だりや荘 井上荒野「だりや荘」。
簡単に言えば不倫小説。主要登場人物全員が不倫してる。でも修羅場はないしドロドロ感ゼロ。どちらかというと「美しい」。それが怖い。
姉である椿さんは、発作が起きると言葉がでなくなるという持病を抱えているのだった。昔からそんな姉を腫れ物でも触るようにしてきた妹の杏は、自分の夫の迅人が姉と関係していることを知りつつも、何も言い出せない。そんな一見静かな、実は鬱々した状態の中に現れるアルバイトの翼君。杏に思いを寄せる可愛い青年。
ま、そんな話です。結末は、なんか中途半端。で、私としては、姉妹二人ともに迅人は捨てられ、赤ちゃんと美しい姉妹3人が仲睦まじく暮らす、という未来を想像しますわ。おお、なんか昼メロっぽい。
この話の、姉と妹両方に手を出している迅人という男。これがなかなか凄い奴です。杏と自分の愛は完全無欠と言い切り、椿のことは「拾った猫は最後まで面倒をみる」という。妹が姉との関係に気づくことは絶対にない、と思っているお気楽野郎。
なんなんですか、この男は一体。この馬鹿さ加減が愛らしくもあるわけだけれど。
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この本の中に出てくる料理が、ものすごく美味しそうなんですわ。クリスマスのフルーツケーキとか、鶏つくねの鍋とか、玉葱のパイとか、からし味噌とか、蕎麦とか、手打ちパスタとか。これ一冊で料理本作れそうだよ。

書店のレヴュー

交通事故で死んだ両親が残した信州のペンションを引き継ぐために、東京を引き払い移り住んだ妹夫婦。ペンションでは姉が一人で待っていた。◆登場人物は美しい姉妹の椿と杏。妹の夫である迅人、アルバイトの青年翼。椿と迅人がただならぬ関係であり、翼は杏に思いを寄せている。◆信州の四季折々の美しい風景と、食卓やペンションで振舞われる絶品の料理に魅了されつつも、その裏側に潜んでいる激しい感情が空恐ろしくなる。次第に終焉に近づくそれぞれの関係、後は読者の想像次第。05/11/14★★★★