T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

163・そんなこと知って何になるの

昨日は、ある女性アーティストの周年アルバムBOXが出るので、そのプロジェクトをサポートしていることもあり、ライナーノーツ用に取材インタビューさせていただいた。こういう芸歴の長い人の取材や、社歴の長い業界人との打合せなどヒストリカルな仕事の時、必ず言われるのが、

「よくそこまで知っていますね〜」

というセリフ。昔は、聞かれもしないのに、さらに付け足して発売日や作家まで出しゃばっていたが(あー、恥ずかしい。。。)、近年はさすがにそれでは周囲が迷惑しているのが分かるので、「これって、いつの発売だったっけ?」と聞かれた時、もしくは相手の記憶を引き出す時のみに発言するようにしている。目的は自分の知識をひけらかすことではなく、自分と相手の間の仕事を進めて“人と音楽”を繋げることにあるのだから

しかし。そういう風に一歩抑えて発言した今もなお、必ず相手がニヤけておられるのだ。20代、いや30代前半までは、それが怖かった。その後に、必ず

「そんなこと知っていて、いったい何になるの??」

と嘲笑気味に続くからだ。勿論、それを仕事に活かしきっていない時期は、黙り込むか苦笑するしかなかった。そのニヤけている様子が、自分の “ムダ知識”っぷりに呆れられているような気がして、恥ずかしかった。そして、悔しかった。

今もきっと「この人、食べていけるのかな。。。」と半ば心配されている気もするが(笑)、実際は、こうして執筆も分析も企画も依頼していただいているので、そのニヤニヤも別に嫌でもない。むしろ、自分を覚えてもらえる良いフックになっている気さえする。

それにしても、10年前に共同通信でアイドル市場についてインタビューされた時、記者の方が異動するというのでたまたま今回のアーティストを含むアイドルBOXをいただいたこと(廃盤となって買いそびれていた)、15年前たまたま立ち寄った地場の中古CD店で「こちらのCDは、自由に持っていって下さい」のワゴンの中に、なぜかレアなオリジナルアルバムが置いてあったこと、さらに20年前に2枚組ベストの新品を半額セールだったのでたまたま買っていたこと、それら偶然すべてが今の知識となって、今回の仕事に繋がっているかと思うと、本当に不思議!!!もし、今回の仕事のため、急に資料をそろえ詰め込んで聞いていたら、「今日の取材は面白かった〜♪」とご本人に喜んでもらえなかったと思うし、関係者各位にご迷惑がかかったかもしれない。そう考えると、自分って実力以上に運が良いし、ムダ知識すら我が身を助けてくれていることに驚いてしまう

きっと、私やこのサイトを慕って下さる方って、記録よりも記憶のヒット曲を見つけるために、人から見たら“ムダ知識”を蓄えておられるかもしれないが、でも、

「そんなこと知っていて、いったい何になるの??」

という言葉は、ある年齢を過ぎると、それぞれの知識のピースが次々と結晶化していくように結実するので、あまり気にせず日々を暮してもらえればと思います。あっ、でも“知識のひけらかし”だけはご注意を。本当にドン引きして、酒場で嘲笑されているだけなので(昔は、それすら人づてに聞いて嘆いていました。自業自得(笑))。