おっぱい甲子園 '87

*1


はたしてそれはいつのことだったかと想い調べると、87年08月14日のことであった。その夏の日、私は女の家にいき、ふたりして宿題をひろげた。しばらくしてトイレを借りに下に降りると、居間では女の母親が高校野球を見ていて、北小路くん北小路くん、見て見て、すごいよすごいよ、ほらほら、と声をかけてきた。東亜学園の川島投手がナイスピッチングをしていたのである。私は小便をすませると、女の母親と一緒に高校野球を見た。「ナイスですね」「ほんとナイス」 とにかくこの日の川島投手は面白いように三振を奪っていき、ヤクルトの伊藤智仁が現れるまで、私の中のベストピッチャーとなる程であった。気がつくと、二階から女も降りてきていて、三人で東亜学園vs金沢高校の一戦に見入った。

結局、川島投手は十四もの三振を奪い、そんな素晴らしい仕合をみた私は、満足気に女の家を後にした。

今にして想えば、さっさと二階の女の部屋に戻っていれば、おっぱいくらいさわれたのではないか、と想うところであるが、しかしそれはしょせん、"今にして想えば" である。当時の私にすれば、女の母親と一緒に高校野球を見るのになんのためらいがあっただろうか。

おそらく人類の歴史というものは、この夏の日のようなものだと想う。



wikipedia:川島堅  wikipedia:第69回全国高等学校野球選手権大会  東亜学園−金沢高校  その試合のYouTube

*1:東京都墨田区の「隅田公園少年野球場」。少年時代の王貞治もここで野球をした。