三月、七日。

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森橋ビンゴ三月、七日。 (ファミ通文庫)


自分のせいで父が死んだと思っている少女・七日と、母と自分を置いて去っていった父親を憎んでいる少年・三月の話。どちらも父親に関して思うところがあるようで。二人は同じような発作があったり名前がユニークだったりするなど、ある種運命的なものがありますが、途中まではなかなか二人が関わらないのでもどかしかったですよ。


生徒会長でもある三月は優等生を演じ続けるものの、ずけずけと自分に踏み込んでくるクラスメイトの真希に苦手意識を持ちます。さらには、「あんたって、役者とか向いてそうだよね」と真希にいいこちゃんのフリを見抜かれたりも。
そんな真希を初めとするクラスメイトや家庭教師としてやってきた女子大生の和泉さんなど、三月のモテっぷりには嫉妬しますね〜。
真希の話を除くと日常をそつなくこなしている三月も、大人になろうなろうとするあまり子どもにしか見られていない現状に不満を持っていたりと、高校生らしい部分もあります。……う〜ん、そういう少年らしい部分がいいんだろうか。永遠の少年がモテるんでしょうか。


広島弁がかわいい七日は、人間関係が希薄なところを買われ、現寮長の操から次の寮長をやらないかと持ちかけられます。いきなりの申し出に戸惑う七日ですが、一生懸命やろうと決意する辺りは心が温かくなってきましたね。
寮長をやっている関係から、七日は真希と仲良くなっていきます。三月視点での真希は謎の美少女くらいのイメージしかありませんでしたが、こなれたフリして実は一生懸命だったなど、惚れなきゃおかしいです。ギャップはよいですな。
真希のかわいさにばかり目がいっていたので、真希が三月に近づいていったきっかけはわりと早めに予想ついていたものの、物語の核心に迫るほうには気づけませんでしたよ。だもんで、びっくりするはめに。


七日が三月の家に行ってからの展開は辛かったです。三月の心の描写が多かったですが、辛さが身にしみてくるようですよ。自暴自棄になっていくのも納得できます。
もう、七日のことを傷つけたっていいじゃないかとうずうずしていましたが、三月が決意したことでも七日は痛みを感じていました。どんなに守ろう守ろうと思っても、すれ違って傷をつけてしまうのは避けられないので、バンバン傷をつけちゃえばいいのにと思うんですがね〜。
まあ、色々な考え方があると思います。そして、自分で言っといてなんですが、案外どっちでもいいかも。
なにより一番大事なのは、その人のために何かしてあげたいと決意することなんでしょう。そこができている二人には、幸せでいて欲しいと思います。


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