14とか15がパッと出てくると、まだまだ私の頭も働いてるなと思ったコミカルxSF


藤野千夜ルート225 (新潮文庫)』新潮社,2004   類似検索


芥川賞受賞後の第一作。私は藤野さんの本を手に取るのは初めてですが。まずは、単行本と文庫だと表紙から受けるイメージが全然違うよ、と。文庫の方が対象読者にあってるといえばあってるかな。……ってイラストは放浪息子志村貴子さんじゃないですか。
とある姉弟がパラレルワールドにいつの間にか飛んでしまう話。瞬く間にという言葉がぴったりです。姉・エリ子一人称で物語は進んでいくのですが、彼女の語り口に魅了されます。この本の一番の魅力はこの文体かと。弟・ダイゴやマッチョとの会話の切れ味も抜群です。
両親が不在だったり他の人たちも微妙に違っているちょっとズレた世界との向き合い方が姉と弟それぞれで、その辺も面白さの原因でしょう。軽妙な語り口のために(ほぼ)見知らぬ土地に連れて来られた悲壮感もあんまりありません。どちらか一人だけではなく姉弟二人が一緒だったのも心強かったんでしょうね。
本筋とは関係のないことですが、ハム太郎じゃなくてえびちゅが出てくるあたりにちょっとくすりとしました。また、やおいマニア・ミカワさんのキャラがパラレル世界に行く前からぶっ飛んでいます。「毎日一冊は新作のやおい本を読まないと、翌朝五時までには死ぬらしい」とかトルシエと十一人の恋人たち〜ねえ、フィリップ、ぼくをかわいい天使って呼んで」という同人誌をエリ子の要望により書いたりとすばらしい人格の持ち主です。本当に、どうでもいいところなんですが(笑)なんかこういう小物での雰囲気の出し方がうまいです。


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