uruya’s diary

夏山登山とツーリング。冬は鉄分多め。

かわいい女 / レイモンド・チャンドラー

かわいい女 (創元推理文庫 131-2)

かわいい女 (創元推理文庫 131-2)

マーロウの事務所を訪ねてきた若い女は、失踪した兄を探してほしいと依頼する。
山出し然とした女の、眼鏡の奥にある美しさと、何かを隠しているらしき様子に興味をひかれたマーロウは、二十ドルでその仕事を請け負うことにした。
調査をはじめたマーロウだが、その線上に浮かび上がってきた関係者が、つぎつぎと殺されていく。アイスピックで正確に延髄を貫く手口は、カリフォルニアのギャング泣き虫モイヤーが使うものだった。また、殺害現場で何かを探そうとしていた形跡を認めたマーロウは、ネガフィルムを発見する。そこには、事務所に来たときとは別人のような美しさを見せる依頼者の女と、ひとりの男が食事をしている場面が写されていた。女は、ハリウッドで売出し中の新人女優であった。

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ハリウッドが舞台のドロドロ劇。セックス、ドラッグ、ロックンロールですよ。いやロックンロール関係ない。あと家族の断絶もテーマ。

田舎から出てきてハリウッド女優をめざす女が、華やかな世界の裏にあるごたごたに巻き込まれていく姿が背景にある。直接的には描かれないが、調査から徐々に浮き上がっていく。マーロウのヘタレっぷりがちょっとおもしろい。脅されるとちびっちゃう(比喩)し、簡単にわなにかかる。タフネスヒーローではなく、非常に人間くさい。

幕引きにも人間味がある。非情にみえて実は情のある男だ。さもなくばデッド、ジェイル、オアロックンロールですよ。いやロックンロール関係ない。「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」のコピーはマーロウだっけな。

このモチーフの選び方は、ハリウッドの映画業界でも活躍したチャンドラーらしい。ミステリ的に言えば、利害関係が錯綜していて多少わかりにくい部分があるが、真相とそれに至るプロセスは読み応えがあった。