日傘のお兄さん

日傘のお兄さん  Amazon
癒し5恋愛3シリアス2
豊島ミホ日傘のお兄さん (新潮文庫)』新潮社,2007


deltazuluさんの感想を読んで手にとりました。でも、単行本で読んだのでちょいと違うところあるようです。書き下ろし三篇を含む短編集。
バイバイラジオスター」就活生のチセが、いい声をしていた元カレの信雄の声を思いもかけずラジオで聞く話。すぱっと世界に入らせてくれる導入部分が特に好みです。
はがきを出すことが出来ない気持ちと就職問題が絡まって最後の結末までいくのですが、切ないな〜。テープに刻み込まれてしまった思い出は、勝手に再生されちゃうんだろうな。ま、たまには聞くのもありですよねー。
すこやかなのぞみ」順風満帆に思えたカップルの思わぬ誤算の話。ちょっとした勘違いの話なんだけど、「いっぱいなんだもの」とか表現の仕方が私好み。
あわになる」死んでしまい幽霊となった女性が好きだった人の家に行く話。重みのある展開からコミカルに展開したかと思わせつつ、最後の表現とかけっこうグサッときますな。もう死んでるけど。
日傘のお兄さん」とっつきやすそうに見せつつ壁を作っている中学生のなっちゃんが、ロリコン犯罪者だとレッテルを貼られている、小さい頃やさしくしてくれた日傘のお兄さんと逃亡劇を始める話。
逃亡中に繰り広げられる、状況の割りにあまり真剣さを感じさせない会話も楽しいです。危機に追い詰められないと緊迫感もそれほどないし。そんな奇妙な雰囲気が最後まで漂っていて面白かったです
私も連れの女子中学生から「お兄さん、幼女萌えのくせに」とか言われつつの旅をしてみたいよ。
猫のように」定職にも就かず、自由気ままに生きてきた四十歳・重の話。猫みたいに生きることの大事さを学んだのかしらん。猫みたいに生きるのならば、甘えたいときや寂しいときはかわいい声で存分に鳴けばいいと思うのですよ。


豊島ミホさんの作品感想