渡辺愛子陶芸展〜信楽の大壺を買う〜

GWも最終日、飛び石でしたがお天気にも恵まれ、専ら近場の散策に勤しみました。お蔭でパソコンから解放されドライアイが幾らか改善したように思えます。

ただ、1日だけインドアの日を設けて、東武百貨店池袋店の美術画廊を訪れました。定期的に池袋店から図録が送られてきますので、気に入った個展があれば出掛けるようにしています。今回は図録の1点目に掲載された渡辺愛子さんという陶芸家の信楽大壺に惹かれて、個展初日に足を運びました。

すでに7〜8人のお客様が熱心に作品を鑑賞されていました。幸い、お目当ての大壺に買い手はついていませんでした。初日に会場を訪れてもお目当ての品が売却済みということも多々ありますので、先ずは胸をなで下ろしました(個展の前に内覧会を開催する場合もあるので注意が必要です)。


大壺のサイズは我が家の玄関脇のスペースにぴったり、焼締めの塩梅もビロードと呼ばれる自然釉も見事です。会場を一渡り眺めてみると、ほかにも何点か図録に掲載されていない大壺があることに気づき、一番おおぶりの作品に目が留まりました。図録掲載のお品より少し背丈があって形状も均整がとれています。裏側に廻ると、焼締め特有の緋色の土肌が正面とは違った景色を見せてくれます。

作家さんに直接お尋ねしたところ、穴窯で焼成したということでした。江戸時代に姿を消した最古の窯形式穴窯が昭和40年代以降復活し、現在、信楽にはかなりの数の穴窯が存在するようです。図録によれば、作家さん本人が伊賀の地に自ら築窯したとあります。黒田陶苑で何回も個展をなさっていることからして、渡辺愛子さんが実力派の陶芸家なのは間違いなさそうです。


備前信楽などの土味を生かした無釉陶器が好みです。白洲正子は『器つれづれ』のなかで、古い信楽には古代の野武士の風格があって、「美しいのは形だけではなく、千変万化を極めるその色合いだ」と述べています。

悩んだ末に、一番おおぶりの壺(写真上)を買い求めることにしました。たまたま、その日の午後、プリンスの美術骨董ショーで見かけた室町時代の古信楽(写真下)と風合いが似ています。展覧会の会期終了(〜5/10)までお預けしましたので、くだんの大壺、まだ会場で鑑賞することができます。



器つれづれ

器つれづれ