『サマー/タイム/トラベラー』(1)(2)を読んだ。

サマー/タイム/トラベラー』()()を読んだ。2巻で1つの作品だったのか。テキトーに2冊を手に取ってきてよかった。

というわけで、新城カズマ先生の作品をはじめて読みました。6年前の作品です。作品の要には触れます。

タイトルのスラッシュが分からない。何のためにあるのだろうか。ディレクトリでも示しているのかしら。ふーむ。「夏」という言葉のところに「時間」という言葉がどれくらい響くか。春、秋、冬と季節は他にあるけれども、確かに夏というのは時間について印象が強い季節かもしれん。少年らが学校外の思い出を作る時間として夏休みというのが大きな役割を果たしているという点がある。本作もそうだ。時間のあるときには「旅行」に行くのだ。子どもたちの家族旅行も夏が多いのではないか。知らない。旅行者、旅人か。

登場人物がみんな異様に切れる状態からスタートなので、チートみたいだった。涼と饗子の性能のよさというのは展開と結末である程度フォローされている。コージンと主人公のは何だろうね。ちょっと頭のいい高校生というのは何だろうな。たまたま高校生クイズ(第31回)をTVで眺めていた。あれはアレで賛否両論ありましょうけれども(クイズについてなり何なり)あれだけの知識を詰め込んだ彼等にしかみえないモンってのは確かにあるだろうと思えるし、それはそれでありでしょう。いやはや。しかし、本作品の高校生というのは、こんなもんじゃない。どちらかと言えばfacebookの経緯(参照)でも読んでいる感覚に似ている。行動力だ。

まぁいいか。で、悠有の能力開発と商店街の事件が絡まるのやら何やら。商店街の事件が背面にあって、これは最後まで前面化されるということは無いのだけれど、尚更に、身近な人物に犯人が被さるというのは、唐突などではないけれど、どうでもいいかなという風情になった。恐らく、などというと偉そうなのだが、辺里地区を舞台にしたまま日本の縮図を書こうという意図はあるんじゃないのかしら。これね、信州大学が登場しますので、一応、長野県が下地にありそうだというのは考えて間違いはない。2度ほど訪れたことはあるけれど、地元民でもないので深追いはできない。どうでもいいか。

いやね、ジュブナイルらしく恋愛の模様みたいなのもある。しかし、これがエゲツナイですね。言うまでもない状態しかない。敢えて考えれば、饗子は割とマジでタクトに興味があったのだと思うよね。高圧的な女の子である。『邪宗門』(高橋和巳)の阿礼を追想してしまう。しかし阿礼ほどではないかな。いい線なのだがな。しかしこういう女性の描写というものの類は少ないので新鮮だな。読書量が少ないといえばそうだけれども。

ただまぁ、悠有の人間性というのが謎のままであって、なんというのか切ないな。主人公と悠有の関係からしかみえないものがあろうにも、時を駆けてしまう少女の心根というのはどんなものかね。おばさんも同様にタイムトラベラーで「夏の扉」を設計した人物と一緒に消えた彼女なのかしらっけ。悠有の兄様が何とかという病気であって、多重人格的にさまざまな架空のような体験を繰り返すという経緯があって、それが悠有の決心にも確かな影響を与えているというのだろうけれど、ふーむ、しかし片方だけ歳をとったという状況での友人にサラっと面会できるのかね。あるいは悠有は卓人を如何に捉えていたのか。こうなると饗子など可愛らしいくらいで、悠有のほうが怖い。

重大な事件というのは何なのだ。たいへんに個人的なものか。