チャットモンチー 「染まるよ」

大名曲。
レヴューを書かなきゃいけないCDやDVDはだいぶたまってるんだけど、ちょっと割り込ませてもらお。
…だって、凄えよこの曲。
まず詞。「別れた男の吸ってた煙草をふかしながら夜を明かす女子」の心象風景、さすがのあっこ詞。「詩」として見ても、煙草の煙とそこに託されるさまざまな感情を、明暗の色彩を伴って描き出す技巧がハイレベルだし、「歌詞」として見てもオノマトペをいいアクセントとして使ってる。バンド史上最高の達成だろう。≪あなたのくれた言葉/正しくて色褪せない/でも もう いら ない≫、キラーフレーズ。
音とメロディ。最初はちょっとびっくりするぐらいに、徹底の上にも徹底して無駄を削ぎ落とした、ギターと、ベースと、ドラム。王道ド真ん中のスリーピース・サウンド。その無骨で、男気すら感じさせるギターサウンドと抑制の利いたメロディが、詞の物語を引き摺って、ヒリつきはそのままに、サビにカタルシスとして炸裂させる。≪いつだって そばにいたかった≫、≪いつだって そばにいれたら≫、≪いつだって あなただけだった≫、こんな十把一絡げでその辺のラブソングに転がってる言葉が、こんなにも切なく、感動的に胸を叩く、これをこそバンド・マジックといい、まさにロックの真髄なのです。
名盤『生命力』以降、切った三枚のシングルはどれも異常に高性能だ。次のアルバムはいよいよヤバいことになりそうです。
c/wも今回は粒揃い。「愛捨てた」はクミコン詞で、表題曲とはまた異なる夜明けの心象。真実の大らかさが偉大です。ザラリとした手触りの展開はセルフプロデュースで、これもなかなかかっこいい。ただ一度「東北弁って言われた」みたいなこと聞くと、そうとしか聞こえんくなって困った。「RPG」は得意の一ジャンル、「プラズマ」とか「モバイルワールド」路線の、コミカルなアレゴリー。俺は実は好きなタイプの曲じゃないんだけど、この曲は好きだった。なによりキュートすぎるボーカリゼーションが。

染まるよ

染まるよ