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文を敲く

2017-11-28

洋行 -「ウィーン愛憎」

1980年代初頭にオーストラリア私費留学していた著者の留学記である。もっとも昨今の「留学」とは大きくかけ離れている(まずインターネットがない)ため、留学というよりは「洋行」と表現した方が良いのかもしれない。著者の言行録も興味深いがそれ以上にカフカの小説の登場人物を髣髴とさせるウィーンの住民たちが印象に残る。

かれこれ30年近く読まれ続けるベストセラーなので、コミックエッセイ化してもかなり面白く仕上がるとも思う。

2017-11-09

違和感 -「会計の歴史」

まず著者のプロフィールがおかしい。通常の著者紹介であれば「商学博士」か「博士(会計学)」と書かれるべきところに「博士(慶応義塾大学)」とある。著者は慶応義塾大学についての博士論文を執筆して博士号を得たのだろうか*1

本文中には「この交通革命は鉄道マニアによって引き継がれ、完成する(p.149)」という一文があるが、この不自然な「鉄道マニア」の用法に対しては何の注釈もない*2。この本文を読んだだけでは鉄道好きのブルジョアが趣味と実益を兼ねて鉄道網が発展させたようにも解釈できてしまう。全体的に言葉の使い方が独特なので、あちらこちらで引っかかってしまう。

編集者にはもうちょっと頑張ってほしかった。

*1:「慶応義塾大学幼稚舎等を経て」「慶応義塾大学卒業」「慶応義塾大学教授」とも書かれているので揃えたかったのだろう。あとは「慶応義塾評議員」になればロイヤルストレートフラッシュの完成といったところか。

*2:ちなみにウィキペディア日本語版はRailway Maniaを「鉄道狂時代」と訳している。時代がかった訳語であるがこちらの方が分かりやすい。

2017-11-08

「しんがり」

副題には「山一證券最後の12人」とも書かれているが、思いの外12人の話は多くない。大手証券会社の一角を占めていた山一證券が自主廃業に至ったまでの経緯を関係者の声を集めて描いたところが読みどころだ。巨額の簿外債務を隠した手口を探り当てる「しんがり」の人々は格好いい。

本書では簿外債務を隠すために使われた「飛ばし」の手口も詳しく紹介されている。さすがに真似はできないが、知っておいて損はないと思われる。