とあるコンサート

三つ違いの妹は、小さい時から「ハキハキしている」「シャンシャンしている」とかよく言われていた。
今尚それは続いていて、ハキハキ、シャンシャンしている。
なので、何かの会があればよく司会とか挨拶とかを頼まれるが、そんな時はすぐ逃げ腰になる私と違って、妹は「はいはい」とすぐ引き受ける。


昨日は妹の同学年の人達で作っている会が主催するジャズコンサートがあるということで、私も誘われて友達と一緒に行った。
ある店を借り切って、前方にグランドピアノ、ベース、ドラムが設えられていた。
ピアニストはメジャーではないが、全国的にプロとして活躍している同窓生を招いているので、それなりにコンサートの雰囲気は盛り上がり、立ち見の人もたくさんいた。
私達は少し遅れて行ったが前の方の席に案内されて、良い席で見ることができた。


司会を頼まれていると言っていた妹はすでに舞台の真ん中に立ち、コンサートの始まりを告げた。
今まで見たことのない黒いドレスを着て、妹は落ち着いて挨拶をしていた。
第一部はピアノを中心としたジャズ演奏が8曲ほど続き、第二部は「ジャズセッション&フレンドタイム」と銘打っての、同級生達の歌あり踊りありの時間になった。


するとすると、そこでも妹は一番に歌い始めた。
曲は今ブレイク中の由紀さおりの「夜明けのスキャット」だ。
大丈夫だろうか?歌なんか全然練習していないと言っていたのに・・・
私は内心ハラハラしながら聞いていたのだが、なんのなんの妹はきれいな声でしっかり歌い上げた。
私は前から二番目の席で誰よりも先に大きな拍手を送った。妹はすこし照れたような、でもうれしそうな笑顔で私に手を振った。
もう一曲次に出てきた女性と英語の歌を楽しそうに歌った後、妹は引っ込んだ。
その後も次々プロ級の上手な歌が続き、私も友人もびっくりしながらも大いに楽しんだ。


最後まで妹は難なく司会を務め上げて、ジャズコンサートの夕べは終わった。
「三つ子の魂百まで」とはよく言ったものだわと友人と笑いながら、内心は「なかなかやるもんじゃ」と思いつつ、私は会場を後にした。