「遠くの声に耳を済ませて」宮下奈都。

遠くの声に耳を澄ませて

遠くの声に耳を澄ませて

旅をテーマにした短編集。
派手に旅行をするわけでなく、遠くにいる人を想ったり、昔の旅の思い出に浸ったり、人生を旅にたとえたり、といった感じで、全12話。一つ一つが短いけど、じんわり味わい深く意外に濃い目な印象。色々堪能いたしました。


中盤に差し掛かったあたりで、登場人物がリンクしていることに気づきまして。連作にならないほどの、とてもささやかな係わり合いでも、人物を多角的に眺められたように感じました。あまり読み返しはしないほうだけど、今回は何度もページを後戻りして探したり、楽しめた。
カナタ的には、うなぎ研究家の濱岡さんが印象的。若い頃、お嬢様と駆け落ち未遂した濱岡さんの決心とその後の人生は…幸せに思っていたのかな…だったらいいなあ。元お嬢様の「どんな人生でもありだと思うのだ」という科白が好き。