きっかけの本はなんだったのか、という問いかけミステリxミステリ


大崎梢晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編> (ミステリ・フロンティア)東京創元社,2006


副題にあるように前作『配達あかずきん』に続く、成風堂書店事件メモシリーズの第二弾。前回は主人公たちが勤めている本屋・成風堂を舞台に5つの謎が展開されていましたが、今回は出張編とあるように成風堂を飛び出します。短編ではなく長編。杏子と多絵のコンビが、一応の解決をみていた二十年以上前の作家殺人事件に挑みます。
物語の出だしは、杏子があるお客さんのアリバイの確認を求められるところから。ここは前回みたく本屋の知識を使った謎で、この辺りの小ネタがこのシリーズの一番の魅力ですよね。そして、他の本屋で働く友人から、勤務先で幽霊騒動が起こっているという手紙をもらい出張編はスタート。本屋の幽霊騒動ということで、なんとなく前作の雰囲気を思い出して油断していると、その地で昔起きてた作家殺人事件を絡めたお話になっていきます。空き巣や小火、事件時に紛失していたとされる幻の原稿なども関わってきますね。
杏子と多絵の出会いの話や「みにくい白鳥の子」の話、また地方書店の苦悩なども詰め込まれています。日本で本を一番売ってるのが書店ではなくコンビニって時点で、本屋で働いてた身であり、なにより本屋好きとしてはなんとなく悲しいですよ。次回作にも手をつけられているようで、短編集に戻るそうです。成風堂を舞台にした本屋ミステリなのかな。楽しみだ。
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