久しぶりな書籍紹介


海外テレビドラマ『パシフィック』の録画ディスクをいただいてほくほく。神沢です。




本日は久々の書籍紹介。
ですが、ちょっと変わり種というところで。
仏教関連です。
まずは前置きとして、以前からお薦めしている一冊。



20110407011907
もしリアルパンクロッカーが仏門に入ったら 架神恭介 イカロス出版


すごく読みやすいですし、わかりやすいのです。
コレで基礎的なところはほとんどわかるといってもいいくらいでして。
その上でもうちょっと知ってみたいなあと思ったら、


20110407011642
わかる仏教史 宮本啓一 春秋社


『わかる』は『パンクロッカー』の内容がアタマに入っていたらすらすらいけます。難易度は高めですが、『パンクロッカー』と内容はほぼ同じ。より詳しく書かれているモノと思っていただければ。



この二冊をおすすめするのは理由がありまして。


二冊とも『布教』を前提としていないのですね。
宗教に関する本って、筆者の方は大概どこかの宗派の方だったりして、
少なからずその宗派の宣伝内容になってしまっているモノが多いのです。
この二冊は『学術的に仏教を読み解く』という見地に徹底していまして、
『信仰』を説いた本ではないのです。
……ここ、ものすごく大事なところです。



たとえば、解説されていることのひとつに
天上天下唯我独尊』
これ、
どういう言葉なのかというと、
お釈迦様が生まれた時、
生まれてすぐ歩き出して、
7歩の後、右手で空、左手で地面を指さして言ったのだとか。
意味は
『この世の中で俺が一番エライ』


まあ、
生まれてきたばかりのクセしてずいぶん鼻持ちならないことを言いますよね。
実は仏教関係者の中でもこのネタはどうやって解釈しよう……と悩むどころの様子です。


『パンクロッカー』はこのコトを否定します。
『生まれたばかりの赤子が歩いたり話したりするワケがありません』
ですが、
この言葉の意味はあとで解説されます。
お釈迦様こと、ゴータマ・シッタルダさんは確かに仏教の開祖ですが、
実際には当時どこにでもいる、普通の悩める青少年だったのです。
(とある王族の一人息子と言うことで、生まれ育ちにちょっとは違いがあったかも知れませんが)
没後の後世でどんどん神格化されていってしまいまして、
「我らが仏教の開祖であるお釈迦様はたいそうすごかったのだろう」
という推測から、
生まれてすぐに歩いたとかしゃべったなどのお話が生まれます。
ちなみに仏像が金色なのも、
この『後世の神格化』によるモノです。
いつどこから出てきたのはちょっと定かではない(勉強不足です、スイマセン)のですが、
「俺たち仏教の開祖であるお釈迦様はすごかったんだぜ! 他の人とは違うぜ!」
という『神格化』から、
「お釈迦様の体は金色だったんだ!」
という話が生まれています。
……金色の人間って、それもう人間じゃないですよね。
そんなこんなで、
後世の神格化によるお釈迦様の特徴は『三十六相』と呼ばれて全部で三十六個の特徴があるのですが、
全部組み合わせるとドラクエのラスボスもびっくりなクリーチャーになるそうです。
……ちょっと見てみたいですね。


実際にこの事実をお釈迦様本人に伝えたら、
「ああ、うん。ならそれでいいんじゃないかな」
とは言いそうですが。
(リアルなゴータマさんって、そういう人です)


ここでひとつ。
『わかる』も『パンクロッカー』も、
学術的に仏教を読み解いたモノです。
信仰として仏教を読み解いたモノではありません。
信仰と史実は別のモノなんだと捉えてください。


……自分が信仰のお話をするなら最初から自分の宗派のお話をしますですよ。
「いいぜぇー、真言宗超いいぜぇー、空海さんまだ生きてるんだぜぇー」
わあ、
なんとうさんくさいブログなのでしょう。
えろげー系テキストサイトと名乗っておいてえろげーの話を全然しないこの場も相応にうさんくさくはありますが。





それからどうした。



さて本題。



仏教ネタの本というと、
どうしても敷居が高いですよねえ。
どうしてもこう、
『かしこまってござる』で、
正座して読まなければならないんじゃないか、
そんな気分にすらなります。


もうちょっと楽に、
こう、
気軽にぱらぱらっと読める品があれば。




はい、
たいへんお待たせしました。
前置きが長かったですが、
本日の書籍紹介です。



20110707204703
坊主DAYS 杜康潤 新書館 ウイングスコミックス


20110707204714
お寺とみんなの毎日 杜康潤 新書館 ウイングスコミックス



これが、
こーれーが、
おもしろい!




いわゆるエッセイ・コミックですね。
作者の杜康潤(とこうじゅん)さんって、
お寺生まれお寺育ちの方なんですよ。
お兄さんが実家のお寺を継いでまして、
ご実家のお話です。


内容は簡単に言うところの、
「知られざるお寺の世界」


どんな世界でもそうですが(あれ? 最近この言い回し使いましたよね?)
自分が知らない世界の話というのはおもしろいモノでして。



杜康潤さん、
幼い頃にお父さんを亡くしています。
先代の住職さんですね。


ここでいきなり大ピンチです。
お寺ってね、
住職さんがいるから、
その住職の家族もそのお寺に住むことができるのです。
お寺の居住区は『庫裏(くり)』と呼ばれます。
お寺を管理する住職がいなくなれば、
その家族は庫裏から出て行かなければならない。
お寺って個人のモノではなく、
公共のモノなんです。
「お疲れさまでしたー!」そんな具合で。


杜康潤さんのお兄さんは当時中学二年生だったのですが、
お父さん(先代住職)のお弟子さんという立場にいたので、
人生において究極の選択を突きつけられます。
「お前どうする? この寺 継ぐか?」
中学二年生といえば十四歳です。
エヴァのシンジ君と同い年です。
病床のアスカの半裸見てセルフバーニングして
「最低だ……」とか悩んで相応の年頃です。


継ぐ、と、お兄さんは。


お母さんがその決意に号泣したりもあって、
なかなかに湿っぽいシーンもあったりするのですが、
「ねえ、幸せ?」
と問う杜康潤さんに対してお兄さんは、
「見てわかるだろ?」
本棚にいっぱいの仏教書の中で読書するお兄さん。


進んだ仏教系の大学でちゃっかりお嫁さんを見つけてきていたり、晩酌のビールが大好きだったりするお兄さんです。


ああ、
こういうお坊さんになら自分の引導を渡して欲しいなあ、
そう思える一冊、いや二冊です。



なかなかに興味深くておもしろいので、
これはぜひにでも、というと大袈裟かも知れませんが、
(大袈裟というのも語源探すと……まあそれはいいか)





20110707204703
坊主DAYS 杜康潤 新書館 ウイングスコミックス


20110707204714
お寺とみんなの毎日 杜康潤 新書館 ウイングスコミックス



坊主DAYS
お寺とみんなの毎日



読んで損なしな一品です。
いかがでしょうか、
おすすめです。




うん。