2006年から2007年へ

ウェブ進化論」が思いがけなくベストセラーになって、僕にとっては予想外のことが起き続けた2006年であった。こういう機会も人生に一度のことだろうと、少し無理をしてでも、新しい経験を求めた。
ウェブ人間論」という形で本になった平野啓一郎さんをはじめ、さまざまな新しい出会いがあった。こうした対談や、たくさんのインタビューや取材を受けながら考えたり、ネット上に溢れた読者の感想を一万以上読むことで、これまで考えてきたことを検証し深める素晴らしい機会が得た。反省するところも多々あった。何かを自分が書いたという責任を土台に、その内容を考え続けるというのはいちばんいい勉強法である。
ただこういう「ウェブ進化論」祭りも、どこかで区切りをつけなくてはいけない。年の瀬には、そんなことをずっと考えていた。メリハリをつけないと人生は必ずマンネリ化してしまうので、陳腐化する前に自ら変化しなくてはいけない。
ただ「ウェブ進化論」「シリコンバレー精神」「ウェブ人間論」と続いてきた仕事は、僕が二十代後半から続けたきた思考の集大成みたいなものなので、そう簡単には区切りがつかない。
そこで区切りをつけるために、2007年は三冊、本を出すことにした。うち一冊は対談。二冊は書き下ろし。出版社ももう決まって準備を始めている。その三冊で、とりあえずこの仕事の一連の流れは「終わり」にしようと思う。
ウェブ進化論」を書き始めたのが2005年9月だから、「ちょうどそこから丸二年は、この一連のプロジェクトにかかりきりになった、その後はまた違うことを始めた」と後で振り返ることができるよう、2007年9月まではこの一連の仕事に没頭する。これまでやったことのなかった「山篭り一人合宿で、24時間、本を書くことに集中するというのを一週間とか二週間とか続ける」という手法も試す。でも、この三冊でとりあえず「終わり」。そのかわりその中に、僕が現在に至るまでに考えてきたこと、いま日本社会に向けて発信しておきたいと思うことは、全部詰める。出版企画・出版依頼は山のように来るのだが、同じ中身を薄めた本をたくさん出すのは嫌なので、そうすることに決めた。
それが終わったところで、ばしっとサバティカル(長期休暇)が取れればいちばん美しいのだが、まぁ色々と「浮世の義理」があって、そうもいかない。でも来年の今頃には、全く新しいプロジェクトを構想しはじめていたいと思う。