『伝説のロックスター再生計画!』を観ました

ニコラス・ストーラー監督の『伝説のロックスター再生計画!』を観ました〜。

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ジェフリー(笑)!

ラッセル・ブランドが伝説のロックスター役で、ジョナ・ヒルが彼をコンサートに呼ぶレコードレーベルの業界人、という設定だけでもう完全なるコメディであろうと予想がつきますね。その直感を裏切らない、実に気持ちのよいコメディでした。

冒頭からのPV撮影現場でのインタビューからぶっちぎりで、現在の音楽業界を笑いものにしていくパロディの連射砲です。音楽業界をテーマにした映画は数多くありますが、例えば『デューイ・コックス』は音楽業界へのリスペクトを感じるんですけど、あれに比べると、かなり現状の業界に迫りつつ完全にこき下ろしてるのが伝わってきますし、そのため心に響く秀逸なパロディ映画でした。

そして主役の二人の化学反応が素晴らしい。目が離せない応酬の連続で、至って普通の会話をしていても、「……」という間だけで笑わせるというような、とても洗練された上級者向けの笑いを作ってて、一本どころか何本も取られました。感心しっぱなしです。演者もいいですが脚本もいい。ケツの穴に力を入れながらクシャミする、ぶっ飛びすぎて鎮めるために毛皮の壁をなでなでし続ける…こんなのなんて逆立ちしても想像つかないし、こういう映画だからこそ見られるネタです。とりあえずこの二つのシークエンスは語り草となる絶品のシーンでした。

そうそう、『ブライズメイズ』でも観た、本作のヒロイン、ローズ・バーンですね。ラッセル・ブランドの元カノ役なんですが、生放送で性器モロ見せ、キチガイじみた曲のPVとゴシップの数々…カワイイ顔して大層なタマを持ってる女優さんですね。特に偽PVの出来は面白かったッス。ブッ飛んで分かり易い彼女の役柄に比べたらうっす〜いキャラのインターン役、エリザベス・モスもよかった。どうも振り返ってみると、ジャド・アパトー関連作は、女優だけはキャスティングにハズレがないって気がします。男のコメディアンは多いから、対応できる女優の数は結構限られてくるのかもしれません。

実名のスターがいろいろ出てくるんですけど、ショーン・コムズ、つまりパフ・ダディがレーベルの社長役ってのが、なんというか一番とんでもね〜なと思いました。そして彼もきっちり笑いを取るし。ファレル本人のピンクのポロシャツをなじるところなんてのも見応えあります。

あと細かいのでは、アジス・アンザリがレコード会社の同僚役、『奇人たちの晩餐会』で見覚えのあるクリステン・シャールは朝の番組のAD役。どちらもコメディ顔だから大好物です。

いろいろ笑わせて、なにかがあって、ホロリと来るようなヤマ場があって終わる…シットコムではない長尺のコメディ映画は、大体そんな感じになっているものです。本作もそのパターンは踏襲されてますが、私は3Pをするクダリが今ひとつよく分からなくて、それに続く結末については、ホロリというよりはショボーンとしてしまいました。結局そのあたりが、コメディ映画の出来不出来の分かれ道になりそうです。本作が不出来というわけでは決してないんですけど、それにしても『ブライズメイズ』はその点素晴らしかった、という話、です。

『ミスター・アーサー』で観たのと同じくラッセル・ブランドは気色悪い声と顔なんですが、本作で彼が演じるスター像は新しかったと思います。コメディ映画でスターの役柄だと、酒だドラッグだ一辺倒のむちゃくちゃなヤツってところを汲み取られがちなんですが、彼の演じるスターは結構プライベートでは普通なんだなっていう味が出てて面白かったです。家族は変人でしたけど。

あと挿入歌もいちいち笑わせますよね。ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルスと、それぞれのシーンで地産地消的な音楽使いがエコだなあと感じました。ラッセル・ブランドが歌う曲も結構よかったですよ。当然「African Child」も。毎朝歯磨きしてる時に聴きたくなる曲でしたね〜。