My Life Between Silicon Valley and Japan このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006-09-24

[] グーグルの特異性と強さ

昨夜はフランス人の友人夫婦と食事をしたあと、彼の家に寄って食後酒を飲みながらあれこれと話をした。フランス日本以上の学歴社会だが、彼はその学歴の頂点を極めたゆえ、フランス社会エスタブリッシュメント層を歩むある種のパスポートみたいなものを持っている。だが三十代半ばのあるとき、彼はそういう「予定された人生」が退屈になって、シリコンバレーに来たいと僕に相談してきた。「グーグルに入りたい」と彼は言った。グーグル上場する前のことだ。

彼はグーグルにはコネクションを持っていなかったが、某大手ネット企業とは、その欧州部門を通じて深いつながりを持っていたので、僕は彼に、まずはそのネット企業に入ることでビザを取ってシリコンバレーに来たらどうかと勧めた。こっちに来てしまえば、自然グーグルとのつながりも生まれるだろう。「どうしてもグーグル」と思えば、それから移ればいいじゃないの、と。

彼は僕のアドバイス通りに、そのネット企業と交渉し、ビザスポンサーさせて、二年前にシリコンバレーにやってきた。そしてまた退屈した。ネット企業も大手になるとぜんぜん面白くない、ダイナミズムがない、と彼は言う。そしてやっぱりグーグルへ、という気持ちになったらしい。

そしてつい最近になって「グーグルへの入社の面接」が始まり、来週早々にジョブオファーが出るか出ないか、というあたりに来ているのだと言う。さすがだなぁ、グーグルに入るのは難しいからな、と僕はその話を聞きながら思っていた。

でも昨夜は、自分の実力に深く揺るぎない自信を持つ彼の様子が、いつもと少し違った。グーグルに行くことに、最後の最後になって、かなり悩んでいるのだった。へぇーと驚いた。あの自信満々で鼻っ柱の強い彼がねぇと。

グーグルに入ると本当に裸にならなくちゃいけない、というようなことを彼は言った。

つまり毎日毎日、自分の裸の実力で勝負し続けるということだ。エリートであるということ、過去に積み上げてきた蓄積、そういう実績が社内のポジションによって確保されるのではなく、フラット組織の中で、そんな過去の実績などとは無縁に、そのときどきに限られた時間内でお前は何ができるのか、ということを問われ続けるのだろうと、そういうグーグルという会社の雰囲気を、彼は面接のプロセスから感じたらしい。彼が過去に一緒に仕事した人たちの中でも滅多にいないトップクラスの才能って感じの奴らばかりが、つまり頭のおそろしくいい連中ばかりが次々と出てきて、自分の才能をテストされているような感じの面接だ、と彼は言った。

そして入社したとしても、わかりやすい階層構造がないから、二年、三年とそういう激しい競争環境で働いても、「自分がこの仕事責任を持ってやった」というような、外部に向けてのわかりやすいトラックレコードが作りにくそうだ、と彼は言う。グーグルにいったん入ったあと、辞めて次のキャリア、というのがものすごく描きにくそうだ、グーグル以外の会社だったら、だいたいこれから先自分がどういうことになるのか、すぐに見えるんだけどね、と。彼は、そんなことを感じているらしい。

彼の話を聞きながら、たいしたもんだなグーグルは、と思った。

どこの会社でもらくらく仕事をこなしてすぐに退屈してしまう彼を、入社する前から、これほど緊張させるんだからなと。

優れた才能を集めるまでは誰でも考え付くんだが、そういう連中を遊ばせるのではなく、厳しい緊張を強いていくことが難しい。でもそれがグーグルの強さの源泉の一つなんだと思う。

僕は彼に言った。「グーグルという、普通会社とは何から何まで全く違う不思議会社を経験すること自身を楽しむ、という、そういう気持ちが君の中にあるかどうか。グーグルに行くか行かないか決めるときに、それがとても大切なんじゃないの」と。

劣 2006/09/24 07:57 未踏ソフトの書類を書きながら読みました。あらためて超えなきゃ行けない壁の大きさを感じた次第です。

yama_4423_shitayama_4423_shita 2006/09/24 08:29 マイクロソフトも似たような社風だと言われますが
それよりもグーグルのほうがもっと程度が上、ということでしょうか?

遠田幹雄遠田幹雄 2006/09/24 09:40 日経ビジネス9月25日号の「グーグルはなぜただなのか」を読んだあと、梅田さんの記事を見ました。歴史を切り拓く天才集団の組織には、組織としての文化というか独自能力が備わっているのでしょうね。

ざーさいざーさい 2006/09/24 14:19 「外部に向けてのわかりやすいトラックレコードが作りにくそう」ってグーグルに入社したということだけですごいのでは?

次の人生はグーグルで仕事できるぐらいになりたい、というか子供たちをグーグルで仕事できるぐらいに育てたい・・・

anti-monosanti-monos 2006/09/25 09:23 最近は多方面でグーグル礼賛が圧倒的なのですが、グーグルに死角があるとすれば何なのでしょうか。あるいは、無いとすれば相当長期にグーグル支配の構図は拡大していくのでしょうか?何かが一方向に流れていくことに危機感を感じる者として気になるところです。

utahiroutahiro 2006/10/02 04:01 業績も鰻登りで成長余力がありありと見えているGoogleのような企業であれば十分な応募者数も確保できるわけで。そのなかから、優秀な応募者を同じく優秀な社員が探し出すことはそんなに難しくないと感じます

むしろ驚くべきは、成長中(≒人手不足)にもかかわらず“能力的に優秀な人”という要件だけではなく“マインド的にも優秀な人”という要件を加えてスクリーニングしているとしたら非常にGoogleは優れているなーと思うのです

というのも、梅田さんのご友人のように普段は自信満々で能力も高いにもかかわらず能力ギャップを謙虚に捉えられる人って、ギャップを潔く認めて、それを埋める方向に動ける人なんですよね。それってすごい成長余力だなぁと思うわけです。

単に能力的に優秀なだけだと、ギャップに気が付いて折れてしまうか、プライドが邪魔してギャップを認められなかったりすることって多い。これって本当に優秀な人たちがコワークする環境では極めて不要なノイズですよね。

ちょっと極論かな?

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