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ペライアのコンチェルト・「20」と「21」


モーツァルトのピアノ協奏曲第20番を聴きたくなって、マレイ・ペライアのCDを手に取った。


モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番&第21番

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番&第21番


このCDでは、傑作中の傑作、20番と21番がカップリングされている。CDのジャケットには新しい写真が使用されているが、この録音は1970〜1980年代に行われた全集から採られており、収録されている20番と21番はともに1977年の演奏だ。blu-spec CDと銘打たれたリマスター処理を受けた人気の2曲がカップリングされている。


マレイ・ペライアは、日本では、誰でも知っているピアニストというわけではないが、実力は折り紙付きで、世界的にもビッグネームの一人である。私にとってペライアは、相当好きなピアニストの一人だ。彼の繊細かつリリカルな音色と丁寧な仕事ぶり、温かみのあるピアニズムは、ありそうでなかなかない。他のピアニストではなかなか味わえないものだ。


さて、CDに記録されている彼の若い頃の演奏を聴いてみる。


久しぶりにこのCDを聴いてみると、これが只ならぬ演奏だった。基本的にはオーソドックスな演奏であるが、音色の美しさ、表現の多彩さ、丁寧さ、細部にまで神経が行き届いた演奏となっている。


ペライアのピアノは、はっと驚くような技巧があるわけでもないし、解釈が尖っているわけでもない。中庸の極み、とさえ言えるかもしれないが、技術的に高くないかと言われるとそうではなく、相当巧いピアニストであり、技術的に傑出したものを持ってる。しかし技術が先走っている印象を与えない。音色はとても叙情的で、温かい、血の通った演奏である。


ペライアの音楽を聴いている時の時間は、自分にとってとても豊かな時間となっている。美しい絵を鑑賞したときのように、あるいは、美しい詩を読んだときのように、時間を忘れて、没頭している。芸術に接した時間はかけがえのないもので、日常のうちに流れていく時間とは異なっている。誠実な人柄が滲み出るような丁寧な音楽づくりで、聴けば聴くほど、この演奏が信頼できるものだということがわかる。私はペライアの演奏に対して絶大な信頼を抱いている。ペライアは裏切らない。


20番は私は何度聴いても、ゾクゾクするような喜びを感じる。21番。「陰」と「陽」で言えば、20番が「陰」。21番が「陽」。昔は20番に夢中になった。その頃、20番はよく聴いたが、21番はあまり聴かなかった。いまでは21番も同じくらい聴く。違った方向を向いているが、21番は20番と並ぶ美しさを持つ。この2曲はコインの裏表のような作品なのではないか。そんなことを考えながら、ペライアモーツァルトを聴く。