心に残ったお見舞い

短い入院生活だったが、たくさんのお見舞いをいただいた。


その一人に同窓会の県部会会長Mさんがいた。
年齢は5〜6歳上だが、身も心もふっくらとしたイメージの私の憧れの先輩だ。
ちょうどナースステーションに退院の挨拶をしてエレベータに乗った後、お見舞いに来てださったらしい。



翌日クール宅配便が届き、誰からだろうと思ってみると、Mさんからだ。
中には「ばら園」オードパルファムと書かれた香水のようなものと、小さな一口で食べられるゼリーの袋が入っていた。
そこには「そろそろお元気になられたかな?と病院に参りましたら、今エレベータに乗って退院されましたとのこと・・・」と続く達筆のカードも添えられている。
私はお見舞いらしからぬそのプレゼントがうれしくて、Mさんのやさしい顔を思い出しながらシュッシュと胸のあたりにふきかけた。
品のよい薔薇の香りがそのあたりに漂った。



忙しい時間をさいてお見舞いに来て下さり、退院したとわかるとすぐ宅配で送ってくださったこと、そして、「枕にでも・・・と思って邪魔にならない香りを探しました」とある言葉どおり、デパートで一生懸命選んでくださったのだなぁと思うと、とてもうれしかった。




そして、もう一つ。
最初の頃、入院を知った俳句仲間から次々メールが入り、お見舞いのことばと共に「お見舞いに伺っていいですか?」とよく書かれていた。
そんな時、今回の入院がどんなものになるのか想像もつかない時だったので、「お見舞いは固くご遠慮申し上げます。元気になったら句会で会いましょう」的なことを返事していた。



でも、だんだん日が経つにつれて案外体は楽だし、ご遠慮申し上げても来る人は来るし、来てくれたらやっぱりうれしいし・・・という日々が続いた。
そうなると、最初に固く固くと二回も書いてご遠慮申し上げた四人の仲間のことが気になり始めた。
そして、その仲間も含めた句会が間近に迫っていて、半分の人達は何回も来てくれているのに、その四人がきちんと約束を守って来ていないことが気になってきた。じっと寝ていると案外いろんなことが気になるものだ。



私は前代未聞のメールを四人に送った。
「お見舞いを固くご遠慮申し上げましたけど、このところ暇にしていますので、もしよろしければおいで下さいませ」と・・・
すると、そんなメールを送る方も送る方だが、受け取った方も受け取った方だ。
すぐに返事が続いて入ってきた。
「うわ〜、うれしい! 今日お伺いします」とか、「はい、喜んで〜♪」とか四人四様に・・・



そして、一人はすぐにやって来た。
「主人に『今から○○さんのお見舞いに行ってくる』って言ったら、『行ったらダメじゃなかったのか』と言うので、『それがお許しが出たのよ』と言ったら、主人ったら『それはよかった、よかった、早う行ってこい』だって」と、早速笑わせてくれた。



結局その日の内に二人と、翌日二人が来てくれた。
本当なら「なによ、勝手なことばかり言って・・・」と思われてもしようがないのに、四人ともニコニコしながら、本当にうれしそうな顔をしてやってきてくれた。それが何よりうれしかった。
こんな私の勝手でわがままな言動を、楽しむように許してくれる仲間達に囲まれて暮らしている幸せをしみじみ思った。




もう一つ、書いておきたい心に残ったお見舞いがある。
長くなったので、次に書くことにする。