その日のこと

早朝の5時頃だった。
又、例の激痛だ。胃の辺りに激しい痛みが来た。
これで3回目になる。
横になっても上を向いても痛みは止まらない。
立って水を飲んでみる。
立っても歩いても痛みは増すだけ・・・
う〜ん、う〜ん、いつの間にか胃を押さえてうなっている。
痛みは30分以上続く。
もうこれはダメだ。




私はいろいろ迷った末、Fさんに電話した。
今度そんなことがあったらすぐに電話するように、こんこんとと言われていたので・・・
以前胃が痛んだ話をした時のことだ。
Fさんは「すぐ行くから横になってて」と言い、それから本当にすぐにきてくれた。
車が着いたのは救急外来のあるN病院だった。




受付を済ませしばらく待っていると、すぐに呼ばれた。
女性の若い医師だった。
一通り事情を聞くとすぐに血液検査をして、しばらく待つよう言われた。
15分ほど待つと呼ばれ、「膵臓の炎症が激しい」と言われた。
「すぐに入院できますか?」
と聞かれた時、私はすぐに「はい、できます」と言った。
血液検査の結果を待つ間に、Fさんから「本当言うと、この際しばらく入院していろいろな検査をしてもらうといいのだけど」と言われていたので、ある程度の心の準備ができていたのだ。
一度帰って用意をしてくるのに2時間の猶予をもらった。





家に帰って準備を始める前に娘と姉妹に入院を知らせ、びっくりしている相手に「詳しいことはあとで」と言い、ボストンバッグに荷物を詰め始めた。
約束の時間の10分前には病院に着き、ひとまず救急病棟のベッドに落ち着いた。
まず一番に駆けつけてきたのは娘一家だった。
土曜日だったので朝ごはんもそこそこにやってきた。
そうしているうちに隣の妹夫婦、姉夫婦と次々に・・・
緊急時に的確な判断をしてこの病院に連れてきてくれたFさんに、皆がお礼を言ってくれた。
でも、すぐ近くに居るのにどうして自分に連絡しなかったのかと、姉はちょっと機嫌が悪かった。
妹夫婦は「今度何かあったら夜中でもいつでも起こしてよ」と、あっけらかんとしていたが・・・





まぁ、そんな感じで入院生活に入った私。
主治医の若い女性医師、Y先生はとっても可愛くてやさしい人。
「ごめんねぇ、急に入院になんかになっちゃって」と謝ってくれる。
まず、造影剤を入れてのCT検査から始まった。
CT検査の時も傍に居て「体が熱くなったり気分が悪くなったりしたらすぐに言ってくださいね」と言う。
造影剤を入れると時々そういう状態が起きたり、危険が伴う場合もあるらしい。
終わったら背中をやさしく撫でながら「お疲れさま。どうもなかった?」
と言う。
もう私はいっぺんにY先生のファンになった。
「全然どうもないですよ」とにっこり返事した。





CT検査が終わると一時的に入っていた救急病棟から、普通の病棟に替わった。
皆が荷物を持ち、私は車椅子で看護婦さんが移動させてくれる。
もうすっかり病人扱いだ。
移動の途中にJ子さんとちょうどばったり。
姉妹への電話の後、J子さんにだけは知らせておいたのだ。
着いた部屋は6人部屋。
後で知ったのだが、そこは産婦人科の部屋で、そこで私は多くの人間模様を見ることになる。