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2007-11-23

[]日本の科学技術政策

はてなブックマーク > 京大の山中伸弥教授かっこよす - おこじょの日記

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/o-kojo2/20071121%23p1

話題になっているのですが、どうも全体が見えていないようなので余計なお世話を。


もともとヒトの受精卵はヒトなのかモノなのか、というような議論をやっているのは内閣府にある総合科学技術会議(総理大臣が議長)の、

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/

生命倫理専門調査会というところ。

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/lmain.html

ここで受精卵を研究に使いたい、という研究者やそれには一定の歯止めが必要、という人たちが(別に生命科学をやってる人がみんな研究推進派というわけではない)延々と議論をしています。

当然簡単な問題ではなく、その間に提出された資料も膨大なものになります。

一般の国民や報道機関の関心が高かったとも思えないのですが・・。

まず、アップされている資料に目を通して欲しいです。

どうすればいいのかわからない、というのが本当のところでしょうから、議論を官僚が誘導した、ということはないと思います。というか一定方向に誘導していたらこんなに延々とはやらないのでは?

個人的には鷲田 清一先生(京大出身で現大阪大学学長)の意見などは勉強になりました。


そしてES細胞を作りたいと思う研究者が書類を出す先は文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 生命倫理・安全対策室。

http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/

ここで個別の実験計画の審査をするわけです。


審査するのは先生方であって官僚ではないです。手続き上中央官僚が事務局をやっていますが、本来大学なり研究所の倫理審査委員会がきちんと対応できればそれで済むはずのことです。

しかし現実には「ヒトになる可能性のある受精卵を壊す」という重大な決定に責任を持てないという意見が多かったので国レベルに上がっていたのだと思います。研究者にとっては、ここでお墨付をもらうことで倫理問題については批判されずに済む、ということです。


さて話は変わって厚生労働省の科学研究費ですが、これは本来基礎科学の振興のためにあるのではなくて、国民の健康や福祉の向上に寄与する研究、のためのものです。わかりやすく言うと、Natureに何本も論文を出すことよりも、一人の命を救うことの方がよほど価値がある、ということです。基礎科学かつ医療系だと判断が難しいことはあるのではないでしょうか。そもそも厚生労働科研費の予算額は、全部併せて武田一社の研究開発費以下だったりするのですが。

科学技術の振興は文部科学省のテリトリーで、臨床や国民生活に近くなれば厚生労働省、という感じで役割分担している、と思います。



ついでにsivadさんのところで紹介されていたAAASの話

http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/pdf/btjjn0711.pdf

私もAAASの会員ですが・・・というかScienceを購読すると自動的に会員になってしまうのです。

多分そういう人は世界中に結構いて、そのぶんの会費もアメリカの科学技術振興のために使われているわけです。それでもNatureより安いのでScienceを読んでいます。非常にオープンなところで、例えばEurekAlertからの記事紹介も快く許可してくれただけではなく、困ったことがあったらいつでも相談してくれ、と言ってもらいました。AAASは基本的に科学技術全体の振興を目指しています。そのためには子どもたちへの教育も、学生の進路相談も積極的にやっています。もっともそういうことは他の分野別の学会でもやってますが。

そして米国の科学技術政策に具体的提言をしているのは全米科学アカデミー(NAS)のほう。こちらは会員による推薦がなければ会員になれない、割と敷居の高い学会です。ProNASを発行しているところ。日本だと日本学術会議みたいな感じでしょうか、注目度や活発さや政策提言能力には相当差があるような気がしますが。

他にもニューヨーク科学アカデミーの会員だったことがあります。これも雑誌を講読したらそうなりました。そんなふうに学術分野横断的な科学の「学会」活動が盛んなのがアメリカ、という印象です。

だからどうということはないですが・・日本も専門分野の違う科学者が、活発に意見を交し合う雰囲気があるといいのに、と思います。

とかちとかち 2007/11/26 10:07 私は文科省科研費も厚労省科研費も受給経験がある研究者ですが、上述の日記で紹介されている厚労省科研費に対する批判は至極もっともなものだと感じます。「厚生労働省の科学研究費は本来基礎科学の振興のためにあるのではなくて、国民の健康や福祉の向上に寄与する研究のためのもの」「科学技術の振興は文部科学省のテリトリーで、臨床や国民生活に近くなれば厚生労働省」というのは、理念としてはそのとおりですが、運用上は、ライフサイエンス分野の研究補助金としての2大補助金システムがあって、そのうち厚労省のものは1件あたりの金額が大きいのにとりわけ官僚的に運用されている、という状況です。
改善されるべきだとおもう点はたくさんあるのですが、まずは「内部向け(米国NIHでいうIntramural)」と「外部向け」をちゃんと分けてほしい。厚労省科研費はすべていわゆる「競争的研究資金」のような顔をしていますが、補助対象事業の多くは“行政上の配慮”によって厚労省の「ナショナルセンター」がうけとっており、公正な審査と競争にはなっていません。

