ともぞさんのイラストもええなーダークxバトル


貴子潤一郎煉獄のエスクード RAINY DAY & DAY (富士見ファンタジア文庫)富士見書房,2005


ファンタジア長編小説大賞・大賞受賞者である貴子さんの新シリーズ一巻目。神父に育てられ普通の学校生活をしていた高校生の薫が、ローマ教皇が来日したのをきっかけに非日常の世界に足を踏み入れていく話。最初のプロローグを見ただけでドキドキしてしまうのは、期待補正がかかりすぎだろうか。
薫はレディ・キィと呼ばれる少女を守ってくれないかと頼まれます。もちろん、薫にとって裏の世界に入るのは初めてなので、徐々に真相を知ることになっていくのですが、その過程での葛藤がこの物語のテーマでしょう。命を狙われているレディ・キィの過去や覚悟、彼女をずっと守り続けている凄腕の美女レイニーの謎など読んでいて飽きません。デビュー作と比べると、トリッキーさが減った分純粋なファンタジーの楽しさを味わえます。
エスクードという組織とともに、魔族からレディ・キィを守ることになるのですが、組織の一員であり口が悪いパンクなギーエンのいい人っぷりも魅力ですな。薫が兄のように慕っていた真澄も、お調子者だけど頼りがいある感じで安心できるのですが、気持ちのすれ違いなどがあり一筋縄にはいきません。また、相手側の魔族も一枚岩ではなく様々な思惑が絡んでいるようで、なかなか簡単には話が進んでいきませんよ。それにしても、魔族の残虐さがやたらと強調されていて、読んでて暗い気分になることもありました。
そんなまともではない状況下、薫の最後の嘘など終盤は読んでてやるせなくなってくる。後味は悪くないけれど、薫に課された宿題は残っているような雰囲気だし、今後どうなるんだろうか。次巻からもレイニーと薫の二人がメインになってくるようなので、期待して来月を待ちましょう。
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