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城平京『名探偵に薔薇を (創元推理文庫)』東京創元社，1998

webの感想を読んで手にとりました。第八回鮎川哲也賞最終候補作。城平さんはスパイラルなどの原作者でもあります。二部構成になっており、名探偵である瀬川が二つの謎を解き明かします。語り口はミステリっぽくわりと固め。
「第一部　メルヘン小人地獄」「メルヘン小人地獄」という童話になぞらえた連続殺人事件が起きる話。非人道的な殺し方をされた被害者の娘・藤田鈴花の家庭教師をしていた三橋という大学生の視点で語られます。完全犯罪を成立させる夢の毒薬や強請屋などもこの事件に絡んできますよ。三橋の友人である瀬川が呼ばれてからは、裏の裏まで鮮やかに解き明かされます。三橋と瀬川の出会うきっかけと合わせて、名探偵としての辛さも多少でてきますね。
「第二部　毒杯パズル」第一部の主な舞台でもあった藤田宅で起きた毒殺事件が、瀬川の視点で描かれます。量を間違えると完璧な効果をはっきしない毒薬を、なぜうまく使わなかったのかが焦点に。瀬川が人間味を削るきっかけとなった過去と符号するためか、所々で気持ちのブレが見え隠れします。砂糖とミルクを入れなくなったのがちょいと寂しかった。
終盤の二転三転には驚きました。しかもそのたびに嫌な気持ちが加速していくのだから堪らない。瀬川のトラウマも明かされ、救いのない話は救いのないまま収束します。瀬川という名探偵の立場の苦悩と真摯に向き合い取り組まれていますね〜。第一部もオーソドックスにミステリしてて楽しかったですが、この物語の真骨頂はキャラにしても謎解きにしても第二部にあります。いや、読んでよかった。決して明るい話じゃないんだけど、期待以上に面白かったです。ミステリ好きは読んで損はないかと。
同著者作品感想・類似バッチ

この小説が好きな人にお勧めする③
①城平さん原作の漫画『スパイラル―推理の絆 (1) (ガンガンコミックス)』ミステリ風味の学園話。
②太田忠司さんの小説『霞田兄妹』シリーズ。素人探偵の苦悩が描かれる話。→一巻感想
③西澤保彦さんの『パズラー 謎と論理のエンタテイメント』論理で謎に迫る話。→感想