David Bowie "A Reality Tour"

David Bowie (デヴィッド・ボウイ)はアルバム"Reality"発売後にワールドツアーを敢行し、その様子はCDとDVDに記録されている。このツアー中ドイツのハンブルク動脈瘤の痛みを訴え、血管形成の手術が必要となったため、残りの日程を全てキャンセルせざるをえなくなった。この件から次のアルバム"The Next Day"が発表された2013年まで、約10年の間音楽活動から遠ざかり新曲やライブツアーは(単発的なものはあったようだが)行われていない。"The Next Day"の発表後にもライブは行われておらず、今年度遺作となった"Blackstar"発売直後亡くなっているので、"Reality Tour"が最後の公式ライブになってしまったということになる。

Bowieを聞き始めたのは、1980年の"Scary Monsters"からで、それから"Let's Dance" (1983), "Tonight"(1984), "Never Let Me Down"(1987)、バンドのメンバーというかプロジェクトとして始まったTin Machine (1989)のファースト("Tin Machine")まで聞き続けた。1991年にTin Machineのセカンド("Tin Machine Ⅱ")が出て、その後"Black Tie White Noise"(1993), "The Buddha of Subburbia"(1993)は聞いていない。次の作品"Outside"はBrian Eno (ブライアン・イーノ)が参加しているということもあって購入して聞いた。ベルリン3部作で共演したEnoをプロデューサーに迎えたコンセプトアルバムで、シングルカットされた"Hearts Filthy Lesson"はDavid Fincher (デヴィッド・フィンチャー)監督、Brad Pitt (ブラッド・ピット)主演の映画"Seven"(『セブン』)のエンディング・テーマとして使われており、Nine Inch NailsのTrent Reznor (トレント・レズナー)によるリミックスもある。このアルバム、"Strangers When We Meet"はよく聞いたが、陰鬱な雰囲気の曲が多く、通して聞くことはあまりなかったような気がする。

"Low"(1977)や"Heroes"(1977)は時々聞いていたが、2013年に"The Next Day"がリリースされるまで、Bowieの新作は全く聞いておらず、かなり長い間遠ざかっていたのだなと、今さらながら奇妙な気がしている。

落部分を埋めるために、Bowieが亡くなった後で、90年代後半からゼロ年代初頭の作品や、"Low"以前の作品を聞き始めている。具体的にいうと"Hours"(1999), "Heathen"(2002),"Reality"(2003),
"Diamond Dogs"(1973), "Young Americans"(1974)あたりのアルバムで、遺作となった"Blackstar"のような切迫感はなくスタイルも違っているが、それぞれに固有の魅力があり、聞き返す度に新たな発見がある。

"Blackstar"を製作中に既に闘病中であり、本人も死が迫りくることを自覚してレコーディングに取り組んでいたことは、死後に明らかにされたわけであるが、その事実を差し置いても、作品に漲る強度とその特異性が一聴した時から明白に感じられたことは否定できない。

David Bowie Official Website: http://www.davidbowie.com/