門となっているPayPal出身。YouTubeは、2005年2月に創業され、創業からまだ1年ちょっとしか経っていない。

YouTube's 29-year-old chief executive, Mr. Hurley, and its 27-year-old chief technology officer, Mr. Chen, see two big challenges. The first is to figure out how to make money. The second is to address concerns of copyright holders that many of their TV and movie clips, music videos and songs are available through YouTube without permission.

たいへんな勢いで世界を席捲し始めたYouTubeだが、(1)どうやって金儲けをするの? (2)著作権問題にどう対処するの? という二つの挑戦がある。

They're quietly building an online-ad system with Google-scale ambitions, which they intend to use to entice producers to post their best videos on YouTube. When the system rolls out later this year, YouTube will share revenue from ads that appear alongside some videos with the producers of those videos. Messrs. Hurley and Chen hope that Hollywood will come to see YouTube much as it now views network TV: a legitimate means of distributing content with revenue and promotional payoff.

Googleスケールの野心を持って(最近ベンチャーは皆こう言う)、広告ビジネスYouTubeに埋め込もうと開発が進んでいて年内にはそれがお目見えする。そうなればビジネスモデルが成立するだろうというのが彼らの公式見解だが、ことはそんなに簡単ではない、というのは創業者たちや投資家がいちばんよく知っているだろう。

By September, users were viewing YouTube videos more than a million times a day. Plotting strategy with Mr. Botha in October, the YouTube founders still believed their main business opportunity involved individuals sharing home videos. The next month, they announced Sequoia had injected $3.5 million to help finance the company.

YouTube2005年2月に創業され、当時二人が勤めていたeBay/PayPal幹部の目にとまり、11月にはセコイアが350万ドルを投資した。その後セコイアはさらに大金を突っ込んでいる(後述)。

大きな挑戦が二つあるとこの記事に書かれていたが、さらに大きな挑戦は、列強との競合とexit strategyデザインだろう。

Google and other YouTube competitors also stepped up their games. Google simplified its video-upload interface to match what YouTube had been offering. Yahoo this month upgraded its video service to allow consumers to submit videos directly to it, competing more squarely with YouTube.

Rumors have circulated in recent months that some major media companies have expressed interest in buying YouTube. In response Mr. Hurley says the company is not for sale. He says an initial public offering in the future is a possibility.

Google/Yahooとの競合、そして大手メディアからの「買収したい」との誘い。たとえばSNSの「FaceBook」は最近資金調達をしたが、「20億ドル以下では会社は売らない」と創業者たちが宣言しているというが、そう言ってどこまで突っ張り続けられるか、どんな数字で折り合いをつけるのか(Skypeが好例)、創業者に迷いが出てきたり、関係者の思惑が錯綜し始めるのはこれからである。

"We're at the fork in the road where Google was at maybe four or five years ago before they rolled out" their current ad model, says Mr. Chen.

創業者が言うとおり、YouTubeはまだGoogleAd Wordsを出す前の状況にある。

とりあえずこのWSJ記事はYouTube入門篇という感じ。

さて、少し前にTechCrunchで、YouTubeインフラを維持するコストについての言及があったので、今日はそれを紹介して終わりにしよう。

「Did YouTube Just Raise another $25 million?」

http://www.techcrunch.com/2006/04/30/did-youtube-just-raise-another-25-million/

There are two reasons why I think this rumor may be accurate. First of all, YouTube is on a roll: 35 million videos are watched daily and they have 13 million unique monthly visitors. Bandwidth costs for all of these videos adds up: Forbes reports that YouTube’s bandwidth fees are approaching $1 million per month. Since YouTube is revenue-free (they just started placing ads on the site in March), they need more than $11.5 million in capital to keep up with growth.

これは4月30日に書かれたものだが、2ヶ月後のWSJの「consumers view short videos more than 70 million times a day」の「7,000万回」に対して、4月の「3,500万」という数字は「35 million videos are watched daily」。若干定義は違うし、こういう数字はざっくりしたものであてにならないが、毎月毎月、利用は爆発的な伸びを示している。YouTubeはこれまでに全部で$25mil(約30億円)調達したらしいのだが、とにかくバンド幅へのコストが月に$1mil以上(月に1億円以上)かかっているという噂。4月30日の段階でこのコストだと、今はどうなっているのだろう。

本をいま書いていたら「YouTubeについてどう書くか迷う」と冒頭に書いたのは、YouTubeは、(1)インフラに莫大なコストがかかる賭け金の高い勝負であるにも関わらず、(2)ビジネスモデルリスクに加えて著作権関連リスク存在する、よって、いつまでこの調子でどんどん走っていけるのかに一抹の不安がよぎるからなのだ。

