洗浄は戦場だ

 四月も中盤が近づくと、いくら北海道とはいえ、暑がりの人間はそれなりに警戒をはじめなくてはならない。極度の暑がりである私はなおのことである。

 不幸中の幸いながら、現在の私は静養中の身であるため、あまり外を長く歩く機会もなく、猛暑のなか、行きたくもない場所へ向かって延々と日光を浴びながら汗だくで歩き続ける必要もない。大量に汗が流れても、すぐにシャワーで洗い流すことだってできる。汗をかいたままの不快な状態を過ごす時間が大幅に減少したのは、精神衛生上とても助かっている。

 では、静養の身となる前の私は、どのようにして暑さと汗の不快さを和らげていたのか。札幌在住の頃を例に、今だから言える美月雨竜流の真夏との闘い方をここに記しておく。

 札幌でゲームプランナーの勉強をしていた頃、授業のある日は、住んでいたアパートから学校までの道をだいたい30分ほどかけて歩いて移動していた。寝ている間にかいた汗は、しっかりと朝風呂で洗い流し、制汗スプレーなんかも使い、なるべく日光を避けるために狸小路商店街を通るなど、色々と対策は講じていたのだが、それでも学校のあるビルに着くと大抵不快感MAX状態だった。

 そこで私は毎回早めの登校をし、着くとすぐにトイレの個室に入る。そして、衣類を脱ぎ、歩行中、首などを冷やすために持参していたペットボトルの水を頭から被るのである。この頃には、ペットボトルの水は浴びるのにちょうど良い温度になっている。そして、これまた持参していた石鹸とシャンプーで身体を(比較的軽めに)洗うのである。もちろん、荷物は濡れないようにしておくし、タオルは安い使い捨てのものを二、三枚用意しておき、身体や個室内を拭いておく。あまり時間をかけることはできないが、これでなんとか授業を受けるにふさわしい状態にもっていくことができるのである。暑さに弱く、汗もわりとかきやすい方なのに、よく「いつもシャンプーの匂いがしますね」なんて言われたのは当然で、朝シャンどころか、ついさっきもシャンプーしたからなのだ。

 もっとも、日々の入浴もそうだが、身体を洗い流したあとはさっぱりするものの、行為自体は結構な重労働なので、ストレスの溜まる分と解消される分のバランスが釣り合っていたのかどうかは疑わしい。おそらく、こういった暑さ対策も、今から考えれば私が静養の身となる一因だったのではないかと思う。