今日の短編(20) 小池昌代「タタド」(「新潮」07年6月号所収)

休暇は続く。今日は7月4日でアメリカはお休み。あいかわらず本を読んでばかりいる。
「タタド」は同時代の短編小説の中では群を抜いて面白かった。
文芸誌に載っている多くの短編小説を読むとき、まず最初の一ページを読んで、さらに読みたいと思うかどうかで、全部読むかを決める。
この「タタド」は、大きな事件が起こるわけでもなく、ただ中年から初老にかけての四人の男と女の室内劇が最後まで続くだけなのだが、なぜか次へ次へとページを繰りたくなった。静謐な感じと緊張感とが混合された文章空間の背後にとても強い力を感じた。ちなみに最後まで読んでもなぜタイトルが「タタド」なのかわからない。それも不思議だったが、読み終わってみるとどうでもよくなった。