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映画は時代を映す鏡

2017-09-09

「散歩する侵略者」

f:id:uramado59:20170909202617j:image:w360:right謎の侵略者に体を乗っ取られた夫(松田龍平)と翻弄される妻(長澤まさみ)、他の侵略者と同行取材することとなったジャーナリスト長谷川博己)の3人を視点に異様な日常を描く。

前川知大による劇団イキウメの人気舞台を「クリーピー 偽りの隣人」の黒沢清監督が映画化。
私は劇団も劇作家も知らないのだが、原作が舞台劇だけあって生身の人間が主役。
映画化されても大規模なCGや異形な宇宙人が登場することない。
そう、あくまで人間のお話。

家族以外は他人。他人と共存する日常の生活。
そうわかってはいるのだが、この映画で改めて「他人」を意識させられ、侵略者が奪う「愛」という概念の重大さに気づかされる。
侵略者・宇宙人の題材を借りて、日常に潜む他人への恐怖や孤独を鋭く描く黒沢清監督らしい作品となっている。

2017-08-20

「スパイダーマン:ホームカミング」

f:id:uramado59:20170820212724j:image:w360:right面白い。良くできた青春映画でもある。

マーベルの人気ヒーローが活躍する新シリーズの本作は、ピーター・パーカー(トム・ホランド)が15歳の高校生。

アイアンマンロバート・ダウニー・Jr)の指導でヒーローへと成長していく姿と、友情・恋愛・部活動などで四苦八苦する高校生の学園ドラマが並行して描かれる。
若いパーカーの魅力があふれていて、新鮮。
敵役(マイケル・キートン)も、悪に徹していない新鮮な設定。

もとより、シリーズの核であるビルからビルへと飛翔する爽快感、次々起こるアクション場面の迫力は健在。
コミカルな要素もあって、アメリカン・コミックの世界満開。

われら老人は、とかく”今どきの若い者は”と言ってしまうが、この映画観ていると、これからは若者に時代を託したい”頑張れ!”と応援したくなるから不思議。

監督はこちらも若手ジョン・ワッツ
次回作も期待できそうだ。

2017-08-11

テレビドラマ「ツイン・ピークス The Return」が凄い

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あの米テレビドラマ「ツイン・ピークス」が、25年ぶりに新シーズンとして復活。

私は25年前このドラマに、はまった。
映画版「ツイン・ピークス/ローラ・パーマー 最期の7日間」も観たし、オリジナル・サウンドトラック CDも購入した(睡眠導入に抜群で、いつもベッドサイドで聴きながら心地よく眠っていた)。
だから、この新作は嬉しい。
旧シーズン同様デヴィッド・リンチが監督を務める。しかも全話監督するというのだから文句なし。
音楽も前作同様、アンジェロ・バダラメンティが担当。

WOWOWで1話、2話を観た。
25年後のツインピークスが舞台。
おなじみグレート・ノーザン・ホテルや保安官事務所の場所ばかりでなく、多くのキャラクターが前作から俳優を変えずに25年後の姿で登場。
赤いカーテン裏の部屋、小人、巨人や死んだはずのローラ、謎の丸太おばさん、シュールな白い馬まで登場すれば、もうリンチ・ワールド全開。

今回は新たに、NYが舞台のガラスの見張り、サウスダコタ猟奇殺人事件が加わり、すべてが不可解で予測困難。
前作も最後まで不可解だった。
これこそがリンチ・ワールドの神髄で、現代アートの楽しみ方と同じような感覚で楽しむのがよい。

今夜の3話放映が、また楽しみ。

2017-07-23

「セールスマン」

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トランプ政権の入国禁止大統領令に抗議して、監督と主演女優が今年のアカデミー賞授賞式をボイコットしたことで話題となり、見事にアカデミー賞外国語映画賞を獲得した作品。
しかも二度目の受賞というイランのアスガー・ファルハディ監督最新作だということで、どんな気骨ある監督なのか確かめに映画館へ観に行く。

映画は、主人公夫婦が住んでいる共同住宅から突然避難するという異様な事態からはじまる。その短い場面のなかで建築工事、介護問題、人々の日常の暮らしぶりが描かれていく。
夫婦は新居に引っ越すが、そこで妻が侵入者から襲われる事件が発生。
事件を表沙汰にしたくない妻は警察への通報を拒み、夫はひとり密かに犯人を捜し始める。
夫婦の心理が微妙に変化していく緊張感ある描写が映画の核だ。

その夫婦の葛藤を、劇中劇セールスマンの死」の夫婦とダブらせる。
アーサー・ミラーによる戯曲セールスマンの死は、私は未見なるも、映画のなかで戯曲の要旨が的確に紹介される。
時代の変化に取り残された老セールスマンが死んでも家の借金を返すことができただけという妻の嘆き。
急激な時代の変化に翻弄される人々。

そこに現代イラン社会とイスラム社会が浮き上がってくる。
身体に深い傷を負った妻は、いまだに虐げられたイスラム女性たちの姿がある。
犯人に対する夫の復讐とおもえる行動は、中学生時代に観て宗教の違いがあることが強烈に刻まれた復讐劇の映画「眼には眼を」と同じ感覚で画面に吸い込まれた。

息詰まる描写で”現代”を見事に切り取った映画。
アカデミー会員の眼力にも敬意。

2017-07-12

「ハクソー・リッジ」

f:id:uramado59:20170712210443j:image:w360:rightブレイブハート」のメル・ギブソン10年ぶりの監督作で、本年度アカデミー賞作品賞など6部門にノミネートされた。

"ハクソー・リッジ"とは、"のこぎり崖"。
そこは、第2次世界大戦で壮絶な戦いが繰り広げられ、多くの死者を出した沖縄の前田高地を指す。
その沖縄戦で多くの負傷兵の命を救い、アメリカ史上初めて非武装兵士として名誉勲章を受けたデズモンド・T・ドスの奇跡のような実話を映画化。

厳格な宗派クリスチャンであるドス(アンドリュー・ガーフィールド)は武器をもたず、負傷した味方を助ける兵務=衛生兵を志願する。
武器をもたず戦場の前線に出るなど、日本の軍隊の中では絶対にあり得ないことだ。
信念をまげないドスの姿に強烈なショックを受けた。
”衝撃作”とは、こういう映画をいうのだろう。本年必見の映画。

クリント・イーストウッド監督「硫黄島からの手紙」によって、硫黄島の戦いがリアルに描かれように、今回はメル・ギブソン監督により沖縄戦の熾烈な戦いを目の当たりにすることとなった。