西崎まりのに花束を。-浦嶋嶺至、朋友への手紙-

2007-02-02 第一章 出逢い(9)

[]サイバーコミックスとゼネプロ時代(その4)

Iくんは僕が出逢った中でいちばん仕事をしない作家だった。

最近は少なくなったのかもしれない。よその編集部でもカンヅメはあったが、ゼネプロではほぼ常態と化していた。とはいえ食事もぜんぶ編集部持ち。トーン代やアシ代も。ガイナのアニメ班用の寝部屋も近隣のマンションにあって、カンヅメとはいえ、環境は相当恵まれていた。

Iくんはそれをカサに着て原稿を延ばし延ばしにしている。僕にはそんな印象しか見受けられなかった。

ここで彼のことを"先生"とは呼ばずあえて「くん」付けで呼ぶのも、僕自身が彼を作家として尊敬ができないからだ。

僕が入っているあいだも、殆どが仕事もろくにせずだらだらと遊ぶだけだった。

あまりにも目に余る彼の態度に、呆れた僕は編集長に尋ねた。

「なンであんな仕事もしない作家を大事にしとくんです?」

「しょうがないのよ…バンダイからの預りだからサ」

いろいろとあるのはわかる。だが、この編集部はその度を越していた。


Iくんのアシに入って数日後。ついに明日締切りという夜、とうとう僕は彼に言った。

「じゃあ、あとの20枚、のこりの時間で割って1枚45分ずつで上げるつもりなんですね? 自分でそのペースで出来ると思ってたからそれで今まで遊び呆けてたわけだ。

んじゃ、せいぜいがんばってください!! 俺もいる限り手伝うから」

じっさい、僕も自分の仕事が迫っていたので、そこに居られるのはものの数時間しか無かった。


結果。

僕の居た時間内には当然原稿は上がらず、結局またずるずると延びていたようだ。



その後そのIくんがどうなったのかは知らない。けど、もし今でも漫画を続けているのなら、たぶん今も編集を泣かせていることだろう。

それでも彼の原稿が欲しい、ということならべつに僕自身からはいっさい非難はしないけど。それもまたこの漫画界というものだ。

ただ…

編集者に対して、作家に本当に必要なのは、信頼と誠意ではないだろうか。

少なくとも、僕はそう思う。

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