いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】キャビン

キャビン [Blu-ray]

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大学教授との恋に破れたJDのディナは、ルームメートのジュールズに誘われ気分転換に山小屋(Cabin)のキャンプに行くことに。ジュールズの彼氏でアメフト部のカート、そのチームメートのホールデン、変わり者のマーティの男女5人での楽しいドライブになるはずだったがその道中、ガソスタで陰気なおっさんに不吉な予言をされる。
気にせず、無事に目的地についた5人だったが、そこには恐ろしい惨劇が待っていたのだった……。


と、ここまでは各キャラ設定、展開はどこをどうとっても「ビッチがブチ殺されて処女が生き残る」ティーンズ・ホラーの王道を寸分違わず突き進んでいるように見えるが、そんなありふれた映画を撮った人物が、のちに『アベンジャーズ』に抜擢されるわけはないだろう(ちなみに本作にはマイティ・ソーことクリス・ヘムズワースも出演している)。

嫌味なほどにティーンズ・ホラーの定番を踏襲した序盤は、あくまでもその後の世界を構築するためのたたき台であって、その世界観はすぐに別のレイヤーの世界観によって相対化されていく。
実は、彼らは何者か(しかもそれはわりと大きな規模の組織)によって見張られていてその一挙手一投足は、彼ら彼女らが自由意志において選んだように見せかけて、実は操作されていたのだ!!!


でもそうした話も、実は『トゥルーマン・ショー』だし、惨劇を嬉々として鑑賞するゲスたち、という話ならばすでに日本でも『インシテミル』などでやられている。
本作の独自性は、監視者らによって操作された世界の中で命の危機を迎えている主人公たちを眺めている"視聴者"の方にこそあるだろう。
映画はホラーのジャンルで始まり、ミステリーへと転換し、終盤でファンタジーになるのである。このジャンルの転調が、ストーリーの広がりを生んでいると思う。


なんといっても盛り上がるのは、監視者たちからすれば想定外といえる主人公たちの「逆流」によって引き起こされる、「百鬼夜行」だろう。この場面ほど残酷ではないが、『アベンジャーズ』のクライマックスでのニューヨークでの"合戦"を思い浮かべたのは、ぼくだけじゃないはず。
最終盤には思わぬゲストがカメオ出演(この人、最近こういう出方しかしてねえ!)して事の真相を明かす。そして、盛り上がったところで主人公たちに"究極の選択"が託されることに。


けれど、そこで主人公たちにあっさりと「(人類にとっての)バッドエンド」を選ばせてしまうのには、作り手側によほどの自信があってのことなのだろう。
つまり、いくらオチがめちゃくちゃでも、そこまでのプロセスで観客を十分楽しませたんだからいいだろ? という自信だ。