都筑道夫『都筑道夫コレクション 《パロディ篇》 三重露出』光文社文庫

ネタバレ注意。
名作の誉高い表題長編と、ポアロや半七捕物帳のパロディ短編を併録。
「三重露出」は、日本で忍術修行しながら私立探偵をしているアメリカ人が事件に巻き込まれ、サナダ忍軍の末裔のくノ一たちと激闘を繰り広げるジャポニズムパルプ・フィクションと、それを訳してる翻訳家が現実の殺人事件の謎解きをするパートが交互に展開される、稚気に満ちた怪快作。忍法帖的なアクションはあまり好みではないけれど、アヤしいジャポニズムの妙味が加わって愉快。元ネタのアール・ノーマンとやらも読んでみたくなりました。
その他、「銀座の児雷也」は、エラリィ・クィーンが戦前の日本で遭遇する殺人事件、てだけでもアガったけど、事件解決のヒントを与えるある文豪の使い方も小粋で素敵。「ポアロもどき」の込み入った設定がラストに与える効果*1も、やっぱり小粋。
さすがパロディ小説の名手、という、質の高い作品集です。
評価はB。

*1:備忘メモ。酒瓶の並べ替え。