「廃墟建築士」三崎亜記。

廃墟建築士

廃墟建築士

これはよかった!この何ともいえない奇妙奇天烈摩訶不思議な世界観は三崎さんの作品特有で、まったくもって心地よい。ありえない設定なのに、リアルに感じられるんだよね〜実に見事。
今回は、建築物をテーマにした4つの物語。
以下メモ。
『七階闘争』七階での事件が多発、結果市内の七階を撤去することが議会で決定した……。
問題の根幹は全く無視したまま「禁止してしまえばいい」と短絡的に考える風潮の比喩かと。突如嫌がらせに転じる近隣住民が恐ろしく、人の浅はかさが身にしみた。それにしても七階撤去って、この発想は一体全体どこからわいてくるんだろう…三崎さんは天才。
『廃墟建築士』廃墟の芸術性が一般的に認められている世界で偽装廃墟が発覚、社会問題に。廃墟建築士である主人公は、真摯な態度で廃墟に向き合う……。
いわずと知れた偽装問題ですが、何より廃墟の持つ美しさや癒し効果が現実のごとく感じられたのが素晴らしい。
『図書館』図書館を調教し、野生の図書館の魅力を公開……。
またこれも、すごい思いつき。ヒロインは「バスジャック」の「動物園」の方ですね。「夜の図書館イベント」はウチの近所でもやっているけど、これとは全然違うよ。←当たり前!
『蔵守』いつ現れるかわからない「略奪者」から蔵を守るため、蔵守は存在する……。
「なぜ」とか「どうして」とか、そんなことは関係なく、ただただひたすらに蔵を守り続ける姿勢に心打たれるものがあった。使命を全うするということはこんな感じなのだな。