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2009-01-12 【月】

弱者が弱者を叩く。得をするのは誰か。

僕はつい最近まで、派遣切りをされて生活支援等の保護を受けている層を「自業自得だ」などと言って叩いている人たちが主婦ニート学生、あるいは一部の高齢者といった「誰かや何かに依存しても十分暮らしていける環境に住む人たち」であって、彼らが安全圏からネットに向けて一方的に言葉を投げつけているんじゃないかな、っていう漠然としたイメージを抱いていた。特に、2ちゃんねるあたりでは「切られた派遣が生活苦になって俺たちメシウマ状態ww」とか言ってるニートや学生が多いのかな……って思っていた。

しかし、id:qushanxinさんが指摘する

ネット上の匿名言論とはいえ、その中でもYahoo!という最も公共性の高い(つまり学校でネットを習った人が最初に指定されるような)ポータルサイトで、「きちんとした文体」で書こうとする意思のある人が、明らかな経済弱者ルサンチマンを抱いていること。これは「所詮はネタだからマジメに受け取るな」というニュアンスを常に残している「2ちゃんねる」のヘイトスピーチとはやはり質が違う。むしろ「坂本政務次官こそ本当の国民の意思」といったような、ストレートに「マジメ」さを前面に出したものが多い。


「派遣切り」と正社員層 - 狂童日報

このことに関して考えたとき、そんな単純なもんでもねえな……と改めて思った。

そう考えると現在社会においてフラスとレーションを生み出している構造が見えてくるんじゃないかということ。どういう構造かといえば、実は低賃金正社員層が現代社会のなかで、最も被害者感情を抱えやすい階層かもしれないということである。

(中略)

正社員だが相対的に労働環境が劣悪であるという人々の苦しさの質は、これとは全く異なる。それは、「一人前の社会人」として扱われ、またそういう自覚を強くもちながら、生活は決して楽ではないことへのジレンマである。昇給もほとんどなく、税金社会保険などはしっかり払わされているだけではなく、非正規に転落することへの恐怖感が強いので、どんなに職場が嫌で待遇が悪くてもなかなか辞められない。ある意味で現代社会のなかで、最も忍耐を強いられている層であると言ってもいい。


「派遣切り」と正社員層 - 狂童日報

確かにそのとおりだ。正社員層は逃げられない立場にある。既に家庭を作り、妻と愛を育み、子を儲け、家族を守る立場にある人たちだっているだろう。昇給は抑えられ賞与も減額。それなのに保険料率は上がり、都道府県民税や市税といったものは増税されて徴収される。他にも、総支給額からは様々な控除があり、ようやく残った僅かな手取りで妻と子を養い、家族を守らなければならない。妻に懐を握られ、小遣いすらもままならない層と言っても良いだろう。かといって「もう嫌だ」と辞めてしまっては家族は路頭に迷うし、身の破滅を招く可能性すらある。誰もが能力があるわけではないし、努力ができるわけでもない。毎日の業務で精一杯なのだ。まさしく「忍耐」の層だろう。

特に90年代後半以降の「構造改革」のなかで、一般の正社員層に向けた政策というのは、たまに所得減税があるくらいでほとんど皆無であった。むしろ、累進課税率の引き下げや社会保険料の上昇など(給付は抑制)といったように、正社員中間層の社会福祉は「既得権層」というレッテルもあって、傾向的に掘り崩されて続けてきた。今でも麻生政権は「正社員にすれば企業補助金を出す」などという政策を打ち出しているように、「正社員」とはこれ以上の何の生活保障も必要がないほど安定したものだという幻想が、依然として根強く残っている。しかし、外食産業家電業界の正社員の労働環境が、非正規雇用以上に劣悪であることは、あちこちで報道されるようになっているし、実感としてもこれは疑い得ないところである。


「派遣切り」と正社員層 - 狂童日報

段落すべてを引用させていただくけれども、じゃあ「正社員」という定義そのものは一体何なのか、ということにもなってくる。正社員の中でも「既得権層」とはっきり言えるのは、一部の巨大な企業に勤める正社員だけじゃないのか。地方なんて、正社員と非正社員の差がほとんどない場合もある。僕の地元では、正社員なのに「月給15万社保加入なし賞与なし」とか普通にある。正社員がまともな待遇を受けることができる組織は、市役所と農協銀行くらいじゃないかな。地方同族零細企業からしてみれば、正社員と非正社員の違いなどは「働く時間が違うだけ」という認識でしかない。「従業員」という括りでしかないのだから。

話を戻す。「正社員と非正社員では仕事の内容が違う」というのはまさにそのとおりなんだけど、とはいえ外食産業や小売業界などでは「店長(+部門長)を除いて全員パートアルバイト」とか「店長も時給1,400円のフルタイムパート」なんてところもある。外食なんかは、正社員の店長以外全員アルバイトなのがほとんどじゃないかな。

