「きりこについて」西加奈子。

きりこについて

きりこについて

きりこの物語です。面白かった。
『きりこは、ぶすである。』から始まり、どんなふうにぶすなのかの説明が延々と…もう笑うしかありませんでした。造作についてはとことん情け容赦なく不細工。
では、性格はいいのかというと全くそんなことはなく。何せ両親の愛情を浴びまくって生きてきたので自分はスペシャルに『可愛い』と思い込んでいるお姫様体質。しかも周囲のお子達を『きりこルール』で洗脳している。
そんなきりこの世界は11歳で崩壊。それから紆余曲折があって……


容れ物と中身の問題。大事なのはきりこがきりこであること。
そんなふうに思えるようになるまでの長い道のりは辛い…のに面白おかしく読めたのは、語り手がきりこの猫である『ラムセス2世』だから。合間の猫世界の話が悲壮感を緩和するのに丁度良かった。猫、最高。
その他の子らの『その後』も面白い。人生っていろいろですね。
大人になってもきりこのお姫様体質は相変わらずなのに、ポジティブに『リーダーシップ』と置き換えられているのが感慨深かったです。確かにこういう人も必要なんだよね。