大人社会のロールプレイングゲーム

とあるとき、とあるところでの、とある風景。


一身上の都合でもってその日で会社を退社される女性に、出張前の社長がわざわざ花束を買ってやってきた。
もうね、抱えたら顔が隠れるくらいの大きなピンクのバラの花束。


それを見たもうそのとたんに「ありがとうございます……、、、。」と、涙ぐむ女性。


その時、傍らで見ていた彼はというと、
「ああ、こういうときは泣いて見せるのだな」と富野語で独り言を心の中でつぶやいていたのだという。


さて、今日までの給与も退職金も手渡されたその女性。
「じゃーネ。」と定時を待たずにお帰りになられようとされました。
ふと見れば、その手には小さなかばんがひとつだけ。


「○○さん!花束は?」と言ったところ、振り向きざまに浮かべられた微妙な笑顔とともに吐かれたその台詞は――


「いらないワ、捨てといテ!」


うひょほキタコレ役割演技!!


退社数日前に、かるくボケた社長にいまさら疑われたお金がらみの件を根に持っていたのか、それともただ荷物になる嫌がっただけなのかわかりませんが、


……が、


あとに残ったのはやけに大きなピンクの花束。
そして、その包装紙4枚にもおよぶ豪華な包装を駆使して、きれいに三分割して持ち帰ることにしたその後、またしても事件は起こったのです。


元が大きかったので、分けたところでそれなりに見える花束を抱えて駅まで歩いていた「由緒正しい毒男」であるところの彼。


その途中で、着流しに下駄履きの見ず知らずの赤の他人のご老人とすれ違ったところ、なんと「きれいな花や、そら喜ばれるわ。」と声をかけられたというではありませんか。


ああ、この花束に流されて見えたあの涙って……。


――神様。
定時に帰る喜びに満ちた独身男性がピンクのバラの花束を抱えて歩いているという構図は、これほどまでに人に「幸福」をイメージさせるというのでしょうか。


世の中に真実ほど「残酷」なものはないということなのでしょうか?


恐ろしきもの、汝の名は女!!