「正社員と非正社員の仕事は内容が違う。独自裁量の範囲が違う」おかげで、マネジメントなどの店舗運営は必然的に店長一人の肩に掛かってくる。24時間365日運営の外食チェーン店の店舗運営を、一人の社員がすべて請け負うわけだから、業務の量はどんどん重くなってくるし、かといって自分の仕事をアルバイトやパートに振ることはできない。せいぜい、自分が不在の際の時間帯責任者に、単純作業の延長的なものをお願いするのが限界だ。もちろん、パートやアルバイトを自分の片腕に…なんていう悠長な育成なんてやってられない。自分のことだけで精一杯だからだ。例えば、本部へ送付する書類を作成しなきゃいけないのに、人手が足りないから自分が料理を作って出さねばならず書類が作れない。だから、今度の休日にやってしまおうとする。結果的に出勤する回数が増えて過労は蓄積されていく。そこへ、本部からの改善命令で詰められたり、突然の辞令(全国転勤)が飛んでくる。ちなみに、僕が前に勤めていた職場で昔外食チェーン店の店長をしていた人がいたのだけれども、彼は大卒後某外食チェーンに入社し2年後店長に。それからは、実際休んだのは年に3日くらいって言っていた。

外食産業のみならず、こうした労働環境下の「正社員」は数多くいるだろう。彼らは、果たして「何の生活保障も必要がないほど安定したもの」と言えるのだろうか。下手をすれば体のみならず精神までをも壊してしまう。そうした環境下でも必死になって自分の生活を守り、家族を守るために忍耐を続けている正社員層からしてみれば、派遣村に集まり施しを受けている人たちを見てフラストレーションが爆発するのもやむを得ないかもしれない。彼らがタバコを吸っているだけのことにすら噛み付いてしまうのも無理はない。

このように、低賃金正社員層は「一人前の社会人」であるはずなのにも関わらず、低い労働環境を強いられ、また「正社員だから」という理由で様々な社会的支援から「見捨てられてきた」階層であると言えるだろう。そのように「好きでもなく給料安い仕事に黙々とこなしながらマジメに税金や保険を頑張って払っている」という意識の強い正社員層からすれば、非正規雇用層が声を上げて国に支援を求めている姿に共感を抱けないのは、当然のことと言えるだろう。


「派遣切り」と正社員層 - 狂童日報

僕はこれを見て思うんだけど、例えば前述のような「非正規雇用以上に劣悪」な環境にいる正社員たちが、非正社員たちの行動に対して共感ではなく反感を抱くのも分かるんだけど、だったら自分たちも自社に蔓延る「非正規雇用以上に劣悪」な環境を少しでも良くしなければ、っていう行動を取らないといけないんじゃないかと思う。これは随分前の増田だが

強者に対してはやけにしおらしい弱者。「残業なんてしたくねえよ!」って言ってる、珍しく強者に対して刃向かってる弱者がいても、不思議な事に弱者がそれを片づけてくれる。「何いってんだ、そのくらいしょうがねえだろ、人生ってそういうもんだろ」「思い通りいかないのが人生なんだよ。大人になれよ」と弱者が弱者に我慢するように言う。

強者、ウハウハ。


http://anond.hatelabo.jp/20080918124218

今もそんな状態じゃないか?「非正規雇用以上に劣悪な環境にいる」連中が、元派遣社員が国に支援を求めたりしているのを見て「何いってんだ、そのくらいしょうがねえだろ、自己責任だろ、派遣社員ってそういうもんだろ」「思い通りいかないのが人生なんだよ。もっと努力しろよ」と我慢するように言う。叩く。おかげで、真の既得権層である大手マスコミ公務員宗教法人天下り団体などの一部特権層は痛いところから目を逸らされてウハウハ。マスコミなんかは特に操作しやすいよね。元派遣社員の姿を報じるだけで「非正規雇用以上に劣悪」な環境にいる正社員たちの矛先がそいつらに向くし、一方で「彼らは社会の歪の被害者なのだから、何とかしないと」という善意のアピールにも繋がるんだから。そして、あれだけ「霞ヶ関にメスを入れる。天下りをなくす」といって鼻息が荒かった渡辺喜美行革担当相も離党を表明しちゃった。本当に救われない。

もし仮に「非正規雇用以上に劣悪な環境にいる正社員層=恵まれない正社員層」が叩いているとするならば、年代はどうだろうか。僕は就職氷河期世代あたりが多いんじゃないかなと思う。あくまで僕個人の推察だが。彼らの世代は就職難で、新卒カードを切っても就職ができず、やむを得ず派遣などの非正規雇用に就いて煮え湯を飲まされてきた。彼らの中には、やがて必死に努力をして難関試験合格し正社員の切符を手に入れた人だっているだろう。しかし、企業内での年齢構成の割合が低い彼らへは、上から下から仕事がどんどん押し付けられる。パンクしそうになるくらいの負担の中で「せっかく正社員になったのに、サビ残ばっかでストレス溜まるし寝る暇もねえ。バブル期入社の連中は使えねえし、ゆとりはバカだしムカツク」という思いを抱いている連中も多いのではないだろうか。自分が膨大な時間をかけて努力をしてきたという自負もあるだろう。この努力が報われたいと思う気持ちもあるだろう。

