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2015-09-16

『老薔薇園』金子光晴

|  『老薔薇園』金子光晴を含むブックマーク  『老薔薇園』金子光晴のブックマークコメント

 11月5日刊行「シリーズ 日本語の醍醐味」の新刊を紹介します。

薔薇園 ──シリーズ 日本語の醍醐味(7)

金子光晴

「園は廃れた。踏み入る小径もなくなつた。」(「廃園」より)

異色の散文詩集『老薔薇園』を中心に、反骨の詩人金子光晴の詩業を一望する。

 無一文で中国東南アジアヨーロッパを放浪し、冷徹な目で日本を見つめ続けた金子光晴。代表作ともいえる詩「鮫」を発表後、軍国主義など日本の社会体制批判する抵抗詩を書き継いだが、それらはお仕着せの思想信条などではなく、家族や近しい仲間を思う、ひりひりするような皮膚感覚から紡ぎ出されたものだった。

 初期のきらびやかな耽美詩から、人間への愛情と絶望がない交ぜになった晩年の作品まで、生涯天邪鬼を通した金子光晴の詩業を一望する80篇を収録。

※七北数人氏を監修者に迎えた「シリーズ 日本語の醍醐味」は、“ハードカバーでゆったり、じっくり味わって読みたい日本文学”をコンセプトに、手に汗握るストーリーではなく、密度の濃い文章、描写力で読ませる作品、言葉自体の力を感じさせる作品を集成してゆきます。

2015年11月5日発行 四六判・上製 415ページ

定価=本体2,800円+税 ISBN978-4-904596-09-8


【目次】

序詩

 おっとせい

詩・散文選 I

 苔/柩/誘惑/二十五歳/アルコール/大腐爛頌/草刈り/水の流浪/土管と季節/秋の女/渦/散歩/小篇/小姐

『老薔薇園』(全)

 廃園/煙突/晩秋/春宵/雪どけ/鏡/都会/骨/道路工事/武装/うれひの花/冬の雨/漆器和紙/風流/夜/日章旗竹林の隠士たち/赤寺/悲しき電気/浦島/印度記/燐/玳瑁/老薔薇園/魚/龍/エルヴェルフェルトの首

詩・散文選 II

 泡/どぶ/鮫/落下傘/屍の唄/寂しさの歌/子供の徴兵検査の日に/富士/戦争/三点/〔「南方詩集」序詩〕/ニッパ椰子の唄/洗面器/孑孑の唄/偈/瘤/冥府吟/蛾/序(『人間の悲劇』)/女の顔の横っちょに書いてある詩/もう一篇の詩/さらにもう一篇の詩/〔ぱんぱんが大きな欠伸をする〕/くらげの唄/失明/お前を待つてゐるもの/花火/葦/非情/偈/無題/森の若葉 序詩/若葉よ来年は海へゆかう/おばあちゃん/愛情1/愛情13/愛情26/そろそろ近いおれの死に

解説/七北数人


 言わずと知れた金子光晴です。

 内容については上の紹介文のとおりです。

 最近、戦争法案がどうのと話題になっていますが、こんな時代にぜひ読んでいただきたい一冊でもあります。ただ、金子光晴はもちろんそれだけではありません。

 七北氏の「解説」にはこうあります。

 特に『老薔薇園』はスタイルも異色で、幻想味ゆたかな傑作ぞろいである。この形で生前刊行されていれば、金子光晴という作家の経歴が少しく書き換わっていたかもしれない、それほどの力を秘めている。全集以外では本書が初収録となる作品も多く、全篇収録の価値は大きい。

 これは詩なのか、エッセイか、と思って読んでいくと、だんだん小説になっていく。(中略)表題作「老薔薇園」冒頭の、豪奢な頽廃を匂わす女性下着の散乱が老いた薔薇の園に変じたりする瞬間や、「日記」の中の黄昏描写などを読むと、詩的イメージの連環ということを強く感じる。(中略)

 連想が空想に発展し、幻想へ迷い込む。帰り道は、もうない。

 どうでしょう? 詩が好きな方も、散文が好きな方も、読んでみたくなったのでは?


 ちょっと余談になりますが、じつは、この「日本語の醍醐味」というシリーズを思いついたきっかけが金子光晴でした。もう20年近く前のことですが、「こんな密度の濃い、言葉自体の力を感じさせてくれる作品ばかりを集めたアンソロジーがあれば楽しいんじゃないかな」と思って、ずっとあたためていました。

 もう一つのきっかけは、筑紫オールド明朝というフォントです。このフォントを初めて見たとき、「この書体で金子光晴を読みたい!」という思いがふつふつと湧き出し、「日本語の醍醐味」企画とぴったり結びついたんですよね。

 そういった意味では、念願の一冊、なんです。たくさんの人に気に入ってもらえたら、嬉しい。


 本書が並ぶお店は、来週あたりから随時烏有書林の本があるお店(リアル&ネット)に反映させていきますので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。