階段途中のビッグ・ノイズ

階段途中のビッグ・ノイズ  Amazon
燃える5癒し3コミカル2
越谷オサム階段途中のビッグ・ノイズ幻冬舎,2006
越谷オサムさんの作品感想


真面目に部活動をしなかった先輩のとばっちりを受けて廃部が決定した、軽音楽部の唯一の部員・啓人を始めとした高校生の物語。seiitiさんのコメントを読んで手にとりました。


バンドを組もうとするのですが、そこからまず躓きます。啓人を手伝う幽霊部員・伸太郎はKISSを尊敬していまして……。私は中学時代に、KISSのファンはガチだから下手に話題にしないほうがいいよとか聞いた覚えがあるけれども、まさしくそんな感じ。熱狂的で一筋縄にはいきません。
伸太郎以外に、めちゃくちゃわがままだけれどもギターの腕はたしかな勇作や、好きな女の子に勘違いされたままなのは我慢できないと意気込む元吹奏楽部の徹なども登場しますが、一癖も二癖もある連中ばかり。
演奏技術にも問題ありありですし、現状に不満があったり過去の失敗に囚われていたりとメンタル的にも課題はいっぱいなまま、時間だけが過ぎてしまいます。


でも、私が一番好きなのはここから。なんだかんだやりつつも壁を乗り越えられなかったメンバーが、自分たちの手で扉を開けようとする場面です。ここからの上昇気流は半端なかったー。憧れずにはいられません。
明るい性格で啓人たちをさりげなく元気づける、啓人が片思いをしてる亜季とのやりとりも高校生活的にははずせません。色々と甘酸っぱいことしてくれますな。
また、軽音楽部の顧問・カトセンがいい味出しているんですよね。てか、カトセンに限らず先生たちもみんなかっこいいです。ロックしてますよ〜。
話の中でいくつか曲が登場するのですが、印象に残っているのはオフスプリングの「オール・アイ・ウォント」です。案の定、タイトルだけじゃ分からなかったけれども、「YA―YA―YA―YA―YA!」は頭から離れてませんでした。


本当に読んでいる間楽しませてくれました。ただ読み終わって残念だったのは、私が高校の文化祭でギターやらないかと誘われたときに、断ったことを思い出してしまったことです。今だったら絶対に断らないのに……。
なにはともあれ、私もお勧めです。seiitiさんにすすめてもらえてよかったですよ。


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