ブラック・スワン


「わたしは死なないよ」女は思いつめた表情で語りだした。「死んだら残された人たちに影響を与えてしまうでしょう?だから、わたしは消えてしまいたいの。わかるかな?」私は女の真っ黒な瞳からゆっくり視線を外すと、息を吐き出しながら「なるほど」と呟いた。こんな時に話を合わせて「キミはいてもいいんだよ」と言うことができるうちは、まだ大丈夫だ。しかし、年中こんなゴスロリポエムみたいな話を聞かされていたら、こっちの神経がまいってしまう。私は後先考えずに狸寝入りを決め込んだのだった。『ブラック・スワン』はナタリーポートマンが踊りすぎて頭がおかしくなる映画でした。ナタリーポートマンは最初から最後までずっと思いつめており、誰かが「もう走らなくていいんだよ」って言ってやらなければ、とりかえしのつかないことになりそうな危うさを身にまとっていました。そして、あんのじょう死にました。ナタリーポートマンは死にましたが、結果的に思いつめすぎていて笑えるくらいにまでなっていたので、見ているぶんには面白かったです。