uneyamauneyama 2007/11/26 18:56 コメントありがとうございます。
個人的想像ですが、厚生労働省は多分厚労科研費を競争的資金にはしたくなかったんじゃないでしょうか。
総合科学技術会議の競争的資金制度改革プロジェクトあたりが多分発端で、
http://www8.cao.go.jp/cstp/project/compe/index.html
読めばわかりますけど、アメリカ型を推し進めよう、みたいな雰囲気です。
結局上からの命令で厚労科研費も「競争的資金」にさせられた。でも現実問題としてインパクトファクターどころではないけれど必要な業務はあるので、運用でなんとかしていたんじゃないでしょうか?
役人が変わる変わらないだけの問題ではないと思います。
基本的に厚生労働省の科学技術政策は厚生科学審議会科学技術部会
http://www.mhlw.go.jp/shingi/kousei.html#kagaku
で検討されているわけですが、実際には総合科学技術会議からの要請に対応するのが精一杯のような感じです。国の審議会で「新健康フロンティア戦略 」だの「イノベーション25」だのを打ち上げるたびに対応しろと言われてその中で苦労してるのだと思います。それなりにいろいろ考えてはいて、それで「指定型」の創設とかをするわけですよね。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0529-4a.pdf

とかちさんがナショセン勤務ならFAが設置されているでしょう、そこでのPOなりPDなりの評価はどうですか?機関の見識を問われる重要な任務であると、皆さんから認識されていますか?結局研究者の評価は同僚研究者から評価されるかどうかが大きいわけですから、こういう業務を「雑用」などといって論文書いてたほうが偉い、というような価値観の人が多いと、うまくいくのは難しいと思います。

とかちとかち 2007/11/26 22:09 「アメリカ型」を志向しようとしているのは、現場の感想としてもよくわかるのですが、日本の現状は表層だけのアメリカ型に終わっているように感じます。米国NIHは長期計画として「ロードマップ」を発表し、各研究機関はそれに沿った研究の長期的方向性を打ち出すことを求められるような形になっています。個々の項目として重点的に取り組む課題としてはProgram announcementという枠組みもあります。日本では「ロードマップ」に相当するようなものが無く、そもそも長期的な方向性がはっきりしませんし、重点的に取り組むべき課題も脳研究、がん、自殺、、、と周期的に移りかわるのですが、研究費の総額が少ないので重点課題の移動に伴って去年まであった研究費が、科学的なメリットとは無関係に急にゼロになったりします。こうした傾向は厚労科研費に顕著な特徴で、文科省の科研費ではそこまでのことはないでしょう。
無論、厚労科研費はそういう行政行為としての側面があるのだ、というのは理解できない話ではないのですが、問題はそういう側面がきちんと説明されず、殆どが競争的研究費の運用上のさじ加減として行われてしまうところだと思います。文科省系だと、科研費とは別に、例えば科学技術振興調整費といった枠組みがあり、短期的な重点課題に対応するような感じがありますが、厚労科研費における運用上の対応というのは、何をやってるのかがわかりにくい。「科学的成果と無関係」「説明が無い」というあたりが不満の原因だろうと私は思います。
それと、「役人が変わる変わらないだけの問題ではない」というのは正論だと思いますが、役人も変わる必要があり、厚労省系は遅れているのは事実だと私は思います。ナショセンではない機関で専任のPOになった知り合いの愚痴として「自分のようなポジションは役人のアリバイ作りのために存在するに過ぎない」要するにPOみたいなポジションを作らねばならなくなったから作ったけど、結局文系の役人がお金の使い方を決める権限を手離さない、というのを聞いたことがあります。こういう役人はまだ多いみたいです。また、近年これだけ科研費の「不正使用」が叩かれていて、財務省も研究費を早く支給するよう「指導」しているのに、昨年度の厚労科研費のなかには、年がかわって2月や3月に研究者に支給されたものがあったりもします。「官僚的」「遅れている」という批判もこれではやむをえないでしょう。

uneyamauneyama 2007/11/27 18:54 不満があるのはわかります、支給だってこれでも今までよりは早くなってるんですから。
説明不足といいますが、本省側は多分説明しているつもりだと思うんです。例えばとかちさんのおっしゃることは「中長期的な厚生労働科学研究費のあり方 」についての専門委員会で言及されています。この委員会が作られますよ、ということから報告書の案などが科学技術部会に提出されています。例えばこんなのですが、科学技術部会の資料を見て下さい。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0314-15j.pdf
こういうものは全てナショセンの所長クラスには紙で渡ってるはずです(必要なら傍聴に行けばもらえると思います)。そこから先はどう説明されているのかはわかりませんけど。うちなどは伝言ゲームみたいに途中でわけがわからなくなるので元資料を厚生労働省サイトで見ることにしてます。いろいろ現場の問題はあるのですが、総合科学技術会議の資料と合わせて、全体の状況を追いかけておくことをお薦めします。