本多孝好Fine days―恋愛小説祥伝社,2003 Amazon


本多さんの恋愛小説。推理小説のような展開を見せるものもありましたが、謎解きはありませんでした。
不思議な転校生とリーダー的存在の少女と不思議な飛び降り自殺といい天気が混ざり合った表題作「FINE DAYS」親父から依頼された人探しが過去へとつながっていく「イエスタデイズ」妹におびえる主人公が人との接触を避ける青年と出会い、その青年に恋する女に出会い、その女の命を助けた男に出会い、青年の姉に出会い……となっていく「眠りのための暖かな場所」クリスマスプレゼントを買うだけのつもりが、老女に昔話を聞くことになる「シェード」 この四編です。
最初の「FINE DAYS」を読んでいて、物語への入りやすさがうまいなと思いました。「イエスタデイズ」は同じく本多さんの『MOMENT』(Amazon)のように、病院で死にそうな人(父親)から頼みごとを聞くという始まり方です。普通だったら知ることのできない過去と遭遇することで、第三者の視点での年月の重みを描いています。結末も最後まで書ききってしまわずにいていろんな想像が膨らんでしまいますよ。
「眠るための暖かな場所」は、さまざまな受け取り方があると思います。私の印象は、恋や愛も狂気の一種かなと。一途な思いはみな同じでも、その想いへのアプローチは実にさまざまなのだと思い知らされます。心の場面は、教授が詰め将棋をしているところです。
「シェード」は一番私の好みです。唯一分かりやすいハッピーエンドだからでしょうね(´・ω・)前の三編で重くなっていた心が最後の最後で軽くなりましたよ。
どの話も導入部分が鋭いです。一瞬にして物語りに引き込まれますから。