スロー・リーディング その9
- 作者: 橋本紡,ヤスダスズヒト
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2002/12
- メディア: 文庫
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☆「それは一年前のことだった。」「あたしが真琴ちゃんを好きになったのは。」
倒置法? 真琴ちゃんが好きなことが強調されています。
△「お父さんは(略)典型的なオヤジで、あたしとお姉ちゃんに嫌われていた。お母さんは(略)あたしとお姉ちゃんにからかわれていた。(略)普通の家庭と呼んでいいものだった」
いまどき(?)の娘さんらしく、客観的に家族を眺めているのが伺えます。この見方は以前からの未明の性格でしょうが、普通を過剰なまでに強調しているように見えるのは事故前後の比較もあるかも。
△「あたしは誰かに同情されることなんてない、平凡な女生徒のひとりだった」
同情されているシーンってあったっけ? と思ったけど、親戚の人たちからされていましたね。学校では普通なので、なんか意外でした。
△「あたしは根ががさつなせいか、品のよさというものに弱い」
真琴ちゃんの第一印象についての表現。お姉ちゃんへの憧れとか含んでいるのかしらん。
★「フランク・ザッパの邦題の怪しさ」「スティーブン・タイラーのゴムみたいに伸びる口」
真琴ちゃんとの共通の趣味・古い洋楽。ザッパの邦題については現在はほとんど修正されている模様。wikiに載っているものだけでも、『イリノイの浣腸強盗』『娘17売春盛り』『いまは納豆はいらない』『ア、いかん、風呂むせて脳わやや』……原題と違いすぎるだろ常考。スティーブン・タイラーはエアロスミスのボーカルさんですね。
△「その時の真琴ちゃんは精神的に不安定だったらしく」
真琴ちゃんを好きになった瞬間の話についての描写。「精神的に不安定」の書き方が気になったので、なにかの伏線だったかと思いましたが、なにもなかった……はず? 忘れてるだけかも。
★「あたしはちょっと慌てた。(略)泣いている真琴ちゃんがひどく切なく思えた」
これも多少、倒置的な用法でしょうか。「切なくみえた」ではない。泣いてる姿を見て胸がしめつけられていることが強調されています。
☆「髪はとてもいい匂いがした。(略)ほっそりとした柔らかそうな首筋があった。(略)真っ先に飛びこんできたのは、唇だった。(略)その時なのだ。あたしの中にはっきりとした欲望が生まれたのは。」
未明にとって真琴ちゃんの一番の魅力は、髪や首筋ではなく唇。
☆「真琴ちゃんは友達として見てくれる。(略)あたしは邪な目で彼女を捉えているのだ」
対比の表現。「見ている」ではなくて「捉えている」としていることからも、自分自身に恥ずかしさを感じつつも、自分の意思ではどうしようもないことが表されています。