そんな中、同世代で派遣だった連中が元派遣社員として報道され、国に対しての保護を要求するシーンを見たら一体どう思うだろう。「俺たちはこんなに血の滲む努力をして正社員になって毎日ストレス溜めて仕事してるのに、こいつらは派遣なんて甘えた環境にいた奴らだろ?クビになったら今度は国が保護しろだ?ふざけんな」って思う人も少なくないのではないか。実際「元派遣→今正社員」っていう人たちも、叩いている人たちの中に多いのかもしれない。更に言うと、彼らが支援を受ける施策に使われるお金は、自分たちが働いた中から納めている税金なのだから余計にたまったものではない。就職氷河期正社員層は老人たちの面倒だけではなく、今や同世代以下の弱者の面倒まで診なくてはならなくなったのだ。

そうであるならば、同じ世代が同じ世代を叩くという奇妙な構図になっている。就職氷河期世代くらいじゃない?こんなに複雑で団結力が皆無な世代って。団塊世代同士やバブル期世代同士なんて団結力が凄いのに、この世代だけギクシャクしてるし格差も大きい。このような同世代間の分断を一体誰が画策したんだろうね。

支えられる側から、支える側に戻ってもらいやすいのは、「働きたくても働けない人」かもしれません。あるいは例外的に能力やスキルはあるけれど働く気のない人もいるのかもしれないけれど。だから手をつけられるところから手をつけ、最終的に税金で支える人の数を最小にするには、まず「働きたくても働けない人」に対して働きかけた方が効果的かもしれません。


感情的に分からなくはないのだけれど、反感持って損するのは「やる気のある人」や「税金で人を支えている人」なんじゃないかな。「選別」に意味はあるのだろうか。 - どんなジレンマ

僕は「支えられる側から支える側」へと積極的に人を移していくべきだし、それによって支える側の負担を軽くしていくべきだと思っている。分子の数を減らして分母の数を多くしなければならない。ただでさえ、年が経つにつれて分子は勝手に増えていくものなのだから。支える側である分母の中には「恵まれない正社員層」も大勢いるわけだし、そういう人たちは今の環境のままではいつまで支えることができるか分からない。「支えられる側」へと転じていくかもしれない。だったら、支える側も自分たちの処遇を改善するよう働きかけていくべきだと思う。「仕事を選り好みすんな」という意見もあるけれど、とはいえ

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こんな風にネットで晒されているような企業に入社したいとは思わないでしょう?自分の身に置き換えて考えてみたら良いと思います。

「働きたくない人」に「働きたい気持ちを持ってもらう」仕組みも必要なんじゃないでしょうか。


感情的に分からなくはないのだけれど、反感持って損するのは「やる気のある人」や「税金で人を支えている人」なんじゃないかな。「選別」に意味はあるのだろうか。 - どんなジレンマ

この仕組みを作るためには、今働いている人たちの協力が絶対に必要だと思います。非正規雇用者へ反感を抱いたり、汚い言葉をぶつけて叩いている場合ではないと思います。でないと、今働いている人たちの負担はどんどん増すばかりだし、支えられている人たちの数も増えるばかり。支えられている人たちの数が増えれば増えるだけ、恵まれない正社員層への負担は重くなっていくだけです。あなたが膨大な時間をかけてきた努力が、「支えられる側」へと吸い取られるばかりです。いつまで経っても報われません。

一度思いっきり負担を重くしてやって、押しつぶして何もかもがリセットされた状態にしてしまえば良い(イデが発動してしまえば良い)…とまで考えたこともありました。そうすりゃ、何が悪かったのか、何を改善しなけりゃいけないのか、ってことがそれぞれ自ずと分かってくるだろう……って思いましたが、それはそれであまりに酷いことになりそうなので、瀬戸際で食い止めるような知恵を出し合ってください。もう「支える側」と「支えられる側」がいがみ合っている場合じゃないのです。全体で考えていかないといけないのです。

みんなが「まあ今は大変な時代だから、困ったときはお互い様だよねー」といいながら助け合えるような社会は、少なくとも「こういう事態になったのはあいつらのせいだ」と罵りあう社会よりもいい社会だろうなと思う。


派遣切り:自己責任論・世代闘争論を越えて

この言葉で締めくくりたい。

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派遣切り:自己責任論・世代闘争論を越えて

派遣村を叩いてるのは多分貧乏な下流の連中だよ

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