ナップスターになるか、グーグルになれるか。天と地の差がある。

そこに買収オファーという誘惑も入り込む。

創業者の「人としての格、スケールの大きさ」みたいなものが、結局はYouTubeがどこまで行けるかを規定するような気がする。

FUTANFUTAN 2006/06/28 05:43 ビジネスの世界はきびしいねって感じ

kogashinsukekogashinsuke 2006/06/28 08:56 初めまして。お忙しいのは承知なのですが、コメントを投稿します。 自分は慶応義塾大学法学部二年の古賀というものです。 授業で梅田さんの「ウェブ進化論」を紹介されて読みました。ウェブのこれからの時代について大変興味深い話をたくさん知ることができたのですが、「ウェブ進化論」はWeb開発者や経営者、Web熟練者の視点から書かれていて、僕たちのように時たま「あちら側」の世界をコンピューターという窓から覗くぐらいのことしかしない初心者の視点が欠けていて、僕たちにはWeb2.0の魅力やそれへの大きな変化の波を感じることは難しいです。このままではWeb2.0という言葉はよく聞くけれど実感をまるで感じることのできない現実から乖離した言葉になってしまいそうな気がします。そこで一緒に「ウェブ進化論」を読んだ学生四人で話し合い、「Web初心者が経験するWeb2.0」というコンセプトで勉強を始めることにしました。四人とも全くのWeb初心者という訳ではないのですけど(ちなみに他の三人は理工学部なのですが特に情報系の研究をしようと志しているわけではありません)、それでもWeb2.0には程遠いレベルにあります。最初は、ネットでWeb2.0について調べていて「Web2.0時代にユーザーが経験しておくべき10のこと」というブログを読んだのですが、初心者にはいまいち理解がしがたい内容だったので(初心者である、ということを体よく言い訳に使っているような気がしますが…)、最初に何ができるのだろうか、と考えてとりあえずはなにか「あちら側」の世界に対して働きかけてみようと思い立ち、梅田さんが「ウェブ進化論」で載せていたネットサービスを四人で積極的に利用してみるということから始めました。ただ四人がお互い好き勝手に利用しているだけでは意味がないと思い、四人で一つのブログを共有して情報共有の場にしてみることにしました。 特に人に見てもらうことを目的にはしてはいないのですが、もしかしたら自分達と同じように初心者でWeb2.0について興味を持っている人がいて、その人がもしかして偶然自分達のブログを見つけて僕らの情報を参考にしてくれたら幸いだな、と考えてブログという表現形態を選択しました。 こういう風にロングテールの部分の人に向けての情報発信というのは今までならコストなどの問題があって学生には不可能だったのに、ブログならコストもかからずに学生にも気軽にできてしまうわけで、これはつまりロングテールとロングテールを結びつけているということなのかな、と少しWeb2.0をかいま見ることができました。 やっぱり最初に行動を起こさなければ、そういう感覚を得ることもできなかったわけですし、これからもできる限りの範囲で「あちら側」に向けて働きかけをしたいと思います。そこで今日はどうしてコメントをしたか、というと僕たちのブログから梅田さんのブログにリンクを張りたいのですが、許可なくリンクというのは張ってもいいのでしょうか、それとも許可がいるのでしょうか?もしいるのならばリンクを張ってもよろしいでしょうか?
長々と拙い文でしかも今日の記事と全く関係のないコメントをして失礼しましたm(__)m

rettinrettin 2006/06/28 10:43 ↑トラックバック張るのに(リンクを張るのに)相手の許可が必要、だと考えるのがすでにWeb1.0的な考えだと思ったり。(それ以前か?)リンク張るのに許可が必要か否かはhttp://cruel.org/linkpolicy.html
ここを読むと面白いぞ、と思ったり。
というかエントリーに関係ない文章(しかも長文)はメールで送ろうよ、と思ったり。
でも同じ大学の先輩としては暖かい目で見てあげたい、と思ったり。

kogashinsukekogashinsuke 2006/06/29 06:53 申し訳ないです!!事前に調べておくべきでした。ただ、Webの世界のルールというのはあまりWebに触れていない人には本当に把握しづらいものです。そう感じている人はけっして少なくないはずです。 Web2.0は群衆の叡智を集めるものであるのに、コンピューターやネットに詳しい少数の人達のものになってしまうのではないでしょうか。そう強く